「東映チャンネル」(CS218)で、懐かしい東映映画「警視庁物語」シリーズが放映されました。
<東映チャンネル サイト>
警視庁物語。当時、映画館でリアルタイムに観ましたが、60年以上前なので、内容は殆ど覚えていません。
今観返すと、今どきの派手な刑事ドラマに比べ、昭和の映画全盛期、職人監督の手腕、リアリティーある脚本、刑事の心情も垣間見えて楽しめる作品です。
また、警視庁物語はロケーション撮影が多く、都内を縦横に走る路面電車(都電)の走行、昭和時代の街並みなどの風景が懐かしい。
脚本は、警視庁鑑識課に勤務していたした長谷川公之で、警視庁物語シリーズ全24話を執筆、TBSテレビ「七人の刑事」など、数々の映画、テレビドラマの脚本を書いたシナリオライター。当時の警視庁捜査1課の雰囲気が良く伝わってきます。
撮影は星島一郎、福島宏、佐藤三郎、高梨昇、三村明、仲沢半次郎、林七郎、山沢義一のキャメラマンが交代で、プロのモノクロームの世界を投影しています。
殆どの作品が1時間程度のプログラムピクチャー(2本立て興行の添え物映画)ですが、シリーズ前半の数本は小沢茂弘、関川秀雄のベテラン監督が演出、その後、若手監督が助監督から監督に昇進し、切れのある編集技術も手伝って、エネルギッシュな演出を魅せます。またゲスト出演者も名優揃いです。
警視庁物語は、前年製作された刑事もの「終電車の死美人」(昭和30年・小林恒夫監督)の成功で、「警視庁物語」としてシリーズ化されたと云われています。
シニア世代には懐かしい映画「警視庁物語」シリーズ全24話。
荒波が岩に砕かれて東映マークが出たら、昭和の世界に引き込まれます。
モノクロ・スタンダード。第6話から「東映スコープ」で撮影されました。
ストーリーは、実際に映画を観て楽しんで下さい。
当時のポスター、出演者や監督などを中心に、遠い昔を思い出しながら、投稿します。
第1話「警視庁物語 逃亡五分前」
第2話「警視庁物語 魔の最終列車」
第3話「警視庁物語 追跡七十三時間」
第4話「警視庁物語 白昼魔」
第5話「警視庁物語 上野発五時三五分」
第6話「警視庁物語 夜の野獣」
第7話「警視庁物語 七人の追跡者」
第8話「警視庁物語 魔の伝言板」
第9話「警視庁物語 顔のない女」
第10話「警視庁物語 一〇八号車」
第11話「警視庁物語 遺留品なし」
第12話「警視庁物語 深夜便130列車」
第13話「警視庁物語 血液型の秘密」
第14話「警視庁物語 聞き込み 」
第15話「警視庁物語 不在証明(ありばい)」
第16話「警視庁物語 十五才の女」
第17話「警視庁物語 12人の刑事」
第18話「警視庁物語 謎の赤電話」
第19話「警視庁物語 19号埋立地」
第20話「警視庁物語 ウラ付け捜査」
第21話「警視庁物語 全国縦断捜査」
第22話「警視庁物語 十代の足どり」
第23話「警視庁物語 自供」
第24話「警視庁物語 行方不明」
******************************
助監督は、後に第15話「警視庁物語 不在証明」を監督する島津昇一。
<ポスターは刑事役の南原伸仁と堀雄二>
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南原伸二
ゲスト:伊藤久哉、富田仲次郎、星美智子、小宮光江、
警視庁物語の第1話。
タクシー強盗殺人事件が発生し、捜査1課・捜査主任(神田隆)采配で、捜査が始まります。
モンタージュ写真を作成する場面が出てきます。
ラストは東京・木場での犯人グループと刑事たちの銃撃戦で、映画的なビジュアル効果を取り入れたのでしょう。
若手刑事を演ずる南原伸仁は、第4話「警視庁物語 白昼魔」まで、連続4回出演しています。
南原が怪人十面相に扮する「少年探偵団 妖怪博士」(昭和31年・小林恒夫監督)は江戸川乱歩(原作)の世界が楽しく傑作でした。後年、南原宏冶に改名しています。
昭和ヒーローおもちゃ箱【少年探偵団】
https://ameblo.jp/sinekon/entry-12659531782.html?frm=theme
「終電車の死美人」に出演した星美智子は、警視庁物語にも7回、ゲスト出演しています。
監督の小沢茂弘は、日本映画の最盛期に、鶴田浩二の「博打打ちシリーズ」、若山富三郎の「賞金稼ぎシリーズ」など、多くのヒット作品を監督し、警視庁物語は3話(1、2、6話)監督しています。
東映を離れてからは、京都の高嶋易断で修行を経て、易者になったと聞きました。
