「心臓の弱い方、お一人でご覧になる方は、この恐怖劇場アンバランスはご遠慮ください」のナレーションと、炎の中の黒猫のシルエットで始まる、特撮の円谷プロダクションが製作した1時間ドラマ「恐怖劇場アンバランス」(昭和48年・1話完結・全13話)。
ゴールデンタイムでの放送を想定して、昭和44年8月から製作開始、翌年4月に終了していた。当初、視覚的恐怖(見た目の怖さ)をオリジナル脚本で製作、途中からフジテレビ側の要望もあって、原作ものの心理的恐怖ミステリーへと路線変更されたが、過激な恐怖描写のためかスポンサーが付かずお蔵入り。
3年後の昭和48年の深夜、怪奇臭を取り除くような順で、ストーリーテラーとして青島幸男が登場して放送されたのを、当時リアルタイムで観ました。
製作順 ( )内は放送順 監督
1.墓場から呪いの手(第12話) 満田穧
2.吸血鬼の絶叫(第11話) 鈴木英夫
3.死体置場の殺人者(第9話) 長谷部安春
4.蜘蛛の女(第13話) 井田探
5.死骸を呼ぶ女(第5話) 神代辰巳
6.仮面の墓場(第4話) 山際永三
7.死を予告する女(第2話) 藤田敏八
8.猫は知っていた(第8話) 満田穧
10.木乃伊の恋(第1話) 鈴木清順
11.地方紙を買う女(第6話) 森川時久
12.夜が明けたら(第7話) 黒木和雄
13. サラリーマンの勲章(第10話)満田穧
監修は円谷プロダクション初代社長で、特撮の神様“円谷英二”。懐かしい作品をDVDで観られる、いい時代になりました。
現在DVDで視聴可能な「恐怖劇場アンバランス」。当時の放送順に、全13話を楽しみましょう。
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第1話 (製作順NO.10)
脚本・田中陽造 監督・鈴木清順
話は「春雨物語」を口語訳する現代から、江戸時代へ戻る。学問に打ち込む正次(川津祐介)は、自分だけに聴こえる鐘の音の根源を辿り、地面を掘り起こすと、干乾びたミイラが埋もれていた。
<川津祐介>
大昔に入定(生きながら堂にこもって食を断ち即身仏となること)し、ミイラとなった高僧が性への執着で甦り、知的障害者の未亡人と交わって、金色の「お仏様」を産み落とす。
光学撮影(特撮)は中野稔、宮西武史。
48年前、初めて観た時よりも新鮮で摩訶不思議な清順(監督)の世界。
<数百年前に入定した僧のミイラ役(大和屋竺)>
話は現代に戻り、病床の師(浜村純)から「春雨物語」の口語訳を引き受けた笙子(渡辺美佐子)は、戦時中に亡くなった夫と雨の中で再会する。
<渡辺美佐子>
原作は円地文子の「二世の縁拾遺」。
鈴木清順監督、映画「殺しの烙印」(昭和42年)を撮って、当時の日活社長から「わからない映画を作るな」と干されて映画撮影が出来なかった頃の作品。清順作品の熱狂的なファンも多く「木乃伊の恋」は劇場でも上映された。
<鈴木清順監督「殺しの烙印」ポスター>
川津祐介さんは生真面目な方で、車の助手席に乗っても、法制化される前から「森さん、ちゃんとシートベルトして下さい」って言っていて、付き合いが深くなると味があり、面白い人です。川津さんの清順作品は「けんかえれじい」に次いで2度目。
渡辺美佐子さんは礼儀正しいと言うか、僕みたいな若いキャメラマンのところにわざわざみえて「渡辺美佐子でございます。宜しくお願い致します」って挨拶された女優さんは初めてです。
「木乃伊の恋」今のテレビではなかなか放送できないでしょうね。甦ったミイラが女の股ぐらから顔を出しますから(笑)。
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第2話 (製作順NO.7)
