最近観た邦画 | 遥かなるのしんの呼び声

最近観た邦画


逆境のしん
さけび 2006)

監督:黒沢清 出演:役所広司、小西真奈美、葉月里緒奈、伊原剛志


「降霊」であれだけの表現ができる人なので、この映画は霊で怖がらせようとしている映画ではないなと・・・。

「幽霊もの」として観ると、むしろ爆笑かもw


都市開発から取り残された湾岸地域、取り壊されずに老築した建物、忘れ去られた人々・・

悲しみ・怒りが叫びとなって・・・うまく表現できませんが、そんな風に受け取りました。


黒沢映画の好きなところは、やたらと説明をしないところです。

難解さはあるけれど、決して、観る者を突き放した自己満足な映画ではないこと。


不気味な建物、湿った土地、無機質な警察署内、ストレスを抱えた刑事

とても雰囲気があり、相変わらず、観てる者を不安に陥れてくれます、清。

設定や登場人物に「CURE」を連想させる部分も多くて、興味深くみることはできましたが、最後まで乗りきれず。。

葉月幽霊が強烈すぎて、何だか集中できないってのもあります。


逆境のしん
どう考えても、ムンクの叫びのパロディです。

☆3.6/5



逆境のしん
人間 (1962

監督:新藤兼人 出演:乙羽信子、殿山泰司、佐藤慶、山本圭


漂流する運搬船。やがて尽きる水と食料。

極限状態に追い込まれた人々の姿と狂気を丁寧に描いた、新藤兼人監督初のATG作品

怖い。そして悲惨。新藤節全開です。

☆3.9/5




逆境のしん
 (1955

監督:新藤兼人 出演:乙羽信子、浜村淳、殿山泰司、高杉早苗


当然の事ながら、新藤映画にはもれなく乙羽信子がついてきます(爆)


保険会社の外交員募集会場に様々な事情により職にあぶれ、生活に困った男女が集まってきた。少ない給金で過酷な労働。

契約が取れずに、次々と職を離れざるを得ない人々。残った5人も最終的に解雇。その5人はそれぞれに家庭の事情を抱えていた・・。

極貧の生活環境が彼らを追い詰め、犯罪へと向かわせていく・・。


もうねぇ、これでもかこれでもかと、救いようもないような不幸がさく裂します。

それぞれのエピソードが哀れすぎるんですが、今の時代に驚くほどマッチしているのも怖ろしい。

この映画、バブル時代の日本で観てもピンとは来なかったでしょうね。

今は、いつ誰がこのような状態に堕ちるか解らない不安な時代ですからね・・観ていて他人事ではないような気がして。


タイトルの『狼』も相当制作者側の皮肉が込められています。

本来は羊のようにかよわい彼ら。犯罪を行うことで群れで狩をする「狼」と呼ばれるが、本当の狼は一体誰なのかと・・。

平成不況、雇用不安、先行き不透明のこの時代、余計考えさせられます。

「人間」では海女を演じた乙羽信子、ここではまさにザ・貧乏という貧乏ぶりで、涙を誘います・・。そして驚くほど貧乏が似合ってます・・。

☆4.3/5




逆境のしん
どぶ (1954

監督:新藤兼人 出演:乙羽信子、宇野重吉、殿山泰司、山村聡


すいません、また新藤作品です。

ここでも乙羽信子は大暴れ。髪を振り乱しての大騒ぎです。

ま、そんなご陽気な話ではないのですが。

えぇ、だってタイトルが「どぶ」ですもの。

どこまでもどこまでもな、新藤乙羽ペアです。


京浜工場地帯の一角、河童沼ほとりの集落に、ある朝うす汚ない若い女の行き倒れがあった。
集落の住人徳さんがパンを与えたのを機会に、この女ツルは河童沼集落に住むことになった。ツルは失業し、それ以来というもの転々として倫落の道をたどってきたのだった。
頭が少しお花畑で、人を疑う事を知らない純真なツルを利用し、ひと儲け企む徳さんとピンちゃん。しかし・・

新藤作品に共通するのは、辛い環境のある人間が結局は救われないという厳しい現実。

だけど、この作品では自分勝手で自堕落な人間が自分を見つめ直すという、救いも描かれています。


何よりも信子の壊れ方が半端ないです。

宝塚のスターだったハズの彼女ですが、この映画の中では最初から最後までまともな顔をしていません。今考えれば「人間」「狼」の信子なんて、まだまともだったわ。あの頃の信子が懐かしい・・