捜査1課刑事たちの地道な活躍と、リアリティーあるストーリーが評判を呼び、東映東京撮影所の看板シリーズとなりました。
*************************************
第2話「警視庁物語 魔の最終列車」
監督:小沢茂弘 昭和31年 60分
助監督は島津昇一。
ポスターは刑事役の堀雄二と南原伸仁。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南原伸二
ゲスト:山形勲、萩原満、浦里はるみ、三笠博子
第1話と主要スタッフが一緒なので、2本同時撮りでしょう。
貨物列車の郵便車が列車強盗に襲われ、乗務員二名即死、一名重傷という事件が起こります。
映画の中に鉄道は、よく使われる素材で、当時の品川駅ホームの風景が懐かしい。
銃器技師(片山滉)が刑事(南原伸二)に、顕微鏡を視ながら、凶器の弾丸のライフルマークの説明をする場面があります。
ラストは神宮外苑で犯人グループと警官隊の銃撃戦があり、逮捕されます。
********************************
第3話「警視庁物語 追跡七十三時間」
監督:関川秀雄 昭和31年 54分
ポスターは刑事役の南原伸仁、堀雄二と星美智子。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南原伸二
ゲスト:加藤嘉、今井俊二、花沢徳衛、星美智子
深夜のガソリン・スタンドで強盗殺人事件発生。
上野駅前から西郷隆盛像のロケーションが懐かしい。
1、2話で刑事役だった花沢徳衛、今回は“もぐりの医者”役で、なぜか同じ関川監督の次回作「警視庁物語 白昼魔」のみ、出演していませんでした。
旅館の女中役・谷本小夜子は、この「警視庁物語 追跡七十三時間」で映画デビューし、警視庁物語に12回出演しています。
数秒映る脇役ながら、いつも熱の入った演技が楽しく、作品に欠かせない女優さんです。以降、食堂の女子店員(7話)、パン工場の工員(12話)、タバコ屋の女性(15話)、気のふれた女(19話)、川にゴミを捨てる女(23話)などで、ちょこっと登場。
<谷本小夜子>
監督の関川秀雄は、学徒兵を描いた反戦映画「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」(昭和25年)、国鉄職員の一家を描いた「大いなる旅路」(昭和35年)から、娯楽映画「少年探偵団 かぶと虫の妖奇」(昭和32年)、教育映画「福沢諭吉の少年時代」(昭和33年)などを幅広く監督した社会派の名匠。
**********************************
監督:関川秀雄 昭和32年 51分
ポスターは刑事役の堀雄二、南原伸仁と逃げる木村功、月丘千秋。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南原伸二
ゲスト:木村功、月丘千秋、小宮光江、潮健児
夜の大都会で自動車窃盗殺人事件が起こり、発見した持ち主の外国紳士が射殺される。
ラスト、犯人役の木村功と、刑事たちの追撃が、富士山の見える鎌倉海岸で展開します。
ゲストの木村功は、「生きる」(昭和27年)、「七人の侍」(昭和29年)、「天国と地獄」(昭和38年)など黒澤明中期作品の常連。警視庁物語は「白昼魔」と「遺留品なし」の2作に出演しています。
**********************************
第5話「警視庁物語 上野発五時三五分」
監督:村山新治 昭和32年 59分
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、波島進
ゲスト:多々良純、三笠博子、浦里はるみ
オート・レース場で大穴が出た瞬間、サラリーマン風の男が倒れ、警視庁捜査第1課刑事の活動が始まる。
ポスターは、ラストシーンで、刑事の波島進が犯人の多々良純を捕らえる場面。
村山新治の第1回監督作品。
若手刑事を演ずる波島進は「少年探偵団 透明怪人」(昭和33年)の明智小五郎役、「七色仮面」(昭和34年)の蘭光太郎探偵役が懐かしい。東映京都で時代劇にも出演していました。昭和36年からスタートした長寿TV映画「特別機動捜査隊」の立石主任刑事役を演じました。「通報を受けた特捜隊立石班は直ちに現場へ急行した」のナレーションが懐かしい。
村山新治監督については別途投稿(2021.3.18)のアメブロ
『「村山新治、上野発五時三十五分」が出版されています』を参照ください。
