少し春を感じる季節。桜は春風とともになびき一人の少女の長い髪も揺らした。

   今何かが起きようとしている___。






  今日から高校1年になる“徳川 琴羽”は初めて着る制服に気分が高まる。


「やっぱりこの制服は可愛いわ!」


 まるで小さい子がほしかったおもちゃを買ってもらったかのように彼女はとても喜んでいた。それもそのはず、彼女は初めて“学校”と言うものに通うのだから。


「お母様が通っていた学校なのだからとても素敵なところなのでしょう。」



 琴羽の母、“徳川 雪羽”(とくがわ ゆきは)は彼女が小さい頃に亡くなり彼女は母親のことをあまり覚えてはいないが屋敷にあった母の写真を見て「いつかこんな風になりたい!」と思うようになっていた。そして母親の母校の学校に通いたいと言う思いが今日やっと叶うのだ。


「お嬢様。そろそろご出発のご用意を・・・。」


「えぇ。」


 ドアの向こうから聞こえる声に彼女は返事をし急ぐように鞄を持ち部屋から出た。


 “徳川家”とは世界に誇る有名な家柄で別荘をいくつも持っている。なので徳川家の一人娘の琴羽はとても大切に接しられてきた。
 
 学校と言う組織には行ったことがなく、家庭教師に教えられ、6~15まではフランスで過ごし外で買い物をするときも警備員(sp)の人たちが周りにたくさんいるか、お店自体を貸し切りにしショッピングをしてきた。それか常連になっているお店には店員の人に来てもらい家で買うこともしばしばあった。


  つまり彼女は“箱入り娘”と言われても過言ではない。







  部屋を出た彼女は長い階段を降りてまるで今まで一回も使ったことがないのではないかと思ってしまいそうなぐらい綺麗に片づけられている洗面所へ行き少し冷たい水で顔を洗った。それから身支度をし部屋を移動した。


  移動した先は、世間一般で言う食卓だ。そこには広々とした部屋に何十人も並べられる長いテーブルに座高が高いイスが何脚も並べられていた。


  そこに琴羽は一人で座り、赤く長いテーブルクロスの上にのせてあるできたての朝食は朝の食欲がない気分も気にしないで食べれるぐらいのあっさりとしたメニューだった。そして彼女は朝食を何十分もかけて食べ、今度は仕上げの身支度をして自分より大きな鏡を見た。


「うーん。なかなかね。」


 鏡に映っている自分の姿に少し浮かれる。校則の決まりであまり濃いメイクはできないが最低限のことはし、一層可愛くなった自分に惚れたのかもしれない。


自分の姿と母親の姿を少し見比べた。


「まだ何かが足りない気がするわ。」


 自分の姿と母親の姿を比べていた琴羽は少し疑問を浮かべていた。赤と黒のシェパート・チャック柄のスカートに少しピンクがかかった白のシンプルなジャッケト。そしてポイントとなる白と黒のペンシル・ストライク柄のリボン。制服も髪型も母親と同じなのにどこかが根本的に違っていた。けれどなにが足りないかは誰にもわからなかった。











 

 目的の場所に着き琴羽は自分家の高級車から降りる。


「お嬢様。お一人で大丈夫ですか?」


 心配そうに琴羽の執事である“一色 音夜”(いっしき おとや)は声を上げる。


「大丈夫。そんなに心配しないで?」


 琴羽は柔らかい声を出し音夜と話した。



 音夜は琴羽の一つ上の歳で琴羽の良き理解者でもあった。音夜はある時、琴羽の母である雪羽に出会い救われた。それからは琴羽の執事(幼少時は遊び相手)として徳川家に仕えている。しかし音夜も雪羽と出会ったときは幼くあまり覚えてはいないがとても感謝している。