売れっ子の作家の酒巻(蜷川幸雄)が帰宅して振り返ると、「あなたは明日の夜、12時13分に、お亡くなりになります・・・」と、死を予告する女(楠侑子)が立っていた。何処に行っても付き纏う謎の女。刻一刻と迫るリアルな恐怖。
脚本は「3年B組金八先生」やNHK大河ドラマで有名な小山内美江子のオリジナルストーリー。円谷プロの「ウルトラQ(あけてくれ!)」(昭和42年)、「帰ってきたウルトラマン」(昭和47年)などの特撮ものも何本か書いている。
酒巻(蜷川幸雄):「誰だ 君は」
謎の女(楠侑子):「あなたは明日の夜、12時13分に、お亡くなりになります」
後年、演出家として活躍する若き日の蜷川幸雄が主演。
楠侑子は「牙狼之介 地獄斬り」(昭和43年)、「吸血鬼ゴケミドロ」(昭和43年)などの
出演作が思い出深い。
藤田敏八監督は、日活一般映画最後の名作「八月の濡れた砂」(昭和46年)を撮って、そ
の後の日活ロマンポルノにも貢献した。
当時、石川セリのレコード「八月の濡れた砂」買いました。レコードの解説書に、石川セリ、本名:石川セイディ(Seidy)19歳と書いてあります。
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第3話 (製作順NO.9)
(出)岡田英次、春川ますみ、石橋蓮司、田中春男
自分が不治の病、癌であることを知った岡田(岡田英次)のもとに、見知らぬ男(田中春男)が現れる、彼は岡田に死への恐怖から逃れるため、互いの命を狙い合う殺しのゲームを持ちかけるという心理サスペンス。
<岡田英次・田中春男>
西村京太郎の原作を、「ウルトラマン」(昭和41年)などの円谷プロ常連ライター若槻文三がシナリオ化。
監督の長谷部安春は鈴木清順監督の一番弟子と言われる人で、日活で「野良猫ロック」シリーズなどのハードボイルド・アクション作品を多数手掛け“日活ニューアクション”路線を支えた。その後の日活ロマンポルノ作品にも貢献している。
加山麗子・主演の「エロチックな関係」(昭和53年)は出色で、松竹でリメイクされた。
テレビシリーズ「あぶない刑事」は長谷部が一番多く監督しており、代表作といえる。
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第4話 (製作順NO.6)
潰れた映画館で稽古中の前衛劇団「からしだね」の演出家・犬尾(唐十郎)の過激な演出で、悪霊役の白浜(三谷昇)が落下死してしまう。犬尾は団員の山口(橋爪功)やヨーコ(緑魔子)を巻き込んで、ボイラーでその死体を燃やしてしまう。火をつけたその瞬間、死んだはずの白浜の叫び声が響いた。
<唐十郎、橋爪功、緑魔子>
犬尾は「芝居を邪魔する気か」とわめき、ボイラーの扉を開けて骸骨を奥に押し込む。
唐十郎、緑魔子、橋爪功という実力派の個性が光っている作品です。子役として、高野浩幸、鶴ひろみ(現・声優)も出演。骸骨は「木乃伊の恋」で使ったミイラだそうで、合成とは違うアナログ感が出ています。
「仮面の墓場」は、テレビドラマ「コメットさん」を作った市川森一(脚本)と山際永三(監督)のコンビ作品。監督の山際永三は、新東宝倒産後、大宝映画が配給した「狂熱の果て」(昭和36年)で監督デビュー。昭和39年以降は、国際放映の専属として「チャコちゃん」(昭和41年)、「コメットさん」(昭和42年)、円谷プロで「帰ってきたウルトラマン」(昭和46年)などのウルトラシリーズを監督しています。
<大宝映画「狂熱の果て」のアメブロ投稿記事(2020年8月)>
https://ameblo.jp/sinekon/entry-12619177318.html?frm=theme
森喜弘(撮影)キャメラマンの話
