愛佳side
「そろそろ目を覚ましなよ…ひら…」
大阪城ホール公演初日
平手友梨奈衝撃の復帰の日
観客にとって確実に忘れられない瞬間にした後、バックステージに戻ってきたひらはフラフラと力なく壁に寄りかかる。
て「…っはぁ…はぁ…」
「ひら!よく頑張ったね…!」
て「…つた…わっ…た…かな…?わ、わたし…のきも…ち…。おきゃ…く…さんや…メンバー…に…。」
ほら。
自分がこんな状態でもパフォーマンスの事を考えるんだよこの子は…。
「もちろんだよ!!みーんなの歓声聞こえたでしょ??それに、ひらのこの負けたくないっていう強い想いは、犯人たちにも伝わってる。きっと犯人たちは苦虫を噛み潰したような顔してるよ!!」
て「…にがむし…??」
「…ふふっ(笑)ひらには難しい言葉だったね(笑)さ、医務室行こう。」
医務室で注射を打ち、少し眠って起きたひらとこの後のことについて話すと、明日の2日目も出たいとの事だった。避雷針だけだよと言うと、「うん。」と素直に頷いたところ、やはり参ってるようだった。
でも、私はあの時、2日目に出ることを止めておくべきだったとこの後、後悔することになる。
2日目になり、ひらが復帰しているものの、まだ万全の状態でないことから、1日目と同じく避雷針のみ参加ということがメンバーに知らされた。
ひらは自分の出番が来るまでモニターでライブを見ていたいと言っていたが、私やゆっかー、軍曹の「ギリギリまで休んでなさい」という言葉を聞いて医務室で休むことにした。
そして避雷針。昨日と同じく観客の声援がひらの登場とともに大きくなる。一気に主人公となり圧巻のパフォーマンスを見せつけた。
「ひら!おつかれさ…?」
会場が暗くなる中戻ってきたひらの様子がおかしい。その目は虚ろで意識が朦朧としている。昨日にも増してフラフラとした足取りで帰ってきたひらは立つことすら出来なくなり、その場に崩れ落ちた。
「ひら!!分かる?」
て「…」コク
痛み止めが切れたのか、もう話すことも出来なかった。痛みに耐えるようにくちびるを噛み締めながらなんとか私の言葉に答えようとする。
「ひら、医務室行こう。」
天「平手さん!愛佳さん!!」
「天ちゃん!ここにいて大丈夫?このあとアンコールあるでしょ?」
天「もう準備できててあと出るだけなので!」
て「…とう…」
「ん?何?どうかした??」
て「ま…なか。てん…。みん…な。あり…が…と…」
蚊の鳴くような声でそう呟いたひらは糸が切れたマリオネットのように全身から力が抜け意識を失った。
天「ひ、ら、て、さん…?」
「ひら!ひら!!!ちょっと!誰か!!」
理「どうしたの!てち?てち!スタッフさん、すみません!救急車を!天ちゃん。私たちは行かなきゃ!愛佳あと頼んでいい??」
「まかされた。天ちゃん、大丈夫だから。お客さん待ってるから行ってきて。」
天「…でも…!…分かりました…。」
私は浅い呼吸を繰り返し苦しそうにするひらを乗せた救急車に同乗し、病院へ向かった。
--------キリトリ線--------
【epilogue】1個に納まりませんでしたm(_ _)m