この投稿は<「遊星王子」梅宮辰夫の東映ヒーロー映画>の続きです。
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子供の頃、地元東京下町の映画館で観た梅宮辰夫・主演「遊星王子」。
東映で初めてSF調のメカが登場した作品で、小学校6年生の時でした。
第2部「遊星王子 恐怖の宇宙船」は銀星の奇巖城で展開するスペースオペラ。
遊星王子に扮した梅宮辰夫,まぼろし大使の岡譲司、ヒロインの峰博子。
横長画面の「東映スコープ」ロゴも懐かしい。
東映株式会社は発足当時(昭和26年)厳しい経営状況にあった。二本立て興行を打ち出して間もなく、昭和29年に週替わりで全三部作公開した中編の冒険時代劇「新諸国物語 笛吹童子」が特大のヒットを記録、三作が一本分の製作費で済んで東映は大儲け。「新諸国物語 紅孔雀(五部作)」「少年探偵団シリーズ」「月光仮面シリーズ」など、当時"ジャリすくいの東映"などとバカにされながら少年観客層の圧倒的な人気を集めていく。
「月光仮面」同様、テレビ版の好評をうけて、東映が劇場版「遊星王子」「遊星王子 恐怖の宇宙船」(昭和34年)の全二部作を製作・公開した。
主演は東映ニューフェイス5期生の梅宮辰夫。
平和を乱すものは、宇宙人でも地球人でも許さない!
映画版の「遊星王子」コスチュームデザインがカッコいい。
靴磨きのワクさん、実は遠い星から来た遊星王子なのです。
遊星王子の武器は射光銃、梅宮辰夫が実際に「遊星王子」の衣装で撮影したそうです。
少年達はワクさんが面倒を見ている孤児の誠(小森甲二)、君子(都築みどり)。
<都築みどり、梅宮辰夫、小森甲二「遊星王子 恐怖の宇宙船」(昭和34年)より>
懐かしい東映版「遊星王子 恐怖の宇宙船」、ご一緒に如何でしょうか。
「遊星王子 恐怖の宇宙船」東映東京撮影所製作・昭和34年5月25日公開
モノクロ・東映スコープ・64分
主要スタッフ、キャストは「遊星王子」第1部と同様。
冒頭、遊星王子が乗る円盤の飛行シーンからスタート!
原作の伊上勝(いがみまさる)は宣弘社(テレビ映画制作プロダクション)の社員で、TVシリーズ「遊星王子」の脚本を執筆している。
映画版の脚本は、千葉真一のヒーローもの「宇宙快速船」(昭和36年)を執筆している森田新。
助監督の佐藤肇は、後に「海底大戦争」(昭和41年)、「吸血鬼ゴケミドロ」(昭和43年)など、怪奇・SF作品を多数手がけ、海外でもクエンティン・タランティーノなどファンが多い。
特殊撮影は「少年探偵団・透明怪人」(昭和33年)が面白かった宝来正三。
「遊星王子の歌」(作詞 - 伊上勝 / 作曲・編曲 - 服部克久 / 歌 - 大江洋一)
🎵遠い星から来た人は 正義の味方 ぼくらの仲間
強くやさしい ナゾの人 大きな希望に 正しい心
今日も活躍 遊星王子 平和の使い 遊星王子
梅宮辰夫は東映ニューフェイス5期生で、「少年探偵団 敵は原子潜航艇」(昭和34年)の明智小五郎探偵役で主演デビューした。
主演2作目の「遊星王子」でも主人公・靴磨きのワクさん、実は遊星王子として颯爽と登場。
ヒロインは峰博子。
東映東京撮影所の現代劇でお馴染みの懐かしい脇役キャスト。
神田隆は東映「警視庁物語」と同じ刑事役。
遊星王子と対決するまぼろし大使は、オールドファンには懐かしい岡譲司で、後述した。
長谷部健、須藤健、杉義一、佐原広二は新聞記者役。
増田順司、織本順吉、斎藤紫香、沢彰謙、南川直は国防関係。
まぼろし大使の部下に岩城力、三原浩。
監督は「月光仮面 魔人の爪」(昭和33年)、「少年探偵団 敵は原子潜航艇」の若林栄二郎(若林幹)。
東映アクション映画や、テレビ映画「キーハンター」「鬼平犯科帳」などの人気シリーズを監督している。
事件は起きた!