状況劇場を率いていた唐十郎が最後に舞台で一人芝居をするシーンはアフレコじゃなく、同時録音のぶっつけ本番です。緑魔子は他の人ではちょっと出せないフェロモンというか、雰囲気を持った女優さんですね。橋爪功は今だったらあの役はやらないんじゃないですかね。
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第5話 (製作順NO.5)
恵子(珠めぐみ)には婚約者の坂井(六本木誠人)がいるが、坂井と親友の松岡(和田浩治)からも求婚され悩んでいた。
<松岡(和田浩治)と恵子(珠めぐみ)>
ある日、坂井は工事現場の地滑り事故で行方不明となる。
<坂井(六本木誠人)>
松岡と恵子は現場に駆けつける。恵子はショックで意識を失い診療所へ運ばれるが、医師が死亡を確認する。
医師(穂積隆信):「彼女は確かに死んでたんだよ。」
看護婦(新井茂子):「生き返ったんだわ!」
松岡(和田浩治):「生き返った?」
東映「警視庁物語」でお馴染みの新井茂子(左)は、診療所の可愛い看護婦(死語ですね)さん役。
坂井の遺体が見つかったとの連絡が入ると、恵子の魂は肉体から離脱する。恵子の霊力でゾンビとなって甦った坂井が殺人を繰り返す。さて、結末は? 幽体離脱した男女が殺人を犯す、三角関係の愛と死を描く現代の怪談話。
工事現場の地滑りと、幽体離脱の特撮(光学撮影)は中野稔、得政義行。
和田浩治は、当時人気の石原裕次郎に似ていると、日活がスカウトした。「愚連隊シリーズ」、「小僧シリーズ」などに主演している。
<石原裕次郎似の和田浩治>
珠めぐみは、時代劇が似合う女優でした。デビュー当初、円谷プロの「ウルトラQ」第20話「海底原人ラゴン」に出演している。
監督の神代辰巳は、デビュー作「かぶりつき人生」(昭和43年)が一般作としては興行失敗となり、その後、監督オファーは途絶えるが、日活のロマンポルノ路線とともに監督復帰、「一条さゆり 濡れた欲情」(昭和47年)、「四畳半襖の裏張り」(昭和48年)でキネマ旬報ベストテン入選するなど評価が高い。その後、神代は東宝で「青春の蹉跌」(昭和49年)を監督、キネマ旬報ベストテン4位となった。
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地方紙(甲信新聞)の新聞社に、東京に住む潮田芳子(夏圭子)から「小説が面白いので19日付の新聞から定期購読したい」という手紙が来た。熱心な女性読者がいるものだと、小説家の杉本(井川比佐志)は芳子にお礼の手紙を出すが返事はない。それから1ヵ月後、新聞社に「小説がつまらなくなりました。続いて購読の意思はありません」という手紙が来た。興味を持った杉本は、芳子がホステスだと知り、友人の記者・木沢(山本圭)と店に行く。そこで杉本は、彼女が小説は口実で、地方紙のある記事を読みたかっただけだと気づく。芳子の地方紙購入目的は何か? 杉本は、地方紙に掲載された事件の核心に迫る。
<井川比佐志・夏圭子・山本圭>
原作は何度もドラマ化されている松本清張の「地方紙を買う女」。恐怖劇場と言うより、小山内美江子(脚本)、森川時久(監督)の、清張ミステリー・サスペンスの世界が展開する。
森川時久監督は、1960年代の名作TVドラマ「若者たち」の監督を務め、映画化もされた。フジテレビの五社英雄と並んで、テレビディレクターから映画監督になった人である。
森川時久監督の映画「若者たち」(昭和42年)にも、夏圭子、井川比佐志、もちろん山本圭が出演しています。
<森川時久監督「若者たち」ポスター>
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第7話 (製作順NO.12)
脚本・滝沢真里 監督・黒木和雄