<過去に投稿したアメブロ(参考まで)>
https://ameblo.jp/sinekon/entry-12663119383.html?frm=theme
*********************************
監督:小沢茂弘 昭和32年 83分
ポスターは波島進(左)と小宮光江(中央)。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、波島進
ゲスト:加藤嘉、小宮光江、大村文武、東野英治郎
警視庁物語シリ―ズ初の長編(83分)で、東映スコープで撮影されました。
タイトルバックの地下鉄走行シーンから、画面に引き込まれます。
電車内スリを捕まえようと追うサラリーマン風の男が、惨殺される。
死体を発見した警視庁捜査陣は、現場附近の聞込み、現場の検証に乗り出す。
警視庁物語には、都内を縦横に走っていた路面電車が見られます。
今は唯一、都電荒川線(三ノ輪橋~早稲田 12.2kmkm・30停留場)の1系統のみの運行となりました。
ラストは国鉄貨物操作場で、犯人と刑事グループが、追いつ追われつの逮捕劇。
貨物操作場の蒸気機関車の走行が懐かしい。
警視庁物語シリ―ズは、後年、波島進とTV映画「特別機動捜査隊」で共演する南川直、岩上瑛等が常連で出演しているのもファンとして楽しい。
「警視庁物語 夜の野獣」出演者(波島進 掘雄二 神田隆 花澤徳衛 山本麟一 小宮光江)による撮影の苦心話や裏話を聞いた座談会記事です。2023.3.13 binodendoのブログ の記事から転記させていただきました。
一特に印象に残ったものというと、どんなものがありますか?
花澤「僕は「終電車」と「上野発」だね。」
一特に何か苦心したとかいう話がおありですか?
花澤「あの「終電車」を撮るときにちょうど僕が土地を買おうと思って詐欺に引っ掛かちゃったんですよ。それで所轄の刑事と接触する機会があったんでね。色々、観察したんですけど、人と話す物腰なんか普通の人と全然変わりませんね。
電話で話していると、まるで商人が話しているみたいですよ。
その事がずいぶん貴重な経験になりました。
僕はネ……いつも劇中の刑事と自分との共通点を見い出して、演ってるつもりなんですよ。
決して特殊なものではなく、ごく当たり前の、まぁ、云ってみれば自分なりの刑事とでも云いますか……」
一波島さんは、このシリーズにいつから出るようになったんですか?
波島「この前の「上野発五時三十五分」がはじめてなんです。だからこんどで2本目と云うことになりますね」
一他の作品とくらべてどうです、演りやすいですか?
波島「この作品はドキュメンタルなものでしょう。だから嘘があっちゃいけないわけで、神経も身体も、普通の作品より、ずっと疲れてしまいますよ」
山本「そうだね。何しろこの広い東京中を連日連夜歩きまわっているわけなんだから…」
一こういう映画は、ロケーションが多いでしょうが、いろいろと難しい事が多いでしょうね?
堀「えぇ。撮影のほうも足とねばりが必要だが、ロケも多いし、ナイトシーンも多いんで辛いですよ」
神田「そうだね。セットで出来るようなところも、ロケーションでより一層の迫力を狙うと云った具合に……。」
花澤「ロケで人をよけたり、盗み撮りしたり、何しろ一般の人が、カメラに気付かないようにやらなきゃならないんですから神経使いますね」
山本「この前も池袋ロケで、倉さん(波島さんの愛称)と2人で聞き込みのシーンを撮影した時、あまり人が多いのでそれをよけながら歩いているうちに、本番の合図があったのを、うっかり見逃してNGを出してしまいましたよ……。」
一このシリーズもいよいよ東映スコープとして大型画面に初登場するわけなんですが、スタンダードとどんな点が違いますか?
今迄と違って演技なんかも相当動きを強く要求されると思いますけど、その点いかがですか?
花澤「芝居が多少やりよくなるという点でしようね。今の監督さんの場合は、そう変わりませんが、あの大きなフレームですから、伸び伸びした演技ができますよ」
波島「それは確かにそういうことが云えますね」
花澤「素材が大都会の出来事でしょう。ビルディングとか、電車通り、また雑踏のシーンなんか、画面一杯に繰り広がって迫力が倍加しますね」
神田「そりゃそうだ。やはりこういうセミ・ドキュメンタルな作品の場合は大型映画がいいね。
ラッシュなんか見ても、スタンダードでは出せない迫力があるもの」
一警視庁の協力なんかは積極的なんですか?
