パンッパーンッ!!
ひ「うぉっ!?何!?」
友1「ひかるー!お誕生日おめでとう〜!」
ひ「えー!ありがと〜!ってか、教室入った途端クラッカーはびっくりするじゃん!」
友2「だって大親友のひかるの、1年に1回の誕生日だよ〜?みんなお祝いしたいよ!ね!!」
友3「そうそう!あ、これだけじゃないんだよ〜」
友1「じゃーん!ケーキ!」
ひ「え!ケーキまで!?」
友2「さ!ロウソクの火、消して消して〜!みんな歌うよ〜!せーの!」
目の前には白いショートケーキと揺れる炎。
足元や机の上にはクラッカーの残骸が飛び散っている。
ひ「ふーっ」
友3「おめでとう〜!!」
ひ「ありがとう〜!」
友1「プレゼントは…」
ひ「すご〜い!みんなありがと!あ、ちょっとお手伝い行ってくるね!」
友1「え!ケーキ食べようよ!」
ひ「ごめん!先食べ始めて!!」
ひ「はぁ…」ガンッ
イライラする。
イライラして屋上にあった缶を蹴り飛ばし、渡されたプレゼントを地面に叩きつける。
?「お。一軍様の裏の顔?」
突然聞こえてきた頭上からの声に驚き、顔を上げると貯水タンクの傍にショートの女の子が座っていた。
ひ「え?あ、これは…よく見えなくて蹴飛ばしちゃって…」
?「ええって、そんな嘘偽り。今の姿がほんとのあんたの姿なんやろ?森田ひかるさん?」
ひ「…チッ。何?この姿を知って、みんなに言いふらす気?それとも言いふらされたくなかったら、って脅す気?……藤吉さん。」
夏「え、夏鈴のこと知ってたんや。意外…ではないか。誰にでもにこにこ優しい一軍女子の森田ひかるさんやもんね。」
ひ「それ、やめてくんない?」
夏「で?何にキレてんの?さっきここから見てたけど、教室で盛大に誕生日祝われてたじゃん。」
ひ「…だからだよ。私が望んで産まれたわけじゃないのに。」
見られたくない姿を見られてしまって、もうヤケになったのか、思っていることがどんどん言葉になって溢れてしまった。
誕生日になる度いつも絶望を感じる。
毎日毎日、親や先生から認められる人になろうと努力し
友達が落ち込んでいたら慰め、困っていたら助けてあげて
女子あるあるの仲良しグループで生きていくために化粧や身だしなみに気をつけ
喋りたくもない男子と仲良くして憧れの存在でいようとし
こんなに十分に生きてきたはずなのに、誕生日を迎える度に、“まだたったの10数年しか生きていないなんて”とまだまだ長い先に絶望する。
ひ「今日だって、“自称親友”の人たちがただの自己満のサプライズで、誕生日といえば、みたいにテンプレのケーキを用意しててロウソクの火を消して〜!って言うんだよ?それになんの意味があるっていうの。」
夏「ははーん。だからか。無理に作った笑顔だからあんなにぎこちなかった訳ね。(笑)」
ひ「私も今のポジションを保つためにプレゼントを用意して渡すこともあるけど、あんなのただの誰かと繋がりが欲しいための交換会でしかない。」
夏「……じゃ、やめれば?」
ひ「……は?」
夏「そんなに嫌ならやめればいいじゃん。」
ひ「そんなことしたら…」
夏「そんなことしたら、みんなから認められなくなる?自分が望んで産まれた訳じゃないって言ってたけど、産まれてしまったものは仕方ないじゃん。じゃあせめて、“自分が望む生き方”を自分ですればいいじゃん。」
ひ「…」
夏「誰かに合わせて、誰かを庇って、喧嘩しても許しあって、お互いの傷を舐めあって。そんな生き方してて、生きててよかったって思えるの?少なくとも私はそれじゃ“自分の人生終わってんなー”って思うから、嫌だね。」
ひ「…じゃあ、どうすれば…」
夏「そんなの自分に聞きなよ。今更生まれ変わることなんか出来ないけど、自分の意思で生きてくことなら出来るよ。」
ひ「…」
夏「さ?どうする?」
ひ「…今はもう、教室に居たくない。学校にもいたくない。だから…」
ひ「だから、こんな苦しい場所から連れ出してくんない?」
夏「ふっ。了解。」
そこから私は人生で初めて学校をサボった。
教室で私を待っていたであろう友達のことなんか放っておいて、夏鈴とふたりで学校を飛び出した。
夏鈴と話して
夏鈴と1日自由に過ごして
誰かに評価されるために生きる生き方だけじゃ、ダメだということが分かった。
今日1日、夏鈴と過ごしたおかげで私は私にやっと言えそうだ。
新しい生き方を見つけた自分へ。
Happy birthday