【前回からの続き】

夜中のデリー空港に放り出された知人。

疲れ果てていた彼に追い打ちをかけるような出来事。

その時の彼の頭の中には、

「早く横になりたい」、「早く家に帰りたい」

という思いが占拠していたそうです。



そんなことを考える彼によぎったひとつの考え。

「そうだ、ここはデリー、インドの首都」

そして、

「首都なんだから、空港近くにはホテルもそれなりにあるはず。」

「時間もあるし、たとえ2時間でもベットで休もう」

と・・・・・・・・・・。



そう思いついた彼は、すぐさま空港出口へと向かった。

そして、空港の建物から外に出ると、タクシー乗り場へと向かったそうです。

外へ出るとき、彼は全ての出入口に、銃を持った兵士が立っているのが

目に入った。

その時は「セキュリティーが厳しいんだなぁ」とちょっと思ったが、すぐさま

タクシーを探した。



さすがにタクシーはすぐに見つかったそうで、

運転手にどこでもいいから近くにホテルがあれば行ってほしいと、

もちろん英語で伝えたとのこと。

夜であることと、インド人の色黒の顔なので、運転手の表情はよく分からなかった

そうです。

で、想像していたよりも車は走り、しばらくして1件のボロ宿についた。

しかし、残念ながら部屋は空いてないという。

(本当に空いてなかったのか、貸さなかったのかは不明)



再び、同じタクシーに乗って宿探し。

だけども、一向に宿に着く気配がない・・・・・・・・

そのうち、だんだんと人気のない場所になってくる・・・・・・・

「これはやばいか?」

と思ったものの、夜だし、土地感は全くないし、どうしようもない。



そのうえ、妙なところで急に車を止めたかと思うと、

全く知らない人を一人、タクシーに乗せてきた


運転手いわく、

「俺のおじさんだ」

とうとう、この状況下で2対1



彼は半分観念したそうです。

もはや、山道のようなところを走っている(と彼には思えた)


身ぐるみはがされるか・・・・・

最悪、このデリーで命を落とすのか・・・・・


確かに日本人のサラリーマン。

カバンを抱えて、お金はもっていそうな感じ・・・・・・。

社内には何ともいえない空気が、

彼にとってはモノ音ひとつに「びくっ」となってしまうくらいの緊張感・・・・・。



空港を出て、もうどれくらい経つだろうか・・・・・。

それまでの疲れとかはもう頭に無く、

正直、死を覚悟し、自分の人生を振り返ったり、家族のことを考えたり

とにかく、ぐちゃぐちゃだったそうです。

背中には汗がぐっしょり・・・・・

そしてまたタクシーが止まった。

「!!」


観念した彼に運転手は





「ここがホテルだ」

そう言い放った。


もうまったくまわりが見えていなかった彼が外をみると、確かに

それっぽい建物が。

結局、いろいろあったけど、彼はホテルにたどりつけたのだった。

幸い部屋もあった。

もちろん、決してきれいとは言い難く、お湯もまともに出ないようなところ

だったそうですが。

フロントに空港に戻る時間を告げ、移動に必要な時間を確認し、

多少余裕を持って着ける時間を考えたうえで、その時間にタクシーを呼ぶ

ように頼んで、部屋に入った。



前後するけど、タクシーを降りた際、結構なお金を請求された。

多少は抵抗するも、徹底抗戦する力はもはや彼にはなかった。



そうして部屋に入るも与えられた時間は2時間あるかないか。

そのうえ、先ほどの緊張感もあり、まともに寝れるような状態ではない。

うつらうつらしながら、出発の時間を迎えた。

そして全く疲れを癒すことなくタクシーで空港へ。

「もう、早く飛行機に乗って寝たい」


そう思った彼に次なる試練が・・・・・・・




空港に着いた彼はそそくさと空港内のチェックインカウンターに向かおうとした。

建物の入り口には、出るときに見かけた兵士がずらり。

肩には銃を下げている。

入ろうとする彼を制止し、兵士は

「チケットを見せろ」



そう、彼は変更になった便のチケットはもっていない。


この入り口を通ってカウンターに行って初めて今度の便のチケットを

手にすることができるのです。


乗り遅れた方の便のチケットを見せ、事情を説明する。

が、

「だめだ、入ることはできない」

「!!!!!」


必死に説明し、懇願するも入れさせてくれない。

「別の入り口へ行け」


いわれた通りに別に行き、同様の説明をするも、やはり

「だめだ、入れられない」


こうして彼は何か所かの入り口をまわったそうだが、いずれの所も

入れてくれなかった。

空港の職員のような人を呼んでもらい、同様に説明をするもラチが開かない。



ここまで読んで下さった方は容易に想像できると思いますが、

この時点で彼は心身ともにボロボロです。

何度も、何度も必死に説明し、懇願したそうです。




そのうち、ある入り口で、兵士の中でも上官ぽい1人が

みるに見かねたのか

「お前の言うことは分かった。ここを通してやろう。

だが、ここを通ってチケットを入手したなら、

もう一度、ここに戻って来て、

そのチケットを私に見せなさい」

その兵士はそう言ったそうです。



彼はすでに半べそ状態で、その兵士にお礼を言い、必ず戻ると約束して

建物の中に入れてもらいました。


チケットは問題なく入手できました。



もちろん、彼はちゃんとそのチケットを持って、通った入り口に向かい、

通してくれた兵士にそれを見せ、何度も何度もお礼を言ったそうです。



その後は何事もなく、予定の飛行機にも乗れ、無事(?)戻ってきました。

彼の長い長い夜はこうして終わったそうです。



冷静に考えれば、「なんて無茶なことを」と思いますが、

それまでの経緯が彼の判断をおかしくしてしまっていて、少々海外に慣れて

いるという気の緩みも手伝い、こんなことになってしまったのでしょう。



この出来事の数日後に彼とあったんですが、その時はすでに元気には

なっていましたが、堰を切ったようにこの話を私にしてくれました。

「よく無事にここにいるねぇ」

私の率直な感想。


彼は最後に

「デリーで不用意に空港建物の外に出てはいけない」

そう私に言いました。



が、


「そんな問題か?」







長文失礼しました。