昭和49年東映京都作品「ポルノ時代劇 忘八武士道」は、報知新聞連載の小池一夫(原作)、小島剛夕(画)の劇画「忘八武士道」を、佐治乾がシナリオ化し、石井輝男が監督。丹波哲郎が主演しました。
出演者の記事を中心に、丹波哲郎、ひし美ゆり子、石井輝男のインタビューを拾い集めて、原作の劇画と映画の魅力を投稿します。
50年程前に劇場公開された作品。DVD化されています。
<丹波哲郎>
明日死能:「死んでいくのが地獄なら、生きていたとてまた地獄」
冒頭のタイトル部分から流血シーンや、火花が散るチャンバラ。
劇画っぽいユニークな石井演出。
捕り手:「明日死能 御用だ 神妙にしろ 御用だ」
捕り手:「御用だ 御用 御用・・・」
<原作の劇画より>
【物語】
“人にして人に非ず”孝・悌・忠・信・礼・義・廉・恥の八つの徳を捨てた江戸吉原一帯をとりしきる無頼の徒を忘八者と称した。
役人に追われ「死んでいくのが地獄なら、生きていたとてまた地獄」と凄む人斬り死能こと明日死能(丹波哲郎)は、吉原遊廓の忘八者・白首の袈裟蔵(伊吹吾郎)に助けられ、吉原総名主・大門四郎兵衛(遠藤辰雄)の客分となる。
大門四郎兵衛は江戸で流行りの湯女、茶屋女などの私娼窟を潰そうと明日死能を利用するが、やがて邪魔になった明日死能を阿片と女色で骨抜きにしてしまう。
ポルノ時代劇(成人指定)と謳うだけに、ひし美ゆり子、池島ルリ子、相川圭子など妖しい女忘八役の女優陣。
降りしきる雪の中、明日死能が阿片で朦朧とした意識の中で、捕物陣を相手に五体が宙を舞う凄まじい殺陣を展開する。
剣の無情、愛欲非道を描いた本格的な時代劇。
昭和48年第1刷発行の古い原作本「忘八武士道」を書棚に保存しています。
映画は、ほゞ原作通りで、劇画を意識した映像の石井演出が楽しい。
<「忘八武士道」原作本表紙>
【丹波哲郎】
主演の丹波哲郎は昭和27年の新東宝「殺人容疑者」でデビュー。
映画出演は300本以上。「人間革命」「砂の器」「二百三高地」などの演技が高く評価され、「007は二度死ぬ」(昭和42年)などの外国映画にも10本出演しています。
「忘八武士道」では人斬り死能こと、明日死能役。捕物陣と切り結ぶなどの殺陣はさすがに上手い。
平成18年9月84歳没。
ラストシーン。
降りしきる雪の中、阿片で朦朧とした意識で捕物陣を相手の凄まじい殺陣を展開する劇画と映画のクライマックス。
<丹波哲郎>
捕り手:「御用だ 御用 御用・・・」
<捕り手役・川谷拓三>
捕り手:「あーっ」
捕り手:「御用だ 御用 御用・・・」
白首の袈裟蔵(伊吹吾郎):「あれが阿片に冒された男か?」
手下:「あれじゃ 捕り手が全滅しちゃいますぜ」
明日死能:「さすがに鬼包丁 よう斬れる よう斬れる」
《丹波哲郎インタビュー》
ワイズ出版「大俳優 丹波哲郎」より「忘八武士道」の記述を抜粋掲載。
聞き手はダーティ工藤氏。
―1973年に久々に東映で主演した「ポルノ時代劇 忘八武士道」ですが、あれは丹波さんの企画ですよね。
丹波:「企画というよりも、原作(小池一雄・小島剛夕)の同名劇画を買っちゃったからね。」
―忘八武士道は続編で「忘八武士道 さ無頼」というのをやってるんですが、主演が伊吹吾郎さんにチェンジしてますよね。監督は原田隆司さんという当時は若手の監督です。
丹波:「で、正直言ってどっちが面白いの」
―それは石井・丹波コンビの方が面白いに決まってるじゃないですか」
丹波:「そうだよね。うん、そう思う」
