グサッ

この音は、ナイフの音。
包丁より、軽い音。
そのナイフを持っているのは、恵多。

恵多「かあさんが悪いんだかあさんが悪いんだかあさんが悪いんだかあさんが悪いんだ・・・

自分に言い聞かせるように、何度もその言葉を繰り返した。
真っ赤な血が、体中に張り付いている。
父の血、母の血。その両方が、体中にある。

わずか7歳だったころの俺の目の前には、涙を流して倒れている母の姿があった。

恵多「かあさんが悪い…かあさんが…かあさんがとおさんを…!やだ…やだよ、壊れるのは…幸せの終わる世界が来るのは…助けてよぉ…誰かぁ…」

??「ククッ…」

突如、目の前が真っ黒になった。
目の前にいた、かあさんの姿も見えなくなった。
そのかわり、誰か知らない人がいた。

??「助けてやろうか?少年。」

恵多「・・・助けて・・・僕、もうやだ!僕・・・じゃない!かあさんが・・・じゃない!・・・もう、分からない・・・このまま、僕を天国に連れてってよ・・・」

??「ククッ…なら、『終わらない世界』に来てみるか?」

恵多「・・・や、ヤダよ。僕は・・・僕はもう・・・」

??「なら、このまま生きろ。さらばだ、少年。」


一気に周りの景色が変わったため、目が眩んだ。

(何が起きたんだ・・・?)

俺は急いで鏡を取り出し、自分の顔を確かめた。

(何も変わってない・・・よかっ・・・!)

鏡に映っている自分の姿は特には変わらなかった。
だが、『ある部分』の色が違ってた。

恵多「目が・・・赤い・・・」

そう。目が茜色になっていた。

恵多「なんで・・・なんで、天国に行かせてくれなかったの・・・」

母「あら、恵多。どうしたの?そんな青い顔して」

恵多「かあ・・・さん・・・?どうして・・・」

(なんで・・・かあさんは・・・かあさんは僕が・・・)

母「あなたは悪い子よ。だって、私を『殺した』んだもの。怯えなくていいのよ?大事にあなたを育ててあげるわ」

母は、にこやかに俺にそう告げた。
だが、その笑顔はいつもの笑顔とはどこか違う笑顔だった。

母「ふふっ」
恵多「・・・なんで」
母「どうしたの?」
恵多「なんで・・・なんで・・・なんで!!」
母「大丈夫よ。あなたにたくさん『教育』してあげるから、ね?」

母は、俺の手首を強く、握った。
悲鳴をあげようとした。だが、口を押えられた。

母「あなたが・・・あなたさえいなければ・・・!!」

母は、憎しみにこもった顔で僕を睨み付けていた。


恵多「こんなの・・・こんなの、僕のかあさんじゃない・・・」

母が出かけている間、俺は監禁されていた。
その間、俺は家出をしようと決意した。

恵多「かあさんと僕が、平和に暮らせる世界にしよう。」

そのとき、俺の将来の夢は変わった。