立石博士(曽根秀介)が乗った航空機が、伊豆沖東方で突然消息を絶った。
大空の窓の外には、奇怪な宇宙船が・・・
<曽根秀介(立石博士)>
立石:「あれは 何だ!」
<まぼろし大使の宇宙船ブラケット号>
国防省に向かう真城博士(明石潮)。
家族の幸子(峰博子)、一郎(朝見朗)に送られ家を出るが、消息不明となる。
「特別機動捜査隊」の荒牧刑事でお馴染みの岩上瑛が運転手役でチョイ出。
真城博士の娘・幸子役の峰博子は、「月光仮面」(昭和33年)、「少年探偵団 敵は原子潜航艇」などのヒロイン役が多い清楚な女優さん。
<峰博子>
こちら新聞社では、真城博士、立石博士の消息不明事件に大騒ぎ。
当時の東映現代劇お馴染みのメンバー、杉義一、佐原広二、須藤健が顔を揃えています。
<杉義一、佐原広二、須藤健>
杉義一は名優・杉狂児の実子。昭和22年、父・狂児と共に東横映画(のちの東映)入社。東映映画やテレビドラマの出演多数。昭和48年から3年間、千葉真一のジャパン・アクション・クラブの代表を務めている。
まぼろし大使(岡譲司)は生きていた。
真城博士、立石博士ら、地球の一流科学者たちを銀星の奇巖城にさらって、地球に降服を要求してきたのだ。
<銀星のセットと大使の宇宙船ブラケット号>
大使:「真城博士 銀星へようこそ ここは 私の居城 奇巖城だ」
<明石潮(真城博士)、曽根秀介(立石博士)>
立石:「あなたは いったい 誰なんだ」
大使:「私か 私は銀星の独裁者 まぼろし大使だ」
立石:「私らを どうしようと言うのだ」
大使:「あなたがたから 地上の人類に 即刻 降伏せよと告げていただきたい」
真城:「降伏?」
遊星王子(ワクさん)と対決するまぼろし大使は、オールドファンには懐かしい岡譲司が扮しています。
下は懐かしい昭和8年、岡譲二(岡譲司)主演「非常線の女」(小津安二郎監督)。
共演は田中絹代。最近、衛星劇場(CS)で放送されました。
<「非常線の女」より田中絹代と岡譲二(岡譲司)>
岡譲司は、明智小五郎と金田一耕助の両探偵を演じた数少ない役者です。
消息を絶った真城博士を心配する長男の一郎(朝見朗)。
靴磨きのワクさんが面倒を見ている孤児の誠(小森甲二)、君子(都築みどり)も真城博士を心配していると、大空に遊星王子の円盤が現れる。
一郎:「ワクさんは?」
誠:「昨日の晩から 帰ってこないんだ 今日は君ちゃんと二人で商売さ」
君子:「一郎さん 元気を出しなさいよ」
一郎:「うん 誠くん 遊星王子のおじさんは どうしたんだろう?」
<遊星王子の円盤>
<小森甲二(誠)、朝見朗(一郎)、都築みどり(君子)>
一郎:「あっ 遊星王子のおじさんだ お父さんを お願いしま~す」
まぼろし大使の宇宙船を追う、遊星王子の円盤。
ラスト、銀星の奇巖城で、遊星王子とまぼろし大使、最後の戦いが始まる。
<山本麟一(巨人獣)>
東映「警視庁物語」の常連・山本麟一、「遊星王子」第1部では刑事役、第2部「遊星王子 恐怖の宇宙船」では巨人獣で出演。
山本麟一は「月光仮面 怪獣コング」(昭和34年)でも怪獣コングを演じていた。
大使:「うむ 溶解弾で王子の円盤を倒せ!」
<銀星・奇巖城と遊星王子の円盤>
遊星王子の円盤が溶解弾で墜落した!?