新宿の路上を歩く父(西村晃)と娘(夏珠美)。仕立て屋の父親がハサミを買いに行く。父が目を離した隙に、娘は3人の不良に囲まれてしまう。必死に助けようとする父親。見守るだけの群衆。
<西村晃、夏珠美>
ついに、父親は持っていたハサミで不良を刺し、たまたま居合わせた刑事(花沢徳衛)に逮捕されてしまう。過剰防衛で懲役1年の実刑判決。やがて服役した父親の行動に、あの時の刑事が不審に思う。
原作は山田風太郎「黒幕」。社会の無関心、人間に対する不信感など、現代の恐怖をドキュメンタリータッチで魅せます。
主演は水戸黄門役がお馴染みの名優・西村晃。「怪談せむし男」(昭和40年)、「怪談蛇女」(昭和43年)などのスリラー映画にも多数出演している。
刑事役に東映「警視庁物語」コンビ、花沢徳衛、山本麟一のキャスティング。シニア世代には嬉しい。
<刑事役の山本麟一、花沢徳衛>
この作品のタイトル「夜が明けたら」は、浅川マキの有名な歌で、劇中、歌手として出演しています。是非聴いてください。
<「夜が明けたら」を歌う浅川マキにしんみり>
監督は岩波映画で数々のドキュメンタリーを撮り、ATGで「竜馬暗殺」(1974年)を撮った黒木和雄の初テレビドラマ。脚本の滝沢真里は、「恐怖劇場アンバランス」後、東映の特撮ヒーロー「仮面ライダー」を執筆している。
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第8話 (製作順NO.8)
猫は知っていた
戦前からある箱崎医院に下宿したばかりの悦子(島かおり)と兄の雄太郎(水木蘘)。ある日、病院の入院患者が行方不明になり、院長(原保美)の義母(吉川満子)が、敷地内の防空壕跡で何者かに殺された。
<水木蘘と島かおり>
続いて、看護婦(花柳幻舟)が、“犯人は猫”の言葉を残して防空壕で殺された。
犯人を推理する雄太郎と悦子。
原作は仁木悦子の第3回(昭和32年)江戸川乱歩賞受賞作「猫は知っていた」。水木蘘は「忍者部隊月光」(昭和39年)が懐かしい。島かおりは昼のメロドラマでヒロインを多く演じ、昼メロの女王と呼ばれた。
<島かおり>
「猫は知っていた」は“恐怖”ではなく推理ドラマで、島かおりと水木蘘の兄妹コンビの謎解きが爽やかで素敵。
監督の満田穧は円谷プロ生え抜きで、キャストは「怪奇大作戦」レギュラーの原保美(院長)、「戦え!マイティジャック」レギュラーの渚健二(箱崎医院長男)、江村奈美(看護婦)など、円谷プロゆかりのメンバーが揃った。
<原保美>
「猫は知っていた」は1958年に大映で映画化(監督・島耕二)されている。
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脚本・山浦弘靖 監督・長谷部安春
大学病院の水上助教授(久富惟晴)と、学生で愛人の涼子(西尾三枝子)が、雨の日のドライブ中にひき殺した村田(向精七)の遺体を、大学の死体置場でホルマリン漬けにするが、殺されたはずの村田は何度も生き返り、二人に復讐を開始する怪談物語。
死体を切り刻むシーンがあって、実際に買って来た肉を使って切る場面を撮ったそうですが、倫理上の配慮から最終的にカット。この回、削除された場面が100カットを超えたそうです。
長谷部安春監督作品としては第3話の「殺しのゲーム」より、こちらを先に撮っています。
<右は特別出演の野坂昭如。左は水上の妻役・中原早苗>
久富惟晴の談話「雨のシーンに東宝の特機の方が何人も来て、必死になって雨を降らせていました。振り返ってみると、時間をかけてじっくりと撮っていました。スタッフを含めた熱を感じ取って頂ければと思います。」
西尾三枝子は日活のニューフェースとして、主に青春映画を中心として活躍した。その後、活動の場をテレビドラマへ移行し、東映のTVシリーズ「プレイガール」(昭和45年)のレギュラーなどで活躍した。