「しかし・・・」 


 琴羽の返事に不安を持つ音夜は言葉を詰まらす。


「ねぇ。音夜」


「なんでしょうか。」


「私、一人で歩んでみたいの。お母様と同じように一人で通ってみたいの__。だめ・・・かな?」


 音夜も琴羽が雪羽に憧れいると言うことは知っていた。自分の行動でお嬢様の決心を壊してはならない。と音夜は思った。


「では、お嬢様。これだけは約束してください。無茶はしない。なにかあったら連絡をする事!いいですね?」


「えぇ。」


「ではお気をつけて。」


「またね。音夜」


 琴羽は歩きながら後ろを軽く見て音夜に言う。音夜はその声に嬉しく思い、一礼をした。






「どこかしら・・・・。」


 琴羽は自分のクラスをみて教室に移動しようとするがその教室の場所がわからない。琴羽は廊下の真ん中あたりでウロウロしていると誰からか優しく肩をつかまれた。


「君どうしたの?」


 琴羽が後ろを向くとそこには満面な笑みを浮かべ自分のことを見ている少年が一人立っていた。


「えぇと・・・」


 教室の場所がわからないことを話そうか考えてる琴羽を見て琴羽に声をかけた少年は言葉を発する。


「君やっぱり可愛いね。」


 まじめそうに行って来る少年が変な人だと思い逃げようとする琴羽は背後からくる声に驚く。


「そんな挨拶があるか!!!!」


 少年に怒鳴り声と拳骨を浴びさせた彼女は琴羽の方を見た。


「初めまして。私は“原井 由梨”(はらい ゆり)と言います。でさっき大変筆例なことを言ったのが私の幼なじみの“工藤 暁斗”(くどう あきと)。謝りなさいよ!」


「わ、わりぃ・・・。」


 暁斗はさっき拳骨を食らわされた頭を痛そうに撫でながら言った。


「別にいいよ。」


 琴羽は少し冷たく返した。


「貴方はどうしたの?そんなところに立ち止まって_。」


 由梨と言う少女の髪型はショートカットでいかにも運動ができそうな雰囲気を醸し出している。


「1年2組はどこかしら」


「2組?」


「えぇ。」


 琴羽は少し由梨を信じ聞いてみた。


「2組なら私たちと同じクラスね!じゃあ一緒に行きましょうか。」


「__あ、ありがとう。」


「お互い様よ。」


 琴羽は少し照れくさそうにお礼を言い由梨は優しく微笑んだ。


 教室に移動しているとき三人はお互いのことを話した。


「徳川さんは今までフランスですごしてたの?」


「えぇ。でも日本には何回も帰ってたわ。」


「つまり帰国子女かよ!すげぇーな」


 由梨と暁斗は琴羽の名字を聞いても最初みたいに接した。少し驚いた顔もしていたがあまり気にしないと言う様子で琴羽と話していた。


「でも何でそんなお嬢様がこんな普通の学校に通うと思ったの?俺なら私立とかの有名校いくな~。」


 暁斗は頭の後ろに手を組みながら琴羽に言う。


「ここ、お母様の母校なの。」


「へぇ~。」


「そうなんだ。」


 暁斗と由梨の言葉は違うけどどちらも琴羽の言葉に呆れてる気配はなく、少し琴羽は安心した。


(この二人なら少しは信じていられるかな___。)



 そんな気持ちが琴羽の頭の中に浮かんできた。

いつもと同じ髪型で同じジャージを着て学校にいく。バスのたち乗りに慣れた日常も眠たさがバスの揺れだけではなく立ちくらみも起こす。少し空いてきてバスの椅子に座り一息吐く。そして少し眠りについてからバスを降りた。
降りたあたりの道路を見てみると霜がかかっていていっそう12月の寒さを感じる。そんなんで首を囲っているマフラーを口元に近づけ息を吐く。白い煙がマフラーの隙間から出てくる。
校舎の中に入ったとき、少し生暖かい感じの空気が頬に触れる。何となくいつも避けているはずの日光に当たりたいと感じた。
それから授業が始まり睡魔がいつものように襲いかかる。けれどそれをこらえるかのように目を手でこする。そんな事を何時間も続けていた。
休み時間や放課後は少し嫌になる。何かを見せつけられるかのような気持ちになる。人間と言うものは自分勝手。都合がいい。そんな言葉が似合うと思った。それと同時に恐い生き物だとも感じた。異性と同性で態度後が違うとか、わざわざ言わなくてもいい事を言って話を大きくしたり、いつも上げないような高い声で笑う姿も少し嫌いなのかもしれない。
部活。部長、副部長になっていないから思う。責任者なのにやる気がないのはどうだろうか。と___。別相にあっていないとかその人が嫌だとか思っていたとしてもそれはおいといて、その責任者の人達の会話を聞いてみて不快な気持ちになったのは確かだと思う。周りは一生懸命自分なりに部活動に励んでいるのにそれに対して「この競技好きじゃないから」「負けると分かってる意味のない試合はしたくない。」「弱いから仕方ないよ。」そんな言葉を聞いていると少し嫌になる。

明日はまた違う時間を送ると思う。けどそれはいい日とは限らないし悪い日とも限らない訳である___。
小さい頃よく一つ上の幼馴染みと遊んでいた。それは今思い出すととても懐かしくてあの頃はいつのも皆が揃っていないとなぜか淋しかった。それほど好きだったんだと思う。この時間が......。でも私だけが皆と違う高校に入った。もう会えないかもしれないけど、私はいつの日も信じています___。







まだ何百年とかそんな年はたっていないはずなのに、昔の事を思い出すとそれは遠い昔の事のように感じる。あの皆で揃っていた事がとても懐かしい。いつも俺は二人の先頭を走ってて二人はそんな俺を追いかけてた。そんな事が当たり前だと思っていたのに後ろを見ても誰もいなくて寂しくて......。だからかもしれないけど、また三人話せる、笑える日がくる事を願っている。そしてまた昔のように話せたらどんなに良いだろうか____。







幼い頃の思い出はとても懐かしくてなぜか泣きたくなってしまう。あの頃の思いでは今の僕にとっては今すぐにでも呼び戻したい日々なんだ。けど、それをいくら願ったって叶わない……。『ゴメンね。二人共。二人には秘密にしていたけど僕はもう死んだんだ。』いつかきっと三人でまた会える日を願っていたのに僕のせいでそれは叶える事のできない事になってしまった。僕はもう二人の前で姿を見せる事はできないから......。こんな僕だけど三人で話せたあの思い出の日々はとても…とても......貴重で楽しかったんだ。だから駄目元で__聞こえないと分かっているけど『今までありがとう。さようなら___』







いつか三人で出会える日を_____。