初めて映画化された“楳図かずお”の恐怖の世界。
大映東京撮影所の「蛇娘と白髪魔」(昭和43年)。
TVシリーズ「河童の三平 妖怪大作戦」などの名子役・松井八知栄が可愛い、原作者の“楳図かずお”も特別出演しています。
50年以上も前に映画館で観た作品ですが、スリルとサスペンスがいっぱいの楳図ワールドを堪能。
気持ち悪くなるようなスプラッタ・ホラー映画ではありません。
毒蛇の研究をしている南条家の地下室の不気味なシーンから物語が始まります。
飼育している蛇がいっぱいの地下室で、通いのお手伝いさんが掃除をしていると・・・
「週刊少女フレンド」連載“楳図かずお”の少女向け恐怖漫画を、
東映「警視庁物語」シリーズの脚本を書いた“長谷川公之”がシナリオ化。
多くのテレビ劇伴を手がけた名手、菊池俊輔の音楽が、楳図ワールドに誘います。
キャストは松井八知栄、高橋まゆみ、平泉 征、浜田ゆう子、北原義郎、目黒幸子、三宅邦子。
主人公、小百合の夢や火事の場面などの特殊撮影は「透明人間と蝿男(特技助手)」「大怪獣ガメラ(合成)」「あヽ陸軍 隼戦闘隊(特殊撮影)」「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス(特殊撮影)」などの大映特撮班で活躍した藤井和文。
監督は「大怪獣ガメラ」(昭和40年)をはじめとする、大映ガメラシリーズの湯浅憲明。
孤児院「めぐみ園」で育った小百合(松井八知栄)は、病院で別の赤ん坊と取り替えられていたことが判明し、
資産家・南条家の実の両親の家に引き取られます。
父親役は北原義郎、園長役は往年の名優“三宅邦子”。
園長:「お父様が御迎えに来てくださったのよ」
父親:「いろいろお世話になりました。園長先生にさようならを」
小百合:「ありがとう。園長先生、さようなら」
当時10歳の松井八知栄と、24歳の平泉征が若い!
<小百合(松井八知栄)>
<めぐみ園の職員・林達也(平泉征)>
達也:「元気でね」
小百合:「ありがとう、お兄さん」
父親:「お母さんに会えば判るけど、昔とは少し違うが、気にしちゃいけないよ」
小百合:「はい」
南条家で小百合を待受けていたのは、事故で記憶喪失の母(浜田ゆう子)と婆や・しげ(目黒幸子)でした。
優しく小百合を迎えた父親は、毒蛇の研究にアフリカへ出かけてしまいました。
<父(北原義郎)と母(浜田ゆう子)と婆や・しげ(目黒幸子)>
母:「まあ、タマミなの?」
父:「この子はタマミじゃない、小百合だ」
母:「そうね、小百合だったわね。ごめんなさい」
小百合にとって新しい生活が始まりますが、父親が出張してしまうと、天井からベッドに蛇が落てきたり、怪しい人影が現れたりと、奇怪な事件が続発します。
母は、精神異常で病院に入れたはずの娘・タマミ(高橋まゆみ)を屋根裏に住まわせていたのです。
それを知った小百合はタマミに同情し、同じ部屋で暮らすようになりますが、目を覚ますとタマミの周りは蛇のウロコでいっぱい。
<左・タマミ役の(高橋まゆみ)>
母:「小百合ちゃん、あなたタマミと一緒でもいいの?」
小百合:「勿論。だって私のお姉さんですもの」
母:「ありがとう。よかったわね、これで一緒に暮らせるわ。お父様が御留守の間だけ」
小百合:「・・・」
風呂場でタマミの背中を埋めつくしたウロコを見てしまった小百合。
婆や・しげに言っても、信じて貰えません。
それ以来、タマミは小百合を虐待しはじめます。
小百合:「お姉さんはヘビなのかしら?」
小百合は風呂場をのぞき見られたタマミに、屋根裏へ追いやられます。
小百合と取り違えられ、南条家で育った少女タマミ。
毒蛇に噛まれて以来、自らを蛇と思いこんでいます。
屋根裏の節穴から、下を覗いた小百合。
タマミは、顔の痣を隠すために、顔にラバーを貼っていました。
タマミ:「私の顔、いくらオシャレして見たって・・・」
泣き叫ぶタマミ。
蛇娘タマミ役の“高橋まゆみ”は岡崎友紀の大映TVドラマ「おくさまは18歳」にレギュラー出演していた可愛い女優さん。
凄みのある特殊メイクで作品を支えたプロ根性に拍手。
小百合:「私は意地悪なお姉さんが、とっても可愛そうだと思いました。私はこのまま我慢するわ」
小百合は、その夜、蜘蛛や、謎の白髪魔に襲われます。
夢なのでしょうか・・・?
恐怖のあまり、小百合は南条家の高い屋根裏部屋からロープを使って脱出します。
柱にロープを確り結んで、高い屋根裏部屋から地上に脱出しようとしますが・・・
ロープを切ろうと、白髪魔のナイフが・・・
白髪魔:「ヒヒヒヒ・・・・」
ハラハラ・ドキドキの展開。
タクシーで、めぐみ園へ逃げ帰る小百合。
小百合:「めぐみ園まで行ってください。変な人に追われているんです」
タクシー運転手:「変な人? じゃ早く乗りなさい」
<タクシー運転手役(楳図かずお)>
めぐみ園に逃げ帰り、事の始終を園長と達也に話した。
達也:「どうしてそんな嫌がらせをするんでしょう」
園長:「タマミさんとは本当の姉妹ではないのよ。」
園長:「産院で生まれて、タマミさんと取り違えられてしまったの。」
園長:「今日の事をアフリカのお父様に手紙を書きましょう」
アフリカ出張中の小百合の父親に、事実を手紙で知らせようとするめぐみ園の園長。
その晩、園長が白髪魔に殺されました。
達也:「あっ! 先生。園長先生。しっかりして下さい」
小百合と達也は南条家に乗り込みますが、白髪魔とタマミは遺産相続者の小百合と、達也を捕らえて、家に火をつけます。
蛇娘のタマミは、白髪魔の正体は?
ビルの工事現場で展開するラストシーンに注目!
DVD出ています。ラストは本編でお楽しみください。
B級お宝映画の決定版。
昭和43年製作 82分 モノクロ・ワイド。
当時、映画館で観ました。
【「蛇娘と白髪魔」予告編】
同時上映(当時は2本立て)は大映京都作品の「妖怪大戦争」(黒田義之監督)でした。
小百合役の松井八知栄は芸能界を引退し、昭和57年からプロボウラーとして活躍。
ボウリングスクールではコーチとして指導しています。
松井八知栄プロ(平成23年のyoutube映像)
https://www.youtube.com/watch?v=3soqSnYHyks