ホルマリン漬けの死体、オルゴールの音と共に現れる亡霊、映像で表現する見た目の怖さです。製作順では第3話。ホラー色が色濃い作品で、キャメラ、カット割りが秀逸でした。内容は、お茶の間向きではないので、こういう作品は、今のテレビでは撮れないでしょうね。「恐怖劇場アンバランス」中、最高視聴率だったそうです。
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第10話 (製作順NO.13)
脚本・上原正三 監督・満田穧
(出)梅津栄、富士真奈美、津島恵子
人間誰しも一度は蒸発したいと思うときがあるでしょう。それは潜在意識の中にあっても、なかなか実行に移すことは出来ません。
出世が勲章だった高度成長期。昇進を嫌がっていた課長・犬飼(梅津栄)の日常生活が些細な事から崩れ、思い出のバーのホステス・宇多子(冨士真奈美)と一夜を過ごします。
<宇多子(冨士真奈美)と犬飼(梅津栄)>
宇多子:「遅刻したら誰だって怒るわよ。」
犬飼:「だから・・・」
宇多子:「だから怒られんの嫌で会社休んじゃったの?」
犬飼:「あぁ」
宇多子:「ばっかみたい。それじゃまるで小学生じゃない(笑)」
宇多子に気に入られた犬飼は、彼女と同棲するために、自分を殺し、宇多子の妻になろうと偽装自殺を思い付くが、思わぬ展開が待っています。
犬飼の妻(津島恵子)は、夫がどこかで生きていると信じています。
<津島恵子>
原作は樹下太郎の「消失計画」。サラリーマンにとって昇進とは勲章。企業は、ひとりの男の生死に関係なく動いていきます。
ささいなことから日常生活が崩れる恐怖を演ずる名脇役“梅津栄”唯一の主演作の演技に注目。
富士真奈美は、この翌年にTVドラマ「細うで繁昌記」や「おくさまは18歳」で大ブレイクする女優。
津島恵子は「ひめゆりの塔」(昭和28年)や、「七人の侍」(昭和29年)でヒロインを演じた大女優。
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第11話 (製作順NO.2)
吸血鬼の絶叫
脚本・若槻文三 監督・鈴木英夫
(出)勝呂誉、弓恵子、富田浩太郎、谷口香
製作順では第2話にあたり、ホラーの定番、吸血鬼の話です。地下室に眠る吸血鬼(富田浩太郎)が甦り、暗い地下道を歩いていた若い女性を襲う。首には咬まれたような痕が残されており、血液が体内から抜かれていた。最初の犠牲者の兄・東田(勝呂誉)は、吸血鬼の仕業ではないかと推理する。東田の恩師も、かつて同様な死に方をしていた。東田はクラブに勤めている恩師の娘・玲子(弓恵子)と接触する。
<弓恵子・勝呂誉>
ロウソクの光と十字架を嫌う吸血鬼、ラストは吸血鬼の住み家を見つけた東田が吸血鬼の心臓に杭を・・・
<富田浩太郎(左)>
「怪奇大作戦」の勝呂誉が主演。吸血鬼役はウルトラマンシリーズにも出演している富田浩太郎が怪演。
スリラーとサスペンスの名手、鈴木英夫が監督した。
森喜弘(撮影)キャメラマンの話
怖い方の話です。富田浩太郎さんがよくやったと思って、富田さんと言えば、どっちかって言うとインテリ派ですからね。
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脚本・若槻文三 監督・満田穧
桑田(山本耕一)は、社内の不祥事を隠すため、利用した女・久美(牧紀子)を殺して死体を浴室で切断した。
<山本耕一・牧紀子>
廃棄したはずの死体だが、その日以来、謎の白い手が桑田を襲う。姉の失踪に不審を抱いた妹(松本留美)は、姉の交際相手、桑田に近づくが・・・。
<刑事役の入川保則、松本留美、山本耕一>
