■「その枝に この胸に」
冬
ためらいにためらいを重ね
何度か部屋に戻りながら
やっと
枝を切った
寒風のせいだろう
手が 震えていた
あとで
少なからず 泣いた
あの夏を 切りたくなかった
花つきが悪くなっても
鉢植えは
戴いてから十年以上になる
何度か枝を切り戻したが
ここまで思いきったのは
多分 初めてだ
おもいきらないと
いけない と
寒さに 震える手で
夏
去年には
ほとんど花をつけなかった鉢は
戴いてから この十年
なかったほどに
紅く 紅く 咲き乱れている
間違った事を
した覚えは ない
ないのだけれど
おもいきらないと
ならない と 切迫した思いは
その夏に
愛している と
過ちのように刻んだ思いは
そんなはずじゃないほどに
このまま
終わるはずだったのにと
もう咲かないと
信じた冬を裏切るほどに
紅く 紅く
狂ったように
咲き乱れている
切り戻した その枝に
切り落とした
この胸に
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