例えばパトロールカーや何か……。
堀「大変協力してくれますね。パトロールカーとか、警視庁の刑事部屋等も貸してくれますしね。この間、佐原広二君が、池袋の刑事部溜まり場を見て来たとか云ってましたよ」
山本「いつもやっていると、刑事さんの中にも自分のタイプに合ったそれぞれのファンと云うものができるらしいですね。
僕は堀雄二さんのファンだとか、花澤さんのファンだとかね」
一皆さんいつも一緒だと気が合ってやりやすいでしょう?
堀「そりゃもう何て云うのか、お互いに何も云わなくても呼吸が合ってますから、気持ちよく仕事ができますよ」
花澤「そういうのを我々は「類似の情緒」と呼んでいるんですよ。自然に出ますね」
山本「仕事はきついですけど、楽しいですよ」
一神田さんはいつも主任警部の役ですね?
神田「「終電車の死美人」の時は出なかったんですが、「逃亡五分前」から、ずっとそうです。役としては楽しい役で僕は好きですよ」
一撮影中、いろいろ面白い裏話があると思うんですけど。
花澤「僕は小田急の梅ヶ丘に住んでるんですがね、ついこの間、電車の中で警官に敬礼されちゃったんですよ(笑) さて困りましたね。まあ、何となく、その場を過ごしましたが、どうもその警官は東映ファンらしい人ですよ。東映のファンで私たちの映画を何回も見ているうちに、錯覚を起こして、つい敬礼したんじゃないですかね」
一山本さんはよく髭をはやしていますけど、監督さんの注文なんですか?
山本「ええ。ですけど髭をはやすのは僕はあんまり賛成じゃないんです。やっぱり刑事ってあまり特徴のない方が良いんでしょう。」
花澤「そりゃ、そうだよ」
山本「今度は髭をおとしてます」
一小宮さんは、このシリーズは何本目ですか?
小宮「3本目です。最初が「逃亡五分前」その次に「白昼魔」」
一どんな役だったんですか?
小宮「今度が犯人の情婦でコールガール。それから「白昼魔」の時も犯人一味の情婦でトルコ風呂のお花ちゃん。最初の時も確かそんな役だったから、3回とも犯人側なんですよ」
一スチールなんかで見ると、今度はお化粧が強い様ですけど、自分でやるんですか?
小宮「今度の役は、犯人の情婦で25、6歳に見えるようにするため、色々苦心したんです。それで今までは髪を前に垂らしていたんですが、今度は思い切って全部後ろへつめちゃいました」
一どう?こういう役は?
小宮「割りと好きです」
一皆さん、今は全然メーキャップしてないようですけど?
神田「「警視庁物語」のときは、いつも全然やらないんですよ。ドーランも塗りませんしね」
*********************************
第7話「警視庁物語 七人の追跡者」
監督:村山新治 昭和33年 57分
助監督は、後に第15話「警視庁物語 不在証明」を監督する島津昇一。
ポスターは刑事役の堀雄二と大村文武。下は小宮光江。
キャスト(刑事):堀雄二、 神田隆、大村文武
ゲスト:小宮光江、高木二朗、加藤嘉、春丘典子
女性の死体が、マンホールから発見された。被害者は子持ちの未亡人で、給料を銀行から受取りに行ったまま、行方不明になっていた。
ラストシーン、渋谷駅前を背景にした犯人逮捕の撮影(ポスターの写真)の見事なカット割り、村山新治監督の演出手腕、さすがです。
若手刑事を演ずる大村文武は、東映映画版「月光仮面シリーズ」(昭和33~34年)の祝十郎探偵を演じました。
<過去に投稿したアメブロ(参考まで)>
お宝発掘DVD「月光仮面」(東映版)
https://ameblo.jp/sinekon/entry-12566607248.html?frm=theme
貴金属店主人役として加藤嘉が登場。聞き込みに来た刑事と対応する数分間の小さな役ですが、会話と動きが実に秀逸でした。さすが名優です。
*************************************
第8話「警視庁物語 魔の伝言板」
監督:村山新治 昭和33年 61分
助監督は島津昇一。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、大村文武
ゲスト:三井弘次、織本順吉、外野村晋、田中春男、
連日発生した運転手殺し。偶然パトカーとの衝突をさけようとして立木にぶつかったタクシーのトランクから運転手の死体が発見されます。
上野駅の伝言板で連絡を取り合う犯人を追う刑事。ゲストに松竹の三井弘次が出演。
