アルコール依存症になってしまう秀成(成宮寛貴)と、強気で繊細な8歳年上の額子(内田有紀)との10年にわたる屈折したラブストーリー。
芥川賞作家・絲山秋子の小説「ばかもの」を金子修介監督が映画化。
難役の額子(がくこ)をセクシャルに演じきった内田有紀が凄い。
情熱的なラブシーンも厭らしさがなく、繊細な表現も見事に演じています。
愛することの哀しみと歓びが力強く表現された秀作。
公開当時(2010年)も、いま観ても、期待以上の作品です。
内田有紀ファンは押さえておきたい作品。
投稿記事は、ほんの一部です。
DVD化されていますので、本編を鑑賞ください。
お薦めです。
2010年製作/120分/PG12/劇場公開日:2010年12月18日
原作・絲山秋子、脚本・高橋美幸、監督・金子修介
出演・内田有紀、成宮寛貴、白石美帆、古手川祐子、浅田美代子、小林隆、浅見れいな、池内博之。
大学生の秀成(成宮寛貴)は、父(小林隆)、母(浅田美代子)、姉(浅見れいな)と暮らしている。
秀成:「あ・・・秋休み」
姉:「何それ こないだ夏休み終わったばっかじゃん」
母:「あんたの大学 休み多すぎ」
秀成:「うるせえ」
父:「(秀成に)お前 晩めし終わったら 忘れもん取ってきてくれ」
秀成:「忘れ物?」
父:「ああ 競馬場の近くの おでん屋だ」
<FO>
競馬場の近く、額子(内田有紀)の母 (古手川祐子)が切り盛りするおでん屋。
<古手川祐子(額子の母)>
額子は、父親の忘れ物を取りに来た秀成に、バカにしたように声をかける。
額子:「(笑いながら) えらいね お父さんの おつかい?」
額子:「ご褒美あげようか(グラスにビールを注ぐ)」
秀成:「は?」
額子:「ま とりあえず」
秀成:「いや 俺 飲めないすから」
<内田有紀>
額子:「いいから は~い 早く 早く」
秀成:「(ビールを飲む)」
額子:「(笑う額子)」
額子(内田有紀)はアルバイト帰りの秀成(成宮寛貴)を見つけて、声をかける。
秀成は、声の主が誰だかわからない。
額子:「暇でしょ 乗んなよ 雨降るよ」
秀成:「?」
額子、毛糸の帽子をかぶる。
額子:「覚えてない? この顔」
額子:「競馬場の近くの おでん屋の娘!」
秀成:「あ・・・っ」
額子:「そうだ 映画行こうか 映画行こ」
額子に連れてこられたのは成人映画専門館。
秀成:「(おどろいて) え? ここ?」
額子:「セックスはやめられない 2枚」
<FO>
秀成は8歳年上の、愛犬ホシノと暮らす額子に強くひかれてアパートに通いつめ、情事に溺れて留年してしまう。
秀成:「あっ ちょっと待って」
額子:「待って? じゃあ何で 部屋まで付いてくんのよ」
秀成:「いや 俺 マジで初めてで」
額子:「ふ・・・ マジで」
秀成:「笑うかな 笑うこと ないしょ」
額子:「みんな初めては あんの」
額子:「キスも初めて」
秀成:「いいえ キスはあります」
💛💛💛💛
秀成:「ネエネエ」
額子:「うるさいな わたしダメ きのう何回やったと思ってんだよ」
秀成:「ほら まだこんなだよ」
額子:「う~ん もう」
💛💛💛💛
額子の愛犬ホシノが愛らしい。
<FO>
また別の日。
<内田有紀>
秀成:「ごめん 遅くなって」
額子:「別に 待ってないし」
秀成:「逢いたかった」
額子:「わかったよ やりゃーいーんだろー やりゃー」
秀成:「王将で餃子買ってきたんだ」
秀成:「額子ってさ 終わった後も可愛いよな」
額子:「ばかもの・・・」
秀成:「おれ マジ額子のこと好き 額子は?」
秀成:「何でこいつ ホシノって言うの?」
額子:「別れた男の名前」
秀成:「何で別れたの」
額子:「別に・・・」
ある日、秀成は額子から突然別れを告げられる。
秀成は公園の木に下半身を露出状態で縛りつけられ、置き去りにされてしまう。
