“大宝(たいほう)映画株式会社”は、昭和36年(1961年)8月31日で倒産した“新東宝株式会社”から配給部門を分社化して設立した会社ですが、その活動も長くは続かず4ヶ月後の昭和37年1月10日に業務停止となっているので知る人は少ないと思います。

<大宝映画ロゴマーク ⤴>

4ヶ月間で配給した映画は6本。その第1回配給作品「狂熱の果て」が、何と2020年7月にDVDで発売されました。

<「狂熱の果て」DVDジャケット。>

 

「狂熱の果て」新東宝のプロデューサーだった“佐川滉”が設立した佐川プロダクションが製作、おなじく新東宝の助監督であった“山際永三”の初監督作品で、1961年11月1日公開されています。

 

キャストは新東宝末期に活躍した若手女優・星輝美(ファンでした)、歌手から俳優に転向したばかりの藤木孝、松原緑郎、松浦浪路、鳴門洋二、秋本マサミ(原作者)など、旧・新東宝の俳優が多く出演しています。

安保闘争後の空虚な時代を背景に、六本木族に加わる若者たちの情熱とあがきを描いた、ラストシーンが切ない人間ドラマ。

山際永三の初監督作品であり、当時の映画人の熱情を垣間見た思いがしました。

<ラストシーンより ⤴>

DVDの映像特典として劇場用オリジナル予告編に加え、2019年2月のシネマヴェーラでのトークショー映像(登壇者:山際永三監督、藤木孝、星輝美 25分)もあり、当時の懐かしい話が聴ける貴重盤です。興味のある読者は、DVDで是非作品をご覧頂きたい。

<トークショー映像、右から藤木孝、山際監督、星輝美>

<公開当時の広告>

「狂熱の果て」を監督した“山際永三”は1955年に新東宝入社。“石井輝男”監督に師事し、2005年8月に石井輝男が死去した際には、葬儀委員長を務めています。

1961年、大宝が配給した「狂熱の果て」で監督デビュー。新東宝倒産後は「チャコちゃん」「コメットさん」「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」「シルバー仮面」など多くのTV映画を監督しています。

「狂熱の果て」は国立映画アイカーブ(旧・東京国立近代美術館フィルムセンター)に35mmネガフィルムが収蔵されているようです。 

 

大宝映画が4ヶ月間で配給した6作品は下記の通りです。

・「狂熱の果て」1961年11月1日公開(現存)

   監督:山際永三  星輝美、藤木孝、松原緑郎

  

 

・「黒い傷あとのブルース」1961年11月22日公開(現存)

  監督:小野田嘉幹   牧真史、島崎雪子 

  

 

・「飼育」1961年11月22日公開(現存)

監督:大島渚  三國連太郎、小山明子、ヒュー・ハード 

 

・「大吉ぼんのう鏡」1962年1月3日公開(現存不明)

       監督:猪俣勝人  筑波久子、松原緑郎 

 

 

・「波止場で悪魔が笑うとき」1962年1月3日公開(現存)

  監督:中川順夫  牧真史、泉京子、丘野美子 

 

 

・「黒と赤の花びら」1962年1月14日公開(現存)

  監督:柴田吉太郎  天地茂、三原葉子、丹波哲郎 

文中、敬称略としました。ご容赦ください。(おわり)