すれ違う一瞬。
ほんの一瞬だけれど、彼の名前を刻んだプレートが
目に入った。
「ひ・で・ま・ん」
心臓がチクっと刺された気がした。
だが、走り出した男は止まることなく、その場を
後にしたのだった。
別の狩場に向かうべく、その中継地点ともいえる
場所に辿り着いて
ようやく男は僅かな落ち着きを取り戻した。
狩りを重ねると、ちょっとした興奮状態となり、
狩りを終えた後もしばらくはトランス状態になるのだ。
狩りの最中に消耗した体力を回復する為のドリンクを
飲みすぎるせいかもしれない。
落ち着いた男の心臓がまたチクっとした。
何かが、引っかかっているのだ。
さきほどの男か。
「ひでまん」
男が記憶をたどろうとするやいなや、
まるで記憶の方から男のところに
駆け寄ってくるように、記憶がよみがえった。
男には仲間を持つきっかけとなった日があった。
その日にさきほどの男も居たのだった。
ただ、その時は彼が別の名前を使っていたことと、
連絡先の交換を漏らしてしまって
いたので、すぐには気づかなかったのだった。
男を追っかけるように彼の携帯にメールが入った。
差出人は「ひでまん」
どうやら男を見つけて、一緒に狩りを行おうと
わざわざ探して来てくれたようだ。
と、その直後、また別のメールが。
「あいり」
気は強いが、心優しい3姉妹の次女だ。
このところ、男が一人で居ることに気を使って、
良く狩りに誘ってくれるのだ。
もちろん、狩りの腕前はその辺のやわな男どもより
ずっと上だ。
彼女が狩りに出ていることは途中で気が付いていた。
ただ、その時には既に4人のパーティーを組んで
いたので、声をかけずにいた。
今は一人で居るようだ。
ちょうど良いタイミングだったので、
男はひでまんさんと一緒に
あいりさんの待つ部屋に向かうことにした。
男たちがその部屋に到着するやいなや、
もう一人やって来た。
「せるめる」
ここ最近、一緒になる機会が出来た仲間の一人だ。
女性の槍使いで、こちらも一級の腕前。
どうやら、いつもの時間が始まったようである。
《つづく》