額子:「結婚すんだ あたし」
秀成:「結婚って?」
額子:「うん もう決めたから」
秀成:「俺とのことは?」
額子:「遊び以外の 何だっていうんだよ」
秀成:「え~っ 待てよ」
秀成:「待ってよ額子 どうすんだよ これ」
<FO>
秀成は何とか大学を卒業し、家電品量販店に就職。
学友・加藤(池内博之)の結婚式で出会った翔子(白石美帆)と付き合い始める。
秀成:「何やってる人なんですか?」
翔子:「教師・・・です」
秀成:「あ そうなんですね 失礼しました」
翔子:「嫌いですか 教師」
秀成:「あのう俺 勉強の方が 全然で」
秀成・翔子:「(笑いあう)」
<FO>
秀成は、友人たちと飲み会の後、テレビの設置を手伝うため、翔子の部屋に来る。
<成宮寛貴、白石美帆>
翔子:「こんな夜遅くに ごめんね」
秀成:「あいつらに乗せられて 夜遅く女の人の部屋に」
翔子:「それはいいの」
翔子:「本当に嫌な人だったら 最初からあげてないし 絶対」
秀成:「ほんと?」
翔子:「(うなずく)」
💛💛💛💛
<白石美帆、成宮寛貴>
翔子:「う~ん もうおしまい 朝食作んないと」
秀成:「いいよ 朝飯なんて」
<白石美帆>
翔子:「だめよ 朝はきちんと食べないと ちょっと待ってて」
<FO>
秀成は翔子と同棲し、仕事もそこそこ順調であったが、額子のことを忘れられず、やがてアルコール依存症になる。
翔子:「私に悪いところがあったら言って 直すから」
秀成:「翔子は悪くない」
翔子:「どうしてお酒ばっかり飲むの?」
秀成:「知らねえよ」
翔子:「私のことが嫌」
秀成:「は? そんなんじゃねえよ」
翔子:「私と結婚したくないんでしょ だから飲むんでしょ」
秀成:「ちげえよ」
やがて、翔子は秀成から去ってしまう。
<FO>
酒で姉(浅見れいな)の結婚式もぶち壊す秀成。
酒酔い運転で交通事故を起こし、リハビリセンターに入所する。
警官:「どれくらい飲んだか 覚えてないのか」
秀成:「すいません」
秀成の父:「秀成の父親でございます」
秀成の母「この度は 申し訳ありませんでした」
警官:「人でも死なせたら あんたら一生もんだよ」
秀成の父:「お手数をお掛けします」
秀成の父:「俺の責任かも知れん あいつがこうなるまで 何も出来なかったなんて」
秀成の母「あの歳になって もう あの子の責任だよ 私たちは見守っていくしかない」
<中略>
リハビリセンターを出所した秀成は、額子の母 (古手川祐子)のおでん屋で、額子の消息を尋ねる。
<古手川祐子、成宮寛貴>
秀成:「額子 いまどうしてる」
額子の母:「事故に遭って左手を失った 家を出たんだ いまは片品にいるさ」
額子の母:「あの子の死んだ父親が女と住んでた所さ 額子に 家残してくれたのさ」
額子の母:「あんたの人生メチャクチャにしたのは 自分だと思ってる」
秀成:「額子のせいじゃねえよ 俺が弱かっただけだよ」
額子の母:「額子は そう思ってないよ」
秀成:「額子のせいじゃねえ」
秀成がバスを降りると、額子が待っている。
<成宮寛貴>
<内田有紀>
<内田有紀、成宮寛貴>
秀成:「この車 額子の」
額子:「うん 片手で操作できるようになってる」
<成宮寛貴、内田有紀>
額子:「ご飯食べてきなよ いま作るから」
<中略>
秀成は両親と姉に許しを請う。
<浅見れいな、小林隆、成宮寛貴>
父:「おまえ 最近 片品に行ってるのか?」
秀成:「うん」
姉:「あの 年上の女のせいで おかしくなったんだよ 分かってんの!」
秀成:「ごめん でも額子は 姉貴が思ってるような 悪い女じゃないんだ」
姉:「でも・・・」
母が話をさえぎって
母:「そうかい あんたが そう決めたんだったら 何も言わないよ」
母:「今度こそ 後悔しないように しっかり しっかりするんだよ」
<FO>
