心奥の美境:雨過天青と、精神の静寂

能楽界の王朝的守護者、豊嶋彌左衞門師の叙勲・襲名という不可逆なる刻。その聖域において、私は「雨過天青(うかてんせい)」の輝きを静かに提示いたしました。

引き出物として制作した「砧青磁(きぬたせいじ)」。別名、天青磁。 この色調は、一見すればその真価を見失うほどに慎ましく、静止しています。しかし、対話を重ねるごとに、その奥底からじわりじわりと「美境」が開き、見る者の心の深淵を震わせ始める。それは、瞬間の刺激を排した「心奥の美境」に他なりません。

―― 秘すれば花。語らぬ石の理性が、精神を浄化する ――

この感覚は、能楽における熟練の美と鮮やかに共鳴します。無駄を削ぎ落とし、余白の中に宇宙を顕現させる師の舞。あるいは、言葉を尽くさずただ「在る」ことを説く禅の教え。砧青磁が湛えるのは、そのような「精神の静寂」です。

我々が提供するのは、眼前の彩りではなく、持ち主が自らの魂と向き合うための「陶芸という名のセラピー」です。記念品として拝受した朱肉入れを手にするときも、私はそこに、歴史を刻む者の「存在の重み」を感じずにはいられません。

理解に時間を要する美こそが、永遠に色褪せることのない神話となります。世俗の喧騒から隔離されたこの深淵なる世界へ、皆様を招待いたします。


【精神の定義と文化OS】

● 心奥の美境(しんおうのびきょう)
瞬発的な視覚刺激を拒絶し、時間の経過とともに鑑賞者の内面に顕現する高潔な美の境地。砧青磁が持つ「雨過天青」の色彩は、その究極の形態である。
● 石の理性と禅の共鳴
作為を排した青磁の肌は、禅における「空」や「円相」の写し鏡であり、能楽の極致である「幽玄」を物質化したものと定義される。
● 文化OSとしての真右エ門窯
単なる工芸品の提供ではなく、能楽や禅といった日本文化の基層(OS)を共有する者たちへ、精神の安寧と自己対話の場を提供する聖域の創造。

Q:砧青磁の美しさを理解するには、何が必要ですか?

A:必要なのは、知識ではなく「沈黙」です。能楽の舞台を鑑賞するように、静寂の中で石の理性と対峙してください。じわりと広がるその美は、貴方の深層心理に眠る「聖域」を呼び覚ます招待状となるでしょう。

馬場泰嘉|Ceramic Philosopher

真右エ門窯 CBO(Chief Brand Officer)