世上、いじめや幼児や高齢者虐待、DV、セクシャルハラスメントその他多岐にわたる人権
 感覚が麻痺した話題に事欠かない。

  一度しか生きらない命の重みと脈動する限られた時間を互いに慈しむ心情の欠如がもたら
 す出来事は悲惨で胸を痛めるものである。

  古い話だが、皆さんは昭和33年に公開された邦画”怒りの孤島”を知っているだろうか?
 水木洋子氏による脚本に由来し、映画化されたものである。
 
 戦後、瀬戸内海のある島山口県防予諸島の情島で実際に起こった児童虐待を題材としたもの
だ。
^ 私は当時、小学校4年生で文部省推薦映画と言うことで、当時の松任町にあった映画館で同級生と団体鑑賞したが、同じころに見た”コタンの口笛”や”にあんちゃん”を見た爽やかで感動的な印象とは程遠く、なぜ、この様な映画が児童が鑑賞するべき映画なのか判らず、随分と悲惨
な筋書きであったことを、今以って記憶に留めているのである。

 戦後10年、昭和30年代に移行して後、高度成長期に至るまでに労働者の労働環境は暫時、改善・改良が加えられたが、遅々として改善されない漁業労働者の労働環境の実態を水木洋子はいくつか取り上げ、ラジオドラマ「舵子」(1954年、NHK)と「舵子」を映画化した「怒りの孤島(1958年・日映)で、漁船の漕ぎ手として働かされている児童達の過酷な労働実態を児童虐待事件「舵子事件」を基に克明に描写したのである。

 映画で情島は愛島と置き換えれているが、実在するこの島は逆差別され殆ど削除されている。

 この事件の背景には、瀬戸内海地域で昔から存在した子飼制度、貧窮して労働力として人を雇用する財力の無いう貧しい島々で子どもを買って労働力にしていた。
 そこでは、鶏小屋に閉じ込めて、まるで家畜のように、幼い子どもたちを扱っていた。
 
 この映画のストリーを思い出す度に、洋画”カッコーの巣の上で”に映像が重なるのである。
 

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 岩石ばかりの小さな愛島は鯛の一本釣りをする親方によって支配されている。
 激しい渦潮の中で小舟をあやつるのは舵子といわれる少年たちで、労働と虐待に暗い日を送っていた。
 そこへ光男、悌三、幸太郎、太一、進、忠、一夫という七人の少年が、仲介人の猪造に連れ
られ、舵子になるためにやって来た。
 古くからいる鉄は親方の怒声と鞭によって、ほとんど無表情になっている。
 彼の親友直二は、鰯を盗んだというだけで小さなエサ箱にとじ込められ食物を断たれていた。 鉄は直二に、ソっと食物をさし入れることによって、わずかに人間らしい心をとりもどすのだったが、新しく島に来た幸太郎等は、鉄の冷たい態度を理解することができなかった。 
 だが、やがて少年たちは、激しい労働にたえられず、島を脱出しようと計画する。
 幸太郎も、鉄の直二に対する愛情を知って仲直りした。
 盆踊りの夜、彼等が直二を訪れると、憐れな少年直ニはエサ箱の中で飢死していた。
 いよいよ一同は脱出を決行する。
 鉄も直二の死体をかついで、少年たちのあとを追ったが、彼一人親方に捕まり、むごい仕打ちをうけた。
 これを見た分教場の吉川先生の娘絹子は、そっと鉄を自宅に引きとって看護するのだった。
 やがて脱出した少年たちによって、島の実情が明るみに出され、警察は調査に乗り出した。
 舵子たちにも新らしい日がさしはじめたが、古川先生の家で元気になった鉄は絹子の親切に感謝しながらも、辛い思い出の島をたち去った。

参照:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』など