―丹波さんがゲスト出演した石井輝男監督の「地獄」でも、「忘八武士道」の役柄と衣装で、地獄の鬼どもを斬りまくってましたよね。
丹波:「あれは石井ちゃんのアイデアだな。」
石井輝男(監督)とは新東宝時代からの盟友で、東映に移ってからも親しく、石井晩年の低予算自主制作作品「地獄」(平成11年)にも明日死能役で付き合っている。
【ひし美ゆり子】
忘八者、女衒の姫次郎(久野四郎)が、元さむらいの娘(ひし美ゆり子)から借金を取り立てる。
その娘の身体で借金を返してもらう算段だ。
明日死能(丹波哲郎)が用心棒として姫次郎に同行している。
ウルトラセブン、アンヌ隊員役が懐かしい“ひし美ゆり子”さん、プロ根性の女優さんです。
<ひし美ゆり子>
娘:「無礼な 断りもなく」
<久野四郎>
姫次郎:「お前さんこそ 断りもなく 期限が来ても 借金を返さねえ その身体で 借金の始末を付けてもらいやすぜ 俺には人斬り死能っていう 用心棒が付いてるんだぜ」
娘:「それ以上近づくと 死にます」
明日死能:「こいつの方が もっと楽に 死ねるぜ」
娘:「武士の情けをお忘れか その刀に恥じると思わないのですか」
ひし美ゆり子さんが、ウルトラセブン・アンヌ隊員役出演の経緯から、「忘八武士道」撮影時のエピソードなどを語っています。
《ひし美ゆり子インタビュー》
ひし美:「セブンのアンヌ隊員役は別の人が決まってたんですが、映画に出るって言うんで降りちゃったんです。私が代役で出たんで隊員服も小さめだったんです。」
(中略)
ひし美:「最初は(忘八武士道)断ったんです。そしたら、週刊誌のグラビアを見た石井輝男監督に、私だけ役を大きくするから是非是非って言われたんです。丹波さんカッコ良かったぁ。男丹波の映画ですよ。とても親切で女優陣みんなに人気がありましたね。」
ひし美:「みんな大変ですよ。日本はヘアーがまだ解禁されていませんから、前張りを毎日貼ってまして、それから衣装来て脱がされるシーンを撮影してました。女性たちで前張りの上手い貼り方を話してた思い出しかないですね。布にガムテープを張ってみたいな感じでしたね。」
(中略)
ひし美:「昔は隠れ隠れ恥ずかしくて親には内緒にしていましたが、今になったらDVD化されたりして、私の宝だと思うようになりましたね。有難いと思ってるんです。」
<ひし美ゆり子 ウルトラセブン・アンヌ隊員のころ>
【伊吹吾郎】
伊吹吾郎は昭和44年のTV時代劇「無用ノ介」や、昭和58年の「水戸黄門」での格さん役が懐かしい。
「無用ノ介」原作の“さいとうたかを”が「風貌があまりに劇画的」だったと語っている。
「忘八武士道」では吉原遊廓の忘八者・白首の袈裟蔵役。目元のメイクが凄い。
<伊吹吾郎>
ラストシーン、降りしきる雪の中、阿片で朦朧とした意識で捕物陣を相手の凄まじい殺陣を展開する明日死能(丹波哲郎)を見届ける白首の袈裟蔵(伊吹吾郎)。
袈裟蔵:「自らの身体を傷つけ 阿片の幻覚を覚ましているぜ」
袈裟蔵:「恐るべし 人斬り死能 吉原末代までの 語り草」
伊吹吾郎は同年(昭和49年)「忘八武士道」の続編、武士を捨てた素浪人が忘八者となる「忘八武士道 さ無頼」(原田隆司監督)に主演しています。
【遠藤辰雄】
吉原総名主・大門四郎兵衛役・遠藤辰雄(遠藤 太津朗)の怪演が楽しい。
物語中盤、吉原総名主・大門四郎兵衛(遠藤辰雄)は明日死能(丹波哲郎)を客分に向かえ、首斬り浅右衛門が使ったという大刀“鬼包丁”を与えて私娼窟退治を依頼する。
