▼「簡単に消え去る日」 | Silver_Arrow_74

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▼「簡単に消え去る日」

次々に
君が消えてゆく


最初に
君の心が消えた

君がもうここに
なに一つ
思い入れがない事を
まだ暑い時季から
僕は気づいてた

企画書に
既読の署名を入れなくなった頃
と 言うと
「いや、もっと
ずっと前からです」
と 君は呟くように言ったけど

僕は
色んな意味で
君の署名を注意深く見てたから
正確な時期を答えられた

「ああ、じゃあ、
その頃かも」

なんの屈託もない君の笑顔が
僕を
蹴り倒すように
淋しくさせた


その次に
君が消えた

至極 普通に
仕事を終えて
明るい場所へと
ドアを開いて

気づいたら

もう
いなかった


シフト表から
名前が消えた

新しいシフト表になれば
それは当たり前の事だけど

僕は
君の名前のない
勤務日程の写メを撮るのが
いいようもなく
つらかった


制服が消えるのは
遅かった

退職者の制服が吊されてる期間は
オーナーの未練がましさと比例している
女王気質の彼女は
偶然よおぉ
って 笑うだろうけど

退職当日に
存在しなかったように片された制服を
僕は 何枚も 何枚も見てきた

その反面
失いたくなかった人達の制服が
いつまでも吊されてるのも

たとえ その本人が
もうこの国にいなくても

君の制服は
あの みんなから愛されていた王ちゃんや
頼りにされてた李さんを抜いて
最長不倒記録を樹立してしまった

けれど やはり
ある日 カラのハンガーが
残されていた


おそらく同じ頃
モニターの君の画像も
消えている

もう一度 見たくって
見られなかった 君の映像が
永久に

現実的には
見ようにも 見られなかった

休憩もろくすっぽ取れないような
ろくでもない状況が続いていたからだ


そして
制服から外されていた
君の名札が消えた

これも
北壁に溶け残る雪のように
長い事
機器類の横に置かれていた

見るたびに
苦しかった

記念に下さいとオーナーに言えば
ほいよ と貰えたんだろうけれど

ここ、辞めたら
名札、頂戴!!
って 君に言った時
君は
ダメです
って即答したから

ビリビリに破ります
って
君にしては珍しいくらい
強い口調で
怒ったみたいに言ったから

約束通り
僕は、君の嫌がる事はしない

出勤して
カラになった名札ケースを見た時に
内蔵を鷲掴みにして捨てられたように
ギシ っと体が軋んだ


次は
何が
消えるんだろう

何が消えても
消えゆかない物があるのに

君がいなくなってから
僕は 悲しくならないように
君の名前を
職場で一切 口にしなくなった

君がそう望むなら
忘れたふりくらい簡単にできる

今までの誰かの時もそうしたように
もう次を見つけたふりも
慣れている
けど

君の痕跡が
次々に消えるのに耐えかねて

いつまでも
僕一人
未練たらしく立ち止まっている
そのみっともなさが悲しくなって

ブログの記事を
全部 消す日が来たとしても

約束じゃなくても
君の嫌がる事は
できない
ように

君に誓った訳でなくても

自分に誓った訳でなくても

誰に誓った訳でなくても

君に激しく嫌悪され
忘れたような
もうどうでもいいような
次を見つけたような
ふり をするしかない
日が来ても

忘れたふりの裏側で

僕のなかの
君は消えない

君が職場に
「僕を含めて」
なんの思い入れもない事に
最初に気づいた
夏の日から

僕は
この日を覚悟していた

僕のなかの
君が消えないかたわら

君のなかの
僕が

カンタンに

消え去る日




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