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オンライン講演の要点/聴取メモ
 
あらためて九条改憲をみすえる
-今こそ問われる非戦の精神-
 
                    九条の会事務局長 小森 陽一 氏
                        2020.11.3:「愛知九条の会」にて
 
 
Ⅰ 「日本学術会議」新会員6人の菅政権による任命拒否の本質
 
(1)戦争する国づくりに反対した学者をねらいうち
105名推薦したうち6名(九条の会の事務局を担っていた人を含む)が任命拒否。学術会議として抗議、国会での追及に対して、しどろもどろの菅答弁。本質は、安倍政権が進めた「戦争ができる国づくり」のための一連の法体制に反対してきた人たちを対象としたもの。
 2015年に安保法制を成立させ、任期中に「アメリカと一緒に戦争をする国づくり」をめざした安倍政権は、それができそうにないため病気を理由に退陣。菅政権はこの流れを継続。即座に670を超える学会や団体から抗議声明が出された。当然、憲法違反の行為であり、日本をアメリカと一緒に戦争する国に仕立て上げることがねらい。
 
(2)2017年の「軍事研究」に関する声明を敵視した菅政権
2017年5月3日、安倍首相は9条を変えずに自衛隊を憲法に盛り込む案を、日本会議の集会に向けたメッセージとして出した(公明党との関係は後述)。この年、学術会議は「日本の大学が軍事研究に手を染めることをすべきではない」と声明を出した。国立大学が法人化され、研究計画の競争によって防衛相から予算が配分される状況の中だったが、この声明は安倍政権の戦争をする国づくりへの歯止めとなるもの。これが学術会議敵視につながったと考えられる。
 
(3)学問の自由を侵害する菅政権に対して強まる批判
(4)任命拒否について説明できない菅政権の違憲性
    いま、菅内閣はこの問題で国会での答弁ができない状況にある。しかし、この状態のまま引きずることは危険であり、問題の本質を広く訴える必要がある。菅政権は、戦争をする国づくりをより強硬に進めようとしていると見るべき。いま、このことを周囲に知らせることが大事である。
 
Ⅱ 安倍晋三首相を辞任に追い込んだ力
 
 (1)「コロナ禍」最中の政権投げ出しの背景と要因
アベ首相は「コロナ禍」による最も大切な時に辞任。病院への出入りも取材させるという「お芝居」のあり様であった。
 
(2)「安倍九条改憲」の破綻と「敵基地攻撃論」の実体化
 辞任は、自らの任期中に9条改憲をできなかった中での破綻(政権放棄)。つまり、アメリカから、敵基地攻撃への自衛隊の加担に応えるよう圧力をかけられる中での辞任であった。
 
 (3)2007年9月26日の辞任と同じ構造であることに注意
今回の辞任は、小泉政権から禅譲された第一次安倍政権の時、発足後約1年で退陣した2007年の経過とも重なる。
(2007年も今回と同様におなかが痛いといってやめた)。
 
(4)市民と野党の共闘を可能にした「九条の会」運動
2001年に9.11の事件が発生。これを受け、2003年3月にイラクによる大量破壊兵器(これはフェイクニュースだったとされている)に対して、アメリカがイギリスを巻き込んだ「集団的自衛権」の形で軍事行動をとり、フセイン政権に対する先制攻撃として空爆を始めた。
 この過程で、小泉政権による武力攻撃等対処法にもとづいて、2004年からイラクに自衛隊を派遣された(「非戦闘地域」とされたサマーワへ派遣)。第一次安倍政権がこれを受け継いだのだが、安倍首相は「自分の任期中に憲法を改正する」と打ち出した。
 こうした中で2004年に「九条の会」が発足、当時の日本では「国際貢献」を理由に6割を超える人たちが憲法の改正を支持。野党の民主党も改憲について賛成していた。大江健三郎さんなどの著名人が呼びかけた「九条の会」の発足は、新聞のベタ記事(一段記事)でしか報道されないという状況であった。
 その後、2007年の世論調査で、15年ぶりに「憲法を変えない方が良い」との回答が過半数を超える状況になったのだが、その過程で、民主党の小沢一郎代表も「安倍政権の下では憲法を変えない方が良い」との方向を打ち出していた。私たちが「アベ九条9条改憲に反対」と掲げるのはこうした経緯の中での一致点を大切にしたもの。市民運動が、バラバラになっていた組合をつなげ、各政党の一致点を大切にする
運動を拡げたことが大きな力となり、その年7月の参院選で与野党が逆転した。
 それでも続投する構えを示した安倍首相は、9月に日米首脳会談でアメリカのブッシュ大統領からアフガニスタンへの自衛隊派遣を求められた。しかし、当時の市民運動を背景にして、法制局から「アフガニスタンには自衛隊を派遣し得る非戦闘地域はない」とされ、退陣に至った。
今回と同様に、アメリカの要請に応えられないことによる辞任だが、私たちの  運動がそのように追い詰めた結果でもある。
 
Ⅲ 「安倍九条改憲」を阻止した市民と野党の協働
 
 (1)2009年9月の政権交代と辺野古新基地問題
    アベ首相の退陣後、福田、麻生の短期政権が続いたが、2009年の総選挙の結果により民主党・鳩山政権が誕生した。しかし、辺野古基地問題についてのアメリカ側の攻勢の中で、分断に追い込まれて辞任をした。
 