**********************************
監督:村山新治 昭和34年 74分
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南広
ゲスト:佐久間良子、星美智子、今井俊二、小宮光江、潮健児
荒川土手に女性のバラバラ死体が上る。死体は胴の部分だけ。そのうち対岸に両足が発見されます。
解剖の結果、同一人物の胴と足で、被害者は三十歳前後の女・・・
村山新治監督の警視庁物語長編(74分)作品です。
刑事役の南廣は、ジャズドラマーを経て、昭和33年に東映「非常線」のバンド・マスター役で俳優デビュー、主に東映の現代劇映画で活躍しました。円谷プロの特撮テレビ映画「マイティジャック」(昭和43年)にもレギュラー出演しています。
犯人役の潮健児(ポスターの逮捕されている男)は、東映の個性的な名脇役で、今井正監督とは「ひめゆりの塔」からの付き合いだそうです。
高倉健の「昭和残侠伝シリーズ」(昭和40年)、若山富三郎の「極道シリーズ」(昭和43年)などで活躍しました。TVでは「七色仮面」(昭和34年)の“さそりの万吉”役が懐かしい。「悪魔くん」(昭和41年)のメフィスト弟、「仮面ライダー」(昭和47年)の地獄大使を演じている。警視庁物語には第1話から10回出演。
著書「星を喰らった男」は、面白いエピソードいっぱいの東映映画史です。20年以上前の本ですから、絶版でしょうか?
「警視庁物語 顔のない女」は自分の代表作と書いています。
<潮健児>
**************************
監督:村山新治、若林栄二郎 昭和34年 54分
ポスターは刑事役の堀雄二と南廣。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南廣
ゲスト:曽根晴美、東野英治郎、浜田寅彦、清村耕次
パトカー108号車で警戒中の巡査が殺され、捜査第一課は目撃された犯人の車のナンバーから、容疑者を探します。
今では、車番が判れば、車の持ち主はデータ検索で特定されるのでしょうが、当時は、膨大な紙の資料から時間をかけて探しました。
ラストは高層駐車場での犯人逮捕劇。
「警視庁物語 一〇八号車」村山新治と若林栄二郎(のちに若林幹)の共同監督作品。
若林監督は大学在学中、ヒッチコック作品に共鳴して映画監督を志したそうで、「月光仮面 魔人の爪」(昭和33年)、「少年探偵団 敵は原子潜航挺」(昭和34年)、「遊星王子」(昭和34年)などの少年向け作品を監督していたので、名前は知っていました。「遊星王子 恐怖の宇宙船」(昭和34年)の後に監督したこの「警視庁物語 一〇八号車」で注目された監督です。テレビ映画でも「スパイキャッチャーJ3」「ザ・ガードマン」「キイハンター」などの話題作を監督しています。
***********************************
第11話「警視庁物語 遺留品なし」
監督:村山新治 昭和34年 66分
ポスターは右から刑事役の神田隆、南廣、山本麟一。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南廣
ゲスト:木村功、八代万智子、星美智子、殿山泰司
アパートの一室で坂井久子(杉丘のり子)という電話交換嬢が殺害された。
遺留品はなかった。兇悪な殺人結婚詐欺事件に、捜査が始まる。
ラストは、自宅のアパートから逃げる犯人(長谷部健)を追跡、逮捕する。
第4話の「白昼魔」に続き、木村功がゲスト出演。
********************************
ポスターは刑事役の堀雄二と中山昭二。下は小宮光江、大村文武、今井俊二。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、中山昭二
ゲスト:加藤嘉、山茶花究、今井俊二、小嶋一郎、小宮光江
東京汐留駅のジュラルミン製トランクに半裸体の女の死体が詰められていた。
トランクの発送先が大阪天王寺駅であったことから、東京―大阪間で捜査か開始される。
ラスト、東京行き深夜便130列車に乗車した犯人を、刑事グループが東京駅のホームで追い詰める。
刑事役で登場する中山昭二は、新東宝映画を代表する俳優で、東映に移籍している。TVシリーズ「特別機動捜査隊」(昭和36年)の藤島班主任、「ウルトラセブン」(昭和42年)のキリヤマ隊長役などが懐かしい。
長田部長刑事(堀雄二)の息子役で、住田知仁(現・風間杜夫)が子役で出演しています。
