▼「君に会えない日」
君がいなくなる日がはっきりする前の
君に会えない日は
比較的落ち着いてて
ぐらぐらしっぱなしの気持ちが
少しだけ軸足取れてた
今も
君に会えない日は比較的落ち着いてて
軸足取れてる
こないだ販促物展開してて
気づいたらお客さんいなくて
スタッフもトイレこもってて
フロアに一人っきりで
しばらくぼんやり突っ立ってた
声に出したりしたこと
なかったのに
君の名前を
大好きな君の名前を
ちっちゃな声で
繰り返し
呼んでた
陳列棚を曲がって君が現れて
カウンターで君が鼻歌歌ってて
スィングドアから君が走ってきて
あちこちに
あちこちに
君がいて
僕を呼んでくれてる
みぞおちのあたりが
キューーーー って
痛かった
泣きそうになったけど
泣いたりしなかったけど
そのあと普通に
笑って仕事してたけど
お疲れ様でしたって
笑って帰ったけど
ただいまって家に入った途端
泣き出してた
そんな事なかったのに
声を上げて
しゃくりあげて
子供みたいに
えーんえーん って泣いた
行かないでって
置いてかないでって
一人にしないでって
ひとりぼっちやだ
もうひとりぼっちになるのやだ
おいてかないで
ひとりぼっちこわい
もうひとりぼっちこわい
おいてかないで
ぼくまたひとりぼっちになっちゃう
もうやだ
おいてかないで
もうひとりぼっちこわい
自分がなに言ってるのか
わからなかった
言ってる意味がわからなかった
全部吐き出してしまうように
泣きやんで
しばらくしてから
からっぽの心で
ゆっくり理解した
それが本心だったんだ
静かな気持ちだったけど
ひどく驚いていた
誰といても
片思いでも つき合ってても
結局 僕は
ずっと一人だった
会えなくなっても
振られちゃっても
心のどこかで
ほっと肩の荷を下ろしてた
あとは一人で泣いてりゃいい
慣れてるし
気がラクだ
もう悩む事も苛立つ事もない
なのに
君といて
幸せすぎて
僕は
生まれてはじめて
一人じゃない気がしてしまってた
君がいなくなる事を
肩の荷を下ろすどころか
果てしなく
恐がってたのは
そのせいだったんだ
眠ろうとして
なんだかおかしくって
笑ってた
片思いのくせに
気持ちも伝えてないくせに
友達ですらないくせに
離職したら会いたくないって
笑って言われてるくせに
どこでそんな錯覚が始まったんだろう
一体全体
いつからそんな勘違いしちゃったんだろう
目を閉じて
くすくす
笑いが止まらなくて
笑いながら
ぽとぽと
ぽとぽと
涙が枕に落ちてく
あれから
君に会えない日は
帰り着いた途端
泣いちゃうけど
軸足取れてきてる
長年のお客さんも友人も
家族ですらも
そう信じている通り
僕は一人で大丈夫
あいつは結局
一人がラクなんだ、
一人が好きなんだ、
って思ってる通り
僕は一人で大丈夫
僕の中に
ひらがなで泣きじゃくっている
小さな
幼稚な子供がいて
職場のあちこちに
君の幻影を映し出す
しばらくは泣いたとしても
僕は大丈夫
君が、くれた
こんなに長く生きてきて
生まれてはじめて
ひとりぼっちじゃない錯覚を
君が、くれた
ひとりぼっちじゃない
夢を
生まれてきて
はじめて
君が、
君だけが、
僕に くれた
-',,-