(2)菅直人政権下での「3.11」の発生と第2次安倍政権
    鳩山政権に続く菅直人政権の時、2011年3月11日の大地震と原発事故が発生。政権を支える勢力である連合の主力=電力労連との間で、原子力政策をめぐる立場の違いがあり、そうした背景による経緯の中で退陣した。
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 2012年に第二次安倍政権が発足、「任期中に憲法を変える」と目標に掲げた。アメリカから集団的自衛権の行使を強く求められ、2014年に憲法違反とされていた集団的自衛権の行使(アメリカと一緒に軍事行動をすること)について、閣議決定だけで容認するという暴挙を行った。そして、これをできる軍事組織として自衛隊を変質させるため、2015年に安保法制を閣議決定した。
 
(3)「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の結成
市民運動も大きな転換をし、2014年の年末に「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が発足。今回、学術会議への任命を拒否された6名は、こうした動きの中でも発言をしてきた人たちである。
    また、閣議決定だけで九条を壊すという動きを許さない立場で、①「解釈で9条壊すな実行委員会」が結成され、それまで「原発やめろ」と声を上げていた官邸前行動とも連携して集会が開かれるようになった。こうした中で、②「戦争させない1000人委員会」=連合系、③「憲法共同センター」=全労連系などの活動も進んできた。そして、①~③の三者が共同して「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の発足に至った。
 
(4)2015年「安保法制」反対の運動と市民と野党の協働 ※注参照
それまで別々に開かれていた5月3日の憲法集会も、2015年以降、東京では一緒にとりくまれるようになり、野党も協働するかたちになっている。 また、毎週の国会前行動は、木曜日に総がかり行動実行委員会、金曜日は6時30分から反原発、7時30分からシールズの集会が開かれるようになった。
   こうした中で、集会の場では壇上で野党が手をつなぐ気風がつくられ、市民の力が野党共闘にも結びついている。安保法制が国会に提案された時、国会周辺では「野党は共闘!」という大きな声が挙げられ、そうした動きが一人区での野党共闘にも結びついていった。
 
 Ⅳ 改憲発議をめぐる菅政権の危険な策動
 
 (1)2017年5月3日「日本会議」集会への安倍メッセージ
    野党の分断も一つの課題とした安倍首相は、2017年5月「日本会議」の集会にメッセージを送り、憲法九条の条文に手を付けない形で「自衛隊を明記」するという公明党の主張に沿った「加憲」案を示した。
 
 (2)九条に自衛隊を書き込むことと「戦争法」体制
    このメッセージは、すでに安保法制を成立させていることから、自衛隊を憲法に書き込めば、9条の文言を変えなくてもアメリカと一緒に行動する集団的自衛権の行使をする憲法解釈が可能になるという立場に立ったもの。こうした中、小池東京都知事が安保法制を容認する立場の「希望の党」を立ちち上げたことから、民主党の分裂と立憲民主党の発足という事態が生まれた。
ここでの「立憲」とは、憲法を守る立場が明示されたものである。いま、菅政権は、自衛隊を憲法に書き込めば、安保法制によっていつでもアメリカと共に行動できるとの立場で、期限を区切らずに、しかし着々と9条改正の動きをつくろうとしている。だからこそ、この時期に、学術会議の中でも安保法制に反対した人文科学系の6人の学者を除外したと言える。
 
 (3)「敵基地攻撃論」と「集団的自衛権の行使」容認論
    菅政権は、この時期に大学の軍事研究に着目をしている。かつてイギリスとの2国間軍事同盟にもとづき、集団的自衛権による敵基地攻
撃の名でイラクを攻撃したアメリカは、今、それをアジアでやろうとしている。北朝鮮から日本に向けてミサイルが発射されることに備え、日米安全保障条約=2国間軍事同盟にもとづく集団的自衛権による敵基地攻撃を想定。液体燃料から固形燃料へ移行する中、宇宙からの監視のため自衛隊に宇宙軍も設けた。
    そして、軍事研究を重視する中で、「そうした研究はしない」という立場の学術会議を敵視したものと言える。
 
 (4)改憲に向けた「議論」促進をたくらむ菅政権
    もちろん、菅内閣が着々と9条「改正」をめざしていることは言うまでもない。
 
 Ⅴ 市民と野党の協働で政治の転換を
 
(1)市民連合による立憲野党との政策協定
こうした状況を転換するため、2014年から積み重ねてきた市民運動の媒介で、いろいろな対立や分裂をしてきた立憲野党(憲法を守る野党)と市民連合が、それぞれの地域で政策協定を結び、統一候補を立てて、次の総選挙に臨むことを目指している。愛知でも、憲法を守るという一致点での動きをつくって欲しい。
 
(2)新型コロナ対策と、急がれる「コロナ禍」への政府対応
新型コロナ対策では安倍政権も菅政権も無策。国民はマスクをして対策をとっているが、菅政権は「自助、共助、公助」と言っている。しかし、医療だけを見ても「自助」で済む事柄ではず、今の政権では国民を守ることはできない。
 
(3)日本社会を再建する新たな市民運動の方向性
「再建する」と言うのは、今の社会は壊されているという意味。零細企業、中小企業、若者、学生など、様々な人たちの労働、生活の場面が壊されている。これを再建する市民の運動を造っていく必要がある。「九条の会」もそれぞれの場面で、耳を傾け、話し合える活動を進めたい。
 
(4)いつでも選挙で勝利できる市民と野党の協力体制
一年以内には必ず選挙となる。市民と野党の協力を強めていこう。
 
注/「安保法制」=「安全保障関連法制」
次の2法からなり、日本を「戦争できる国」にする「戦争法」と言われる。
① 平和安全法制整備法=自衛隊法など10の法律を「改正」。日本の「存立危機事態」
に対処するとして、米軍等を支援する自衛隊行動等の拡大を定めている。
② 国際平和支援法=「国際平和共同対処事態」への対処とする活動を定めている。
以上/文責:太子九条の会 石川 11・8