飯塚増一監督はイタリア映画のネオリアリズムに影響を受けて、映画への道を志したそうです。高倉健主演の「黒い指の男」(昭和34年)が初監督作品。代表作と云える警視庁物語を4本監督、「警視庁物語 深夜便130列車」はドキュメンタリータッチが冴えて秀逸でした。
**********************************
監督:飯塚増一 昭和35年 56分
ポスター中央は刑事役の中山昭二。左は成瀬昌彦、小林裕子、花沢徳衛。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、中山昭二
ゲスト:星美智子、今井俊二、小林裕子、山東昭子
野犬狩りの職員が、嬰児の死体を発見します。血液型はO型。捜査陣は、嬰児のおむつに使われていた酒屋の手拭を手がかりに、酒屋、産院などの聞き込みを開始。
民謡酒場聞き込みの場面で、舞台で歌う、当時人気の“こまどり姉妹”が登場。
容疑者の血液型を判定する、警視庁物語レギュラー出演の鑑識職員役・片山滉(第1話から15回出演)は、ヒーローものTV映画「ナショナルキッド」(昭和35年)の不気味な悪役が印象深い。潮健児の著書によると、片山は女子高校の先生もやっていた知識人で本当のインテリ役者だったそうです。昭和53年に自動車事故で、惜しくも急逝されました。
また、ナショナルキッド役の小嶋一郎も、警視庁物語に4回出演、うち1回は犯人役を演じています。「警視庁物語 血液型の秘密」では、新聞記者のカメラマン役でした。
<片山滉・小嶋一郎(ナショナルキッドより)>
****************************
第14話「警視庁物語 聞き込み 」
監督:飯塚増一 昭和35年 52分
ポスターは堀雄二と今井俊二。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、中山昭二
ゲスト:今井俊二、八代万智子、大村文武、山村聰
犯人が判ってしまうようなポスターですね。
身元不明の溺死体が、計画的な殺人事件へと発展する。土地ブームに絡んだ犯罪に刑事たちの聞き込み捜査が開始される。
ラスト、長田部長刑事(堀雄二)が、桜田商事社長に変装して、犯人を捕らえる妙案が面白い。
当時人気の“こまどり姉妹”が登場する民謡酒場と、民謡酒場の女中役・山東昭子が、前作「警視庁物語 血液型の秘密」と同じなので、2本同時撮りでしょう。ストーリーは面白かった。
**********************************
第15話「警視庁物語 不在証明(ありばい)」
監督:島津昇一 昭和36年 62分
ポスター上から堀雄二、大村文武、千葉真一、小宮光江、小林裕子。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、千葉真一
ゲスト:波島進、大村文武、小沢栄太郎、小宮光江
ある役所で巡回中の守衛が殺され、当夜残業していた岡本係長(小沢栄太郎)、部下の秋田(大村文武)、根岸(波島進)の3人に容疑が掛かります。
岡本係長は「金庫の中に重要な物は入っておらず、盗られたものも無い」と証言しますが、捜査1課の刑事たちは、第一発見者の事務員(小林裕子)と係長の証言が微妙に食い違うことから、アリバイを中心に捜査を始めます。
刑事の一人として、千葉真一が映画初出演。
刑事役の千葉真一は、昭和34年、日本体育大学を跳馬練習中の怪我で中退し、東映へ入社。昭和35年のTV映画「新 七色仮面」で、二代目・蘭光太郎として主演デビューし、続けて「アラーの使者」にも主演。
この「警視庁物語 不在証明」に出演後、深作欣二の初監督映画「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」(昭和36年)に主演しています。
本記事執筆中に、千葉真一さんが19日午後5時26分、新型コロナウイルスによる肺炎のため千葉県内の病院で逝去したとの訃報が入りました。日本を代表する国際的なアクション俳優でした。急逝が惜しまれます。82歳でした。
ファンだった小宮光江さん。警視庁物語には6回出演しています。
「腕まくり七色娘」(昭和36年)などで主演も演じていますが、昭和37年1月、惜しくも急逝しました。享年27歳。
<小宮光江>
島津昇一監督は名監督“島津保次郎”のご子息。