真夜中にすすり泣く女の声、バラバラに捨てられた自分の死体を集める白い手。「恐怖劇場アンバランス」第1回製作のホラー作品「墓場から呪いの手」が登場。タイトルを聞いただけでも怖そうな・・・。
<ドッキリ・シーン>
監督の満田穧は、「恐怖劇場アンバランス」は、人間が仕掛けた事ではなく、どうしてそういう現象が起こったか判らない、と言うような事を狙って製作したと語っている。
山本耕一は円谷プロの「マイティジャック」(第4話)にも出演している。川崎敬三とのTV情報番組「アフタヌーンショー」のレーポーターも務め、「そうなんですよ、川崎さん」の名文句が有名。
松本留美は「愛の終着駅」(昭和53年)など、テレビドラマのヒロイン役を多数演じた女優。父親はTV映画「少年ジェット」でブラックデビルを演じた高田宗彦で、父親がレギュラーで出演していた「新少年ジェット」(昭和36年)が初出演。
<松本留美>
特撮スタッフ
特殊技術:佐川和夫
光学撮影:中野稔、徳政義行
手の作り物は、指の握り開きはモーターでやって、動きはピアノ線で吊って人間がやっていたそうです。怖かった。
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第13話 (製作順NO.4)
プロの写真家を目指す辰也(佐々木功)は、蜘蛛を飼う女・連子(八代万智子)のヒモで、ミチ(真里アンヌ)という恋人もいる。
<真里アンヌ(右)>
真里アンヌは父親がインド人で母親が日本人。エキゾチックな美貌でTVや映画、雑誌のグラビアなどに多数出演。
辰也は、連子から騙し取った個展開催の資金を、ヤクザまがいの男・山西(今井健二)に強奪される。
<今井健二(右)>
連子と山西が仲間と知った辰也は、逆上して連子を絞め殺し、死体にガソリンをかけて燃やしてしまう。
辰也に付き纏う、連子の妹と称する謎の女・松美(集三枝子)は何者?
<集三枝子(右)>
辰也は連子から奪った金で個展を開くが、奇怪なアクシデントが・・・。
飼われていた蜘蛛が、飼い主の仇を討つ。ラスト、蜘蛛の大襲来に驚愕。
蜘蛛に姿を借りた女の執念が恐怖を誘う異色作。
特撮スタッフ
特殊技術:佐川和夫
光学撮影:中野稔、川北紘一
蜘蛛って、ライトを当てると疲れて元気がなくなるそうです。美術さんなんかがバケツに蜘蛛を沢山捕ってきたので、俳優さんは大変だったようです。
真理アンヌの談話
「蜘蛛が顔の上を歩いているのに、じっとしていなきゃいけないの。私は1匹だったんですけど、佐々木功さんなんか、顔中いっぱい。テストを含め、何回もやりましたから、あれでだいぶ鍛えられました。」
森喜弘(撮影)キャメラマンの話
「八代万智子さんは東映の美女、佐々木功さんがまたいいよね。東映アクションの今井健二さん、車から飛び降りる所もスタントじゃなく本人でね。女優さんの顔に蜘蛛なんて、アップの蜘蛛は本物ですからね。当時の女優さんはわがまま言いませんでした。プロ根性ですよ。今ならゴネるでしょうね。」
監督は井田探。日活プログラムピクチャーを撮っていた井田監督は、髙橋英樹の「男の紋章」シリーズ(昭和39年)、小林旭のスパイアクション「爆破3秒前」(昭和42年)、などを思い出す。
<井田探監督「爆破3秒前」ポスター>
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以上、久々に「恐怖劇場アンバランス」全13話を鑑賞しました。現在では企画出来ないような作品群、出演者も異色、富田勲の素晴らしい音楽、監督も鈴木清順、藤田敏八、神代辰巳、黒木和雄、森川時久など、映画界を牽引した人財が熱心に撮っています。
「恐怖劇場アンバランス」の世界へのお誘いでした。
スタッフ、キャストの逸話は、「恐怖劇場アンバランス」DVD解説書を参考にしました。
文中、敬称略としました。ご容赦ください。