<遠藤辰雄>
大門四郎兵衛:「今日からお主は わしの客分じゃ」
明日死能:「俺を何に使うつもりだ」
大門四郎兵衛:「わしの仕事の邪魔をする奴は 誰でも斬りまくってもらいたい」
大門四郎兵衛:「二代目 首切り浅右衛門が使った 鬼包丁と呼ばれる業物 これで暴れまくってもらいたい」
明日死能:「たっぷりと血を吸っておるな 囚人の呪いの血をな」
遠藤辰雄はTV時代劇「新選組血風録」(昭和40年)での憎々しい芹沢鴨役が絶品。
また「銭形平次(大川橋蔵版)」の三輪の万七役で親しまれた。大川橋蔵の告別式の際は、林家珍平とともに友人代表として弔辞を読んでいる。
昭和46年に京都市民映画祭助演男優賞、昭和53年には同映画祭特別功労賞を授与された。
素顔の遠藤は極めて温厚な性格で、酒好き。
若い俳優やスタッフらと酒を飲みながら熱心に語り合うことが多く、たいへんな愛妻家であったそうです。
平成24年7月84歳没。
<遠藤辰雄(芹沢鴨役) 「新選組血風録」より>
<遠藤辰雄(三輪の万七役)・右は大川橋蔵 「銭形平次」より>
【石井輝男】
石井輝男監督は、原作「忘八武士道」の劇画タッチを見事スクリーンに再現している。
石井監督は昭和32年、宇津井健主演の新東宝「リングの王者 栄光の世界」で監督デビュー。
新東宝で「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」シリーズ、昭和33年に初の女侠客もの「女王蜂」シリーズ、昭和35年に日本版カスバもの「黄線地帯」などの地帯シリーズなど魅力的な作品を監督。
新東宝倒産により東映に移り、高倉健主演の「網走番外地」シリーズが大当たりしてシリーズ10本を監督している。
一方、昭和43年に始まる「徳川女系図」など娯楽要素満載のエロティシズムの世界は冒険心がいっぱい。
奇抜なアイデアと歯切れ良い演出の石井作品を大いに楽しんだあの頃が懐かしい。
網走市内の潮見墓園の墓碑に「安らかに 石井輝男」と記された碑文は、高倉健によるものである。
平成17年8月81歳没。
《石井輝男インタビュー》
ワイズ出版「石井輝男映画魂」より「忘八武士道」の記述を抜粋掲載。
―「忘八武士道」は佐治乾さんの脚本なんですよね。
石井:「原作通りにやったらどうですかってプロデューサーに話して、原作に忠実な構成で・・・。」
―このころは劇画の原作ものがはやってたんですね。石井さんものったんじゃないですか。
石井:「そうです。丹波ちゃんも、のりましてね。遊んじゃった感じですけどね。二人で。
―最初のところ「忘八試し」をやりますが、面白かったですね。丹波さんの立ち回りは新鮮な感じがあります。
石井:「これは丹波哲郎がのりにのってやったんです。だいたい丹波ちゃんとやる時は、仲間どうしだから遊んじゃうって傾向なんです。」
―ひし美ゆり子さんがいいんじゃないですか。石井さんのエロティックな面にうまくはまっていました。遠藤辰雄さんも笑わせるというか・・・。
石井:「遠藤辰雄さんなんかも、達者な人で、あそこまで照れずにクサくやってくれるとね、こっちもクサミにのっちゃうてことになりますね。」
<石井輝男監督>
本格的な時代劇ですがR-18に指定されました。本編はDVDでお楽しみください。
文中、敬称略としました。ご容赦ください。





























