TV映画の監督作品で、波島進主演の「七色仮面」(昭和34年)や、「忍者ハットリくん」(昭和41年)が楽しかった。初監督作品は大村文武主演の「月光仮面 幽霊党の逆襲」。警視庁物語は助監督を経て4本監督しています。
*********************************
ポスター中央は新井茂子。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、千葉真一
ゲスト:新井茂子、今井俊二、殿山泰司
多摩川の水門に少女の死体が浮び上った。手配写真から林美代子(新井茂子)という十五歳の少女で、売春婦であった。
社会福祉の名の裏に、恐ろしい悪行が露見される警視庁物語・異色作。
被害者役の新井茂子は千葉真一と同期の東映ニューフェイスで、昭和35年の「殴りつける十代」でデビュー。主に現代劇やTV映画に多数出演している。「警視庁物語 十五才の女」は4本目の出演作品。多摩川の水門い浮かぶ死体役は新井さん本人だそうで、とても寒かったと話しています。当時の女優さんはわがまま言いませんでした。プロ根性ですよ。今ならゴネるでしょうね。夫は特撮TVシリーズ「キャプテンウルトラ」(昭和42年)の俳優の中田博久。
<新井茂子>
*********************************
監督:村山新治 昭和36年 88分
ポスター手前は曽根晴美と佐久間良子。
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、千葉真一
ゲスト:佐久間良子、曽根晴美、宮園純子、殿山泰司
過去の刑事役俳優が多数出演の豪華版。
観光地・松島で起こった殺人事件を追って、宮城、東京、千葉の白浜、名古屋に、捜査1課7人の刑事(堀雄二、神田隆、花沢徳衛、千葉真一、須藤健、山本麟一、佐原広二)と5人の地方刑事(石島房太郎、大村文武、波島進、中山昭二、南廣)合同の12人の刑事たちが活躍する村山新治監督の長編(88分)版。
宮城県警の刑事(大村文武、波島進)が、遊覧船ガイド嬢(愛川かおる)への遊覧ガイドしながらの聴き取りシーンが面白い。
ラストは、犯人が恋人カオル(佐久間良子)と待ち合わせする、新橋駅前の街頭テレビ広場での逮捕劇。
「警視庁物語 12人の刑事」は“火山の噴火口にニュー東映ロゴ”のニュー東映株式会社製作・配給作品。
東映は映画量産を目的に、昭和35年、第二東映株式会社を発足。その後、昭和36年にニュー東映株式会社と改称したが、10か月で製作を中止している。
第二東映発足当初、大川博(東映社長)は「1年間に東映が96本、第二東映が48本撮って、年間100億円の収入」を宣言したという。
結果、量産による人員膨張や赤字が続き、映画産業が斜陽化に向かう時代に計画は大失敗、大川博は退陣している。
**********************************
第18話「警視庁物語 謎の赤電話」
監督:島津昇一 昭和37年 65分
キャスト(刑事):堀雄二、神田隆、南廣
ゲスト:亀石征一郎、岡部正純、伊沢一郎、風見章子、水上竜子
幼児誘拐を扱った「謎の赤電話」(島津昇一・監督)は原版不良で、ずっと放映されませんでした。
当時、映画館でリアルタイムに観ましたが、内容はうる覚えです。今まで最後に登場する誘拐犯役が中野誠也と思っていましたが、記録を見ると違っていました。他の話と混同していたようです。
この度、スキャン技術の向上により、2022年3月2日、遂に東映チャンネル(CS)で放送されました。ハイビジョン画面で、画像も綺麗です。
今回発売のDVDシリーズは、諸般の事情で「顔のない女」と「謎の赤電話」は収録されていません。
白昼の銀座で誘拐された少女・道子が行李詰の死体となって発見されてから間もなく、新たな誘拐事件が起こる。
捜査主任(神田隆):「えっ 新しい誘拐事件!」
6年目となる警視庁物語の刑事キャストグループの安定した演技、誘拐犯を追う刑事グループの執念が良く伝わってくる快作、昭和の東京都内の風景も懐かしい作品です。
記事容量オーバーのため「警視庁物語 謎の赤電話」は2022年3月3日"幻の映画「警視庁物語 謎の赤電話」が放映されました"で別途投稿しました。ご訪問頂ければ幸いです。
********************************
記事本文の容量が超えたため、
第19話「警視庁物語 19号埋立地」以降、最終話までは次の”続・警視庁物語」シリーズ全24話を語る”で投稿しました。