鎌田敏夫の原作「新・里見八犬伝」を、鎌田敏夫と深作欣二がシナリオ化し、深作欣二が監督したファンタジー時代劇映画「里見八犬伝」。

出演は、薬師丸ひろ子真田広之、松坂慶子、千葉真一。

<薬師丸ひろ子>

製作の角川春樹は、昭和30年代の東映の冒険活劇時代劇「里見八犬伝」シリーズなどに胸躍らせた世代で、「復活の日」(昭和55年)と共に「里見八犬伝」の映画化を熱望したそうです。

 

製作費10億円、その年の配収邦画1位の23億2000万円を記録、あらためて薬師丸ひろ子の人気の凄さを示しました。映画公開と同時に発売されたビデオも5万本、7億円を売り上げたとか。

<真田広之、薬師丸ひろ子>

キャッチコピー“いま神秘がSFを超えた!”の角川映画・特撮時代劇「里見八犬伝」は、JACの迫力あるアクション、特殊メイクや矢島信男の特撮を駆使して製作され大ヒットした大型エンターテイメント映画です。

<公開当時の「里見八犬伝」(スバル座)映画館大絵看板>

 

「仁義なき戦い」シリーズの深作欣二監督は「ガンマー第3号 宇宙大作戦」(昭和43年)、「宇宙からのメッセージ」(昭和53年),「復活の日」(昭和55年),「魔界転生」(昭和56年)などのSF作品も多く演出しています。好きなんですね、きっと。

 

「里見八犬伝」で特撮を担当した矢島信男・談

矢島「特撮は館山城の壊しが見せ場です。崩れかけの不気味な城ね。城内の壁や柱が崩れるのもミニチュアで撮っています。特撮は、ただ壊れるだけじゃつまらないじゃない。ミニチュアも同じデザインで細かく再現した。石像の首が転がって主人公たちを追ってくるのは「レイダース」の洞窟の中を転がってくる岩がヒントです。本編のセットが凄いからね、東映京都のセットは巧いですよ。

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こちらは東映時代劇黄金期の懐かしい東映版「里見八犬伝傳」ポスター

角川春樹少年も、東映の冒険活劇時代劇に胸躍らせたのでしょうね。

昭和29年東千代之介主演「妖刀村雨丸」「芳流閣の龍虎」「怪猫乱舞」「血盟八剣士」「暁の勝鬨」の5部作(河野寿一監督)。

<昭和29年版「里見八犬伝傳」5部作>

 

こちらは昭和34年、伏見扇太郎、里見浩太朗ほか東映若手スター勢揃いの東映スコープ総天然色版「里見八犬傳」「里見八犬傳 妖怪の乱舞」「里見八犬傳 八剣士の凱歌」の3部作(内出好吉監督)。

<昭和34年版「里見八犬伝傳」3部作>

 

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 “深作欣二(監督)×矢島信男(特撮)”東映特撮の魅力。

 

宇宙からのメッセージ(昭和53年)

ヴィック・モロー、志穂美悦子、千葉真一、真田広之。

東映が「スター・ウォーズ」に対抗し、10億の巨費を投じて挑んだ石ノ森章太郎原案、八犬伝をモチーフにした超大作SFアドベンチャー。

矢島:「超大作ですよ。日本に数台しかなかったシュノーケルカメラも使えた。ドームの中でメカが宙返りするカットは吊りが出来ないから操演では難しいので、ECGっていうビデオ合成の技術を本格的に導入しました。

<ヴィック・モロー>

 

★魔界転生(昭和56)

魔界から蘇った天草四郎時貞(沢田研二)が、同じく現世に思いを残して死んでいった死者たちを蘇らせ復讐を図る、山田風太郎原作の伝奇ロマン。

矢島:「クライマックスの炎上する江戸城が特撮の見せ場です。火勢も半端じゃなかった。作さん(深作欣二)は本当にセットに火を放つんだから恐ろしいよ。満足せずにバーナーの火も加えていた。こういうのは今では合成やCGになっちゃうんだろうね。僕は火や水などの自然現象はアナログ特撮でやるほうが好きだね。」

<沢田研二、千葉真一>

 

★風来坊探偵 赤い谷の惨劇(昭和36年)

深作欣二の第1回監督作品で、千葉真一の初主演作でもある。風来坊探偵こと西園寺五郎(千葉真一)が山岳を舞台にセスナ機墜落事件の謎を究明する。

東映特殊撮影の旗手・矢島信男のセスナ機墜落特撮や派手な銃撃戦・爆破シーンも見逃せない。

矢島:「セスナ機が崖にぶつかるんだよ。間を作ると言うか、すぐに墜落すると いい特撮シーンに見えない。激突までに二、三カット入れると迫力が出るんだな。」

<千葉真一、曽根晴美>

 

《過去のアメブロ投稿》

 

★風来坊探偵 岬を渡る黒い風(昭和36年)

シリーズ第2作。風来坊探偵こと西園寺五郎が海を舞台に相次ぐ漁船沈没事件の真相を究明する。

冒頭と中盤、嵐の海の特撮も矢島信男が担当。

矢島:「シリーズの2本目で監督は同じ作さん。今度は船の特撮だ。機材が無い頃で苦労した。波にもまれて二隻がぶつかって、ダイナミックな場面にはなっているね。あの人は好きなんだね 特撮が。僕とは合う仲間だった。」

<千葉真一、曽根晴美>

 

《過去のアメブロ投稿》

 

《過去のアメブロ投稿》

《矢島信男・著「東映特撮物語 矢島信男伝」から抜粋》

作さんとはよく飲みました。彼が助監督時代からの付き合いで、監督デビュー作の「風来坊探偵赤い谷の惨劇」では、僕が冒頭のセスナ墜落シーンの本編と特撮シーンのコンテを描いた。それが良かったって信頼を置いてくれてさ。大監督になってから何度も組んだけど、何も打合せしなくとも本編と特撮がピタッと合うんだな。

<矢島信男>

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<深作欣二>

 

文中、敬称略としました。ご容赦ください。

 

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