しかし、奇巖城内部に乗り込んだ遊星王子は、まぼろし大使の部下を射光銃で倒す。
大使の部下:「あっ 遊星王子が!」
大使:「まだ生きていたのか!」
王子:「平和を乱すものは、宇宙人でも地球人でも許さない」
大使:「王子を光波砲で 片付けろ」
<火を吐く光波砲>
真城:「あっ・・・」
しかし、遊星王子は不死身であった。
王子の機転で奇巖城は、まぼろし大使と共に大爆発。
科学者たちは遊星王子の誘導により、大使の宇宙船ブラケット号で奇巖城から脱出した。
立石:「王子が我々を導いてくれる 地球へ帰れますぞ」
真城:「我々が無事な事を 地球の人たちに知らせましょう」
劇場版「遊星王子」を2度にわたり投稿しました。
円盤や宇宙船のメカ、登場人物のコスチューム、巨人獣が住む奇巖城とアクションシーン。あのころ(昭和33年)の少年を夢中にさせるには、十分な作品でした。
「遊星王子」アメリカでは「プリンス・オブ・スペース」のタイトルで映画版2部作を1本にまとめた83分の再編集版が1962年にテレビ放映されている。
当時、梅宮辰夫から弟分のように可愛がられていた俳優の岡崎徹は、自身が「仮面ライダーアマゾン」への出演を断ったことを告げたところ、梅宮から自身も「遊星王子」に出演していたことを引き合いに出されて「仕事を選べるような立場なのか」と叱責され、「アマゾン」への出演を決意したという(ウキペディアより)
真城博士役の明石潮は、大正13年に牧野省三に招かれ「栄光の剣」(東亜キネマ・後藤秋声監督)で初主演、剣劇スターとして数々の作品に主演していた。昭和の東映時代劇全盛時代ではお馴染みの名脇役。
<明石潮>
<「遊星王子 恐怖の宇宙船」ポスター②>
当時、東映から市販されたビデオテープ「遊星王子」(ベータ版)、高価でした(¥13800)が、欲しくて購入しました。まだVHSテープ普及前です。
自宅にSONYの“ベータマックス”(ビデオテープ再生機)があるので、まだ再生できると思います。
<劇場版「遊星王子」(ベータ版ビデオテープ)>
【森田新・脚本「宇宙快速船」】
「遊星王子」脚本の森田新は、同じSFヒーロー作品「宇宙快速船」(昭和36年・太田浩児監督)も執筆しています。
「宇宙快速船」はスーパーヒーローのアイアンシャープ(千葉真一)が地球侵略を謀る宇宙人と戦うSF・アクション映画。
<千葉真一「宇宙快速船」スチール写真>
東映特撮の重鎮、矢島信男のミニチュア爆破と合成の都市破壊シーンが秀逸です。
アメリカで「Invasion of the Neptune Men」のタイトルでTV放映されました。
<「宇宙快速船」特撮シーンより>
【「遊星王子」原作の伊上勝】
「遊星王子」原作の伊上勝(いがみまさる)は昭和33年、宣弘社(テレビ映画制作プロダクション)に入社したばかりで、東芝商事のテレビドラマ台本の懸賞募集に「遊星王子」の脚本を一晩で書き上げて応募したところ入選。宣弘社プロダクション製作で連続テレビ映画「遊星王子」が放送されました。
主人公・靴みがきの青年ワクさん、実は遊星王子を三村俊夫(村上不二夫)が演じています。
こちらはTV版「遊星王子」のコスチューム。
<三村俊夫(村上不二夫)日本テレビ系「遊星王子」より>
文中、敬称略としました。ご容赦ください。
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