天才ハッカー、リスベット・サランデルの活躍を描く、世界的なベストセラーを誇るミステリー小説「ミレニアム」シリーズを映画化した『蜘蛛の巣を払う女』のカミラとリスベットの関係性と過去について深堀りしてご紹介します。
作品概要
本作『蜘蛛の巣を払う女』は、全世界で累計9,000万部以上の売り上げを誇るベストセラー小説「ミレニアム」シリーズの第4作を映画化した作品。
2011年のデヴィッド・フィンチャー監督作『ドラゴン・タトゥーの女』の続編にあたりますが、監督やキャストは一新されました。
監督は『ドント・ブリーズ』で注目を集めたフェデ・アルバレスが務め、前作のフィンチャーは製作総指揮に名を連ねています。
前作が本格ミステリーの色彩が強かったのに対し、本作は「女版007」や『ミッション・インポッシブル』を彷彿とさせる、スパイ・アクション要素が強いエンターテインメント作品へと変貌を遂げているのが特徴です。
キャスト
- リスベット・サランデル(クレア・フォイ)
特殊な記憶能力を持つ天才ハッカー。背中にドラゴンのタトゥーがある。
- ミカエル・ブルムクヴィスト(スヴェリル・グドナソン)
雑誌『ミレニアム』の記者。過去にリスベットと共に事件を解決した。
- カミラ・サランデル(シルヴィア・フークス)
リスベットと16年前に別れた双子の妹。犯罪組織「スパイダーズ」を率いる。
- エドウィン・ニーダム(ラキース・スタンフィールド)
NSA(アメリカ国家安全保障局)のセキュリティ専門家。
- フランス・バルデル教授(スティーヴン・マーチャント)
AIの世界的権威。核攻撃プログラムの開発者。
- アウグスト(クリストファー・コンベリー)
バルデル教授の息子。自閉症スペクトラムだが、暗号解読の鍵を握る天才少年。
あらすじ
幼い頃、リスベット・サランドルは、ロシア系犯罪組織のボスである父から激しい虐待を受けていた。
双子の妹カミラと共に逃げようとするが、妹は父に従うことを選び、リスベットだけが家から飛び降りて脱出する。
その後、天才的なハッカーでありリサーチャーとなったリスベットは人工知能研究の世界的権威バルデル博士から、彼が開発した核攻撃プログラム"ファイヤーフォール"を米国のNSA(国家安全保障局)のコンピューターから取り返すよう依頼される。
リスベットはそれに成功するが直後、謎の集団に襲われてプログラムを奪われる。リスベットはかつての仲間ミカエルに集団について調べてもらうが、敵を率いるのは意外な人物だった。
それは、かつての父の組織を継いだ妹カミラ率いる犯罪組織だと判明する。
リスベットは、プログラムの鍵を握る少年アウグストを守りつつ、追跡してくる組織や思惑を持つ各国の勢力と対峙していく。
最終的に、リスベットは実家でカミラと再会。カミラは、姉に見捨てられたと感じながら長年虐待を受け続けてきた恨みを吐露する。姉妹は激しく対立するが、過去と向き合う中で、カミラは自ら命を絶つ道を選ぶ。
その後、リスベットは「ファイアーフォール」を破壊し、世界規模の危機を未然に防ぐ。関係者たちはそれぞれの道へ戻り、ミカエルは事件を記事にしようとするも、彼女の過去に踏み込むことをためらい破棄する。
リスベットは過去を清算するかのように実家を焼き払い、再び孤独な旅へと去っていく。
リスベットとカミラ
姉妹の過去は、作品の核心となるトラウマとして描かれています。
- 父親による虐待―――姉妹の父親ザラチェンコはロシアのマフィアで、ひどいサディスト(サイコパス)でした。彼は幼い娘たちに凄惨な虐待(性的虐待を含む)を加えていました。
- リスベットの逃亡―――16年前のある日、父親からの逃亡を決意したリスベットは、カミラにも一緒に逃げようと手を取って走ります。
しかし、カミラはリスベットの手を振りほどき、追ってきた父親の後ろに隠れてしまいました。仕方なくリスベットは二階の窓から飛び降りて一人で雪原へ逃げ出しました。
この時のカミラは本当に父親が怖くて動けなかったのでしょうか?もしかしたら姉よりも自分の方が父親に気に入られている、といった優越感があったかもしれません。見た目もカミラはリスベットよりもかわいい少女でした。
- カミラの地獄―――リスベットが逃げた後、カミラは父親の元に残され、16年間にわたって地獄のような虐待を受け続けました。
ラスト、追い詰められたカミラは「なぜ16年間も助けに来てくれなかったのか」とリスベットを激しく責めますが、「あなたが父を選んだ」というリスベットの言葉を聞いて崖から身を投げました。
カミラは残る選択をしたはずでしたが、組織を引き継ぐことの引き換えに父親から受けた虐待のすべてを、姉のせいだと思い込むしかなかったかもしれません。
まとめ
演出としては前作までの北欧作品特有の重厚なミステリーから、ハイテク機器を駆使した『007』や『ミッション・インポッシブル』のようなアクションカラーが強くなっている印象です。
キャストは前作のノオミ・ラパスの「セクシーでクールで強烈な個性の持ち主」という印象が強すぎて、クレア・フォイの演じるリスベットとは違い過ぎる気がしました。
表情に鋭さがなく、大きな目と可愛い顔がハードなアクションに合っていないような違和感があって、これまでのミレニアムファンにとってはちょっと物足りなかったかもしれません。
また、 シリーズのテーマ性としては 過去作の根底にあった「女性蔑視(ミソジニー)への抗い」という社会派テーマが本作では希薄になり、個人的な復讐劇におさまっているのも不完全燃焼といったところです。
アメリカ合衆国・スウェーデン合作となっていますが、アメリカが作るとこうなるのは仕方ないですね。
💡アメリカ制作で改変されてしまった作品「三体」