そして、ふたたび額子の住む片品に向かう。
<内田有紀>
額子:「頼みがあるんだけど」
秀成:「何?」
額子:「ほとんど何も困んないんだけど 1個だけ出来ないことがあるんだ」
秀成:「出来ないこと?」
額子:「右腕を 右腕を洗って欲しい」
秀成:「うん そんなことだったら」
額子:「わきの毛 剃って欲しい」
秀成:「あのなぁ どういうつもりだ」
額子:「自分じゃ 出来ないから」
<FO>
額子:「この枝から 川を見下ろしたくなった」
秀成:「無理だろう」
額子:「大丈夫」
額子:「あんたにも この景色 見せてあげたいよ」
秀成:「額子」
額子:「なんだよ!」
秀成:「おれが溺れそうになったら また殴ってくれよ」
額子:「殴ってやるよ 何発でも」
秀成:「おまえさ 俺と結婚したいのかよ」
額子:「養子にしてやるよ 大人になるまで 面倒見てやるよ」
秀成:「(笑って) ばかもの」
【成宮寛貴(なりみや ひろき)】
成宮は、映画「ばかもの」のコメントで「これから恋愛する人は、こんな恋愛もあるのかって見ればいいでしょうし、今までいろんな恋愛をしてきた人なら、“ああこんな思いをしたなあ”って見方もいいと思うんです。いろんな人間が生きていくうちにどういう思いをするのか? ということでもあるんですよね。屈折していて回りくどくて、でも愛しい」と語っている。
成宮寛貴の経歴は、平成12年に宮本亞門演出の舞台で俳優デビューしています。映画は「あずみ」(平成15年)など多数。平成24年10月「相棒」(テレビ朝日)の3代目相棒・甲斐享役で出演、「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」(平成26月) にも出演しています。その他TVドラマ出演多数あり。平成28年12月に芸能界からの引退を発表。現在は本名の平宮 博重(なりみや ひろしげ)名義で、企業や有名ブランドのプロダクトデザインなどのPRやクリエイティブに関わる仕事をしています。
【内田有紀】
内田は映画「ばかもの」のコメントで「成宮(寛貴)くんが演じるヒデという男の子の人生の一部分にかかわっていくという女性でしたから、(私と成宮くんで)一緒に共同作業していった感じですね」と語っている。
内田有紀の経歴は、平成4年のTVドラマ「その時、ハートは盗まれた」(フジテレビ)で女優デビュー、同年冬のユニチカ1993年(平成5年)水着キャンペーンモデルに選出されています。平成6年に初主演した「時をかける少女」(フジテレビ)を観ていました。懐かしい。平成14年「北の国から 2002遺言」で共演した俳優の吉岡秀隆と結婚、家庭に入りましたが3年後に離婚し、女優復帰。現在も、映画、TVドラマで活躍が著しい。結婚しても、離婚しても素敵な女優さん。ファンです。
*1993年(平成5年)ユニチカ水着キャンペーンガール内田有紀(18歳)*
*内田有紀(平成6年)「時をかける少女」より*
【白石美帆】
いつもキュートで素敵な白石美帆、いまは二児のお母さんなんですね。
ファンです。
<白石美帆 (写真集より)>
【金子修介監督】
昭和59年に日活ロマンポルノ「宇能鴻一郎の濡れて打つ」で商業監督デビュー。「ガメラ 大怪獣空中決戦」(平成7年)に始まる平成ガメラシリーズ、「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(平成13年)など怪獣映画の2大シリーズ両方とも撮った監督である。近作では岡田将生主演の「ゴールド・ボーイ」(令和6年)が公開された。
<金子修介監督>
<2010年12月24日の讀賣新聞広告>
【原作本】
映画「ばかもの」の原作本です。
究極の恋愛長編、芥川賞作家・絲山秋子の原作小説「ばかもの」もお薦めです。
文中、敬称略としました。ご容赦ください。