天side



天「うん。見つかった。そ、また位置情報送るから、迎えに来てもらえる?うん。ありがとう、理佐さん。」


何とか夏鈴を海から引き上げ、理佐さんに見つかった連絡をした。

すぐ行く、との返事をもらったのでひと安心。

夏鈴はというと、保乃の用意してくれたバスタオルを頭からかぶり、まだひと言も発していない。



天「夏鈴、理佐さん来てくれるって。」

夏「…」


気まずい沈黙が続く。


そんな沈黙を破ったのは保乃だった。



保「なぁ…」

夏「…!!」

保「夏鈴ちゃん、あの…。




      ありがとう…。」



夏「…え?」



保「この前、助けてくれたのに、ちゃんとお礼言わずに帰ってしもた。夏鈴ちゃんも怪我しもうて、保乃のこと…助けてくれたのに…」

夏「…」

保「あん時な、正直怖かった。知らない男の人達に囲まれて…っ、、、」

天「保乃、無理しないで…」

保「…大、丈夫。それも、怖かったけど、いつもの夏鈴ちゃんじゃない夏鈴ちゃんが…怖かってん…。」

夏「…っ、」

保「だけど、後から家に帰って考えてん。あの時の、夏鈴ちゃんは、保乃のせいであんなふうになってしまったって…」

夏「…!保乃の、せいじゃ…」

保「なぁ、夏鈴ちゃん?教えて?前みたいに。前にここで夏鈴ちゃんのこと教えてくれたみたいに。保乃なぁ、夏鈴ちゃんのこと知った気でおったんやなぁって悔しくなってん。もっと夏鈴ちゃんと深い友達になりたいねん。保乃は夏鈴ちゃんの全てを受け入れるよ。」

夏「…でも、知ったら、保乃は、保乃は普通の生活には戻れなくなる…」

保「いいよ。夏鈴ちゃんがいない方が、もう普通の生活じゃないから。(笑)」





保乃の器量の大きさには驚かされる。

だからこそ、夏鈴が心を許してるんだなぁと感じた。




夏「天…。」

天「うん。言おう。保乃を信じよう。」







そうして、保乃に打ち明けた。







私たちが、殺し屋組織の一員だということを。












保乃は私たちの話を静かに聞いてくれた。





夏「…だから、保乃を襲ったやつらは理佐さんが対処してくれたから、私たちはどうなったかまでは分からない。けど、保乃は、もう、安全…。」

保「…」



またしても続く沈黙。

その空気に圧されて夏鈴の語尾も小さくなっていく。



保「…ありがと。話してくれて。」

夏「ごめん。ごめん…なさい…」

保「なんで謝るんよ〜!夜バイトやって言ってたのはこのお仕事やってたんやなぁ〜!それで日中は授業受けて!偉いなぁ!」

夏「え?」

保「え?違うん?」

夏「いや、違わんけど。」

天「なんでそんなにすんなり…」

保「夏鈴ちゃんと天ちゃんが何者で何をしていようと、保乃の前にいるのはいつもの夏鈴ちゃんと天ちゃんや。それに、保乃がお願いして話してもらったことや。どんな話が来ても受け入れる覚悟は出来てたから(笑)」

夏「…ありがと…。」





そう話しているうちに、理佐さんが到着した。

理「夏鈴ちゃん!」

夏「り、さ、さん…あの、ご、ごめんなさ…」ギュッ

理「もう…。心配したんだから…。勝手に居なくならないでよ、、、」

夏「うん…ごめんなさい…。」

理「保乃ちゃん、だよね?この前、夏鈴ちゃんが暴走したときにいた…」

保「はい。」

理「夏鈴ちゃんを探してくれてありがとう。」

天「それで、理佐さんに言わないといけないことが…。」


理佐さんに、私たちの仕事のことを保乃に話したことを打ち明けた。


理「そうか…。で?君は聞いて覚悟は出来てんの?」

保「はい。そのリスクは承知で天ちゃんと夏鈴ちゃんにお願いして聞きました。」

理「んー。まあ、今回は特例で許すかな!ほら、ひかるもこんなに懐いてるようだし…」

ひ「…!」ニコニコ

保「ひいちゃん!」

理「天ちゃんからの電話の時、保乃ちゃんもいるって話したら、着いていくって聞かなくって(笑)でもさ…、」



ふわっとしていた空気が一気に冷たくなる。



理「でもさ。もし、私たちのことを世間や警察にばらすような真似しようとしたら、即殺すから。」

保「はい。分かってます。約束します。ただ、もしそんなことがあったとしたら、その時は、夏鈴ちゃん?夏鈴ちゃんが私を殺してね?」

夏「えっ!」

保「大丈夫!そんな真似、しないから!(笑)」

理「いいねぇ。肝が据わってるねぇ!気に入った!!」




夏鈴side



その日以降、保乃は、よく下宿先に来るようになった。

ひかるも保乃に会えて嬉しそう。




しばらくして、保乃も仕事を手伝うようになった。

もちろん、保乃は殺したりはしない。裏方として手伝ってくれている。



例えば、私たちが仕事の間にひかるの世話をしたり、ご飯を作ってたり。

今まで理佐さんが私たちと仕事をしながらしていたことを、保乃が引き受けてくれたことで、私たちの組織も段々と力を付けるようになってきた。





ひかるがやってきたときに感じたやりがい。

あれは明日を生きる気力だったのかもしれない。

今も感じる。

仕事としてはターゲットの明日を奪う、世間的一般的に見たら最悪なことかもしれない。

でもそれによって、ひかるや保乃の明日を守ったように、明日を守れることもある。





だから過去の自分に言ってあげたい。





どんな過去があったとしても



どんな生き方をしていても



生きてさえいれば



明日は来るよ。














〜epilogue〜



理佐side


保「今日もお疲れ様です!」

理「保乃ちゃん、今日もひかるのこととかご飯とか、ありがとうね〜。」

保「あ!今日ひいちゃん、自分の名前とここにいるみんなの名前の書き方覚えたんですよ〜!ほら!」

理「えー!すごいじゃん!保乃ちゃんがうちに来てくれて本当に助かってるよ〜。この子たちも今まで以上にのびのび出来てる気がする。」



私たちの視線の先には、添い寝する3人の姿が。


理「今まで、夏鈴ちゃんがこんなに幸せそうに寝てたことなんかないよ。天ちゃん、ひかる、保乃ちゃんのおかげだね。」




ちゃんと間違いなく朝はくるよ。

明日も誰かのために生きていこう。




そんな思いも込めて夏鈴ちゃんの頭を撫でる。

ふにゃっと笑った夏鈴ちゃんの顔は、今まで見た中でも1番幸せに溢れた顔だった。






Fin.







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IWTC完結です〜!

相変わらずノロノロ更新ですみません。最後までお読み下さりありがとうございましたm(_ _)m

今回はコメントをいただけることも多く、嬉しかったです。

力になりました!ありがとうございます!




13thのフォーメーション発表されましたね!優ちゃん初選抜センターおめでとう!

新せ界のビジョンをどんどん現実のものにしていく櫻坂はすごい!(ということは夏鈴ちゃんの離島ライブも…?笑)


書きたいお話沢山!
書きたい世界観沢山!

でも実力が伴わないっ!精進します。

これからもよろしくお願いしますm(_ _)m


SiN🌱