って、この映画の方が先に制作されてました。

まだ30歳でこの演技。かなりの覚悟だったでしょう。


今、この役を体当たりで出来る女優はいるでしょうか・・・。

ここまでイカレた演技はまず無理でしょうね。

さすがの松たか子も断ると思います。

寺島しのぶは・・可能性あります(爆)


新藤監督が実際に鶴見川の集落を取材して書きあげた脚本。

ここまでの役を乙羽信子が演じのは、ひとえに監督への愛からだったのでしょうか。

後半だれて、お定まりな感じになってしまいますが、信子の渾身の演技に☆4.2/5




逆境のしん
 (1957

監督:市川崑 出演:京マチ子、船越英二、菅原謙二、山村聡、石原慎太郎


記者の長子は汚職警官の記事を書いて、会社をクビに。

悲観する長子に、友達が長子自らしばらく失踪して、そのルポルタージュを書き、その長子を探す懸賞募集というプランを、雑誌社に売りこめと勧める。

第億銀行に資金を借りに行った長子。が、支店長とその部下は自分たちの預金横領の犯人に長子を仕立てようと企み・・・


とてもスピーディでテンポの良い、サスペンス・コメディ。

京マチ子が、ちょっと蓮っ葉でチャキチャキしてて行動力のある女性を楽しそうに演じていて、つい引き込まれます。

凄い美人でもスタイルが良い訳でもないけど、とても魅力的。

変装を繰り返しながら、自分の潔白を証明しようとする長子。

二転、三転する駆け引きが見所です。

テンポの良さと、監督のモダンなセンス、そして京マチ子の七変化。

軽い気持ちで楽しめました。

ストーリーと全く関係ないところで、若き石原慎太郎都知事が歌っています。やたらめったら甘い声です。演技は棒でした。

☆3.8/5



逆境のしん

幸福 (1981

監督:市川崑 出演:水谷豊、永島敏行、谷啓、中原理恵、市原悦子


水谷豊演じる刑事が、恋人を殺された若い刑事と共に銃乱射事件の捜査を進める中、さまざまな人間模様を目の当たりにし、現代における幸福とは何かを見つめ直す。 「キネマ旬報社」より


これは長年、幻の作品と言われていたのです。

版権の問題で1度もソフト化されずにいましたが、昨年ようやくDVD化。

エド・マクベイン87分署シリーズを原案にした、ミステリーであり人間ドラマです。謎解きとして見ると肩透かしかもしれません。


1つの殺人事件を通して、三つの家庭の事情が浮き彫りになります。

妻に逃げられ、幼い子供を抱えて奮闘する刑事水谷豊が、事件を追いながらそれぞれの家庭を見つめる中で家族とは幸福とは・・と考え始めます。派手なストーリーではありません。

でも何しろ、子供たちの演技がとても自然で良いのです。

平気な顔をして、健気に耐えているんです。

で、駄目なお父さんに呆れてもいます。

ラストの子供たちの言葉に思わず「俺・・○○だよ・・」と泣く豊。

思わず私も涙・・。


本当はモノクロで撮りたかったらしいです、市川崑監督。

目に映るものに捉われること無く、物語に集中してもらう為にも色は排除したかったと。

しかし制作側からカラーでと言われ、「シルバーカラー」と呼ばれる手法でフィルムの現像。

とても淡い色で映し出された昭和の東京、主人公の住むアパート、河川敷・・

何とも言えない色合いで、今観るとそれがまたいい味を加えています。

どこか金属的でもあるのに、暖かさや懐かしさもあり・・不思議な感覚です。


「いかにも市川崑」という作風ではありませんが、加藤武が刑事役で「よし、分かった!」と言ったり、金田一シリーズファンに嬉しいサービスもあったりして。えぇ梅子草笛光子も出てきます(爆)


☆4.2/5

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「叫」「人間」「狼」「どぶ」「穴」「幸福」・・・・

なに、この文字数が少ないタイトル達。

気がついたら、こんなのばっかり観てました。


他にもあるのですが、書ききれません。

取りあえず若い頃の乙羽信子と長澤まさみは、なんとなく似てると思いました



逆境のしん
逆境のしん