昭和時代の特撮シーン。「青島(チンタオ)要塞爆撃命令」のクライマックス、弾丸運搬列車が大爆発を起こしながらビスマルク要塞に突っ込んでいく円谷特撮が好きです。
珍しい第一次世界大戦を扱った昭和38年製作・公開の東宝戦争アクション娯楽作。
監督・古沢憲吾、特技監督・円谷英二。
日本初の海軍航空隊としてドイツ帝国軍に立ち向かった若者たち(加山雄三、佐藤允、夏木陽介)を描く、草創期の飛行機モーリス・ファルマン水上機が活躍する円谷特撮が楽しい空中戦闘スペクタクル。
昭和38年製作・公開 カラー/東宝スコープ/99分/東宝
古沢憲吾監督独特の、画面の奥から飛び出してくるタイトルで始まります。
特撮スタッフ。
特撮の神様、円谷英二は、初期の飛行機を描いた「素晴らしき飛行機野郎」のような映画を撮りたいと思っていたそうです。
当時「モスラ」「世界大戦争」「妖星ゴラス」と世界の特撮のトップレベルの作品を完成・成功させていた黄金時代を迎えつつあった頃の作品。
古沢憲吾のダイナミックな演出とともに戦記と活劇が見事に結合しています。
<円谷英二>
第一次世界大戦、日本は日英同盟によりドイツ帝国・青島(チンタオ)攻略に参戦するが、ビスマルク要塞には巨大砲台が設置され、連合艦隊も接近は難しい。
1961年の名作「ナバロンの要塞」(J・リー・トンプソン監督)風だが、こちらも面白い。
当時ドイツは中国・山東省の膠州湾一帯を租借地として 青島にアジア政策の拠点を置いていた。
ビスマルク要塞のセットは、御殿場に1/10スケールの巨大なオープンセットと、スタジオにも1/25スケールのセットが組まれた。
爆弾投下シーンはヘリコプターからの空撮で迫力の爆撃場面となった。
ドイツ軍の誇る巨大な要塞“ビスマルク砲台”からの攻撃に、連合艦隊も接近が難しい。
連合艦隊の加藤長官(藤田進)は、まだ黎明期の飛行隊に望みをかける。
大杉少佐(池部良)以下、パイロット5名と2機のファルマン水上機は出撃を決意する。
<大杉少佐(池部良)>
大杉:「飛行機に出動命令が下った 青島のビスマルク要塞を爆破するんだ」
<国井中尉(加山雄三)、二宮中尉(夏木陽介)、真木中尉(佐藤允)>
真木:「生まれたばかりの赤ん坊に 走れというのと同じだ」
国井:「出来ませんじゃ 飛行機はお払い箱になる いいかげん腹を決めろ」
二宮:「いいから いいから まっ そうカッカするな」
日本初の海軍航空隊ファルマン水上機2機は出撃しますが・・・。
クライマックス、ドイツ軍の弾丸運搬列車がビスマルク要塞に向かって力走する。
真木中尉(佐藤允)と国井中尉(加山雄三)は搭乗するファルマン機から、目視で弾丸運搬列車めがけて次々と爆弾を落としていく。
<国井中尉(加山雄三)、真木中尉(佐藤允)>
真木:「あっ 国井 あれだ 弾丸列車は!」
国井:「ようし 追っかけろ」
ドイツ兵:「わっ 日本の飛行機だ 全速力で走れ!」
ドイツ兵:「トンネルに逃げ込め!」
弾丸運搬列車と人物の合成シーンを加えることで、特撮場面にリアル感が増します。
(爆走する機関車の音)
トンネルに逃げ込む弾丸運搬列車。
真木:「おい 急げ トンネルに入るぞ」
(爆走する機関車の音)
上空から目視で爆弾を投下する国井中尉(加山雄三)、真木中尉(佐藤允)だが、なかなか弾丸運搬列車に命中しない。最後の一発は・・・。
弾丸運搬列車は、特注でガソリンエンジンを搭載した鋼鉄製の本格的なミニチュアで、無人カメラで撮影されたそうです。
国井:「よーし 投下!」
トンネルに逃げ込む弾丸運搬列車。
国井:「しまった!」
真木:「バカ! バカ野郎!」
しかし、最後の1発が列車の最後尾に命中し、列車は大爆発を起こしながらビスマルク要塞に突っ込んでいく。
後方から列車に積んでいる弾丸が次々爆発していく、円谷英二特撮の真骨頂。
(連続する物凄い爆発音)
列車から飛び降りるドイツ兵。
(爆走する機関車の音と、連続する物凄い爆発音)
暴走する弾丸運搬列車がビスマルク要塞の弾丸倉庫に突進。
(爆走する機関車の音と、連続する物凄い爆発音)
弾丸運搬列車はビスマルク要塞地下の壁を破って疾走、弾丸倉庫は大爆発。
(連続する物凄い爆発音)
(連続する物凄い爆発音)
(連続する物凄い爆発音)
複葉機の空中戦も見応えあるが、クライマックスの弾丸運搬列車が大爆発を起こしながらビスマルク要塞に突っ込んでいく円谷特撮が秀逸。
ビスマルク砲台が崩壊!
日本兵たち:「おい 見ろ やったぞーつ!」
《女優は浜美枝ひとり》
「青島要塞爆撃命令」に登場する女優は浜美枝ひとり。
真木が窮地を救った娘・楊白麗(浜美枝)、実はドイツ軍のスパイであったが・・・。
<楊白麗(浜美枝)>
「青島要塞爆撃命令」DVD化されています。
本編を是非DVDでお楽しみください。お薦めです。
《庵野秀明特撮博物館》
弾丸運搬列車の機関車は、ガソリンエンジンを搭載した鋼鉄製で全長約1m50㎝。
平成24年のイベント「館長 庵野秀明特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」で展示されたそうです。実物見たかった!。
ファルマン水上機。
操縦席の人形は手足が曲がるようになっている。
模型エンジンを積んでいる。
《レーザーディスク》
当時、映画館で観た「青島要塞爆撃命令」が面白くて、レーザーディスク(LD)発売と同時に、購入しました。
いまは高齢のため断捨離しようと、たくさん蒐集したレーザーディスクを格安でメルカリに出品していますが、なかなか売れません。
LDプレーヤーをお持ちの方が少ないのでしょうね。
<レーザーディスク・ジャケット>
《古澤憲吾監督》
「青島要塞爆撃命令」本編の古澤憲吾監督〈大正8年~昭和62年〉は昭和18年に東宝入社。クレージーキャッツ映画や若大将シリーズの監督作品が多い。演出時のテンションの高さは有名だそうで、撮影中は大声で始終怒鳴りまくっていたという。「青島要塞爆撃命令」では「特撮は迫力が無いから使わない」と主張。特技監督の円谷英二に「じゃあ、特撮無しでやってみなさい」といなされて古澤のみで撮影に入ったが、結局円谷の所へ詫びを入れる始末となった。その後は特撮の出来を見て「やっぱり円谷だよな」と平伏していたという。昭和40年にも円谷英二と組んで、植木等主演の特撮アクション喜劇「大冒険」を監督している。
<越路吹雪(中央)「大冒険」より>
こちらは昭和37年「ニッポン無責任時代」主演の植木等と演出の古沢憲吾監督(左)。
文中、敬称略としました。ご容赦ください。