その日は、雨こそ降らなかったが、今にも空が泣き出しそうな、そんな空模様だった。

 会場の準備も万全に、後は、卒業生を迎えるだけとなった。しかし、卒業生全員が揃っている訳ではない。不登校で、学校に来れない卒業生がいるからだ。その子は、卒業式の終わった午後に学校に来る事になっている。学校では、その子の為に一人だけの卒業式を行う事になっている。そして、一人だけの卒業式が終わったら、その子を、職員みんなで見送る事になっている。そんな、心温かな学校である。

 さて、卒業式は、滞りなく、とてもスムーズに進行した。いよいよ卒業式の歌になった。  

 以前のブログにも書いているが、私は、音楽の講師なので、卒業式までの歌の指導を行なってきた。卒業生の歌声を聴くのは、今日で最後である。卒業生が3年生の時から、4年間、音楽の時間を共に過ごしてきた子どもたちである。ある意味、担任よりも長い時間、共に過ごしてきたのだ。 

 最後の音楽の授業である。指揮台に登る。子どもたち一人一人の表情が見える。みんないい表情をしている。笑っている子ども。今にも泣き出しそうな子ども。歌が進んでいくと、少しずつ歌声が泣き声に変わっていく。歌の全てが終わると、子どもたちも一息ついたようだ。泣き顔が普段の表情に少しずつ戻っていく。子どもたちは、卒業式の歌に何を見ているのだろうか。やはり、これまでの時間が思い出されているのだろう。言葉には出来ない思い、6年間の時間を一言で言う事ができない、そんな感情を歌声に込めているのだろう。 

 卒業式の歌はいい。泣き笑いの卒業式も終わりである。