「もしも水を抜かれたら」
真一文字に口を結んで
わざと少し斜めに顔をそむけ
反対側に視線を投げて
肩をゆったり揺らしながら
脇を抜けられる
疲れてる
体調よくない
機嫌悪い
怒らせた
不愉快
怒ってる
口ききたくない
嫌い
顔見たくないんだ
嫌われた
きっと もう 一生
うずくまって
泣きたい
遠くのドアが開くと
初夏の
グレープフルーツみたいな笑顔と
冬間近の
ココアみたいな声で
大きく名前を呼んでくれる
しゃがみこんで
泣きだしたい
目で追いかけたりしない
けど
遠くにいると
背中が気配を探してしまう
真正面で近すぎると
有刺鉄線があるように
気づかれないよう後ずさってしまう
本当は
意地悪されたり
冷たくされると
一番いけない毒にあたったように
体の真ん中から
悪い痺れに
座り込んで
しまいそうになる
腰の回りに力が入らなくて
もうずっと
真っ直ぐ普通に歩けない
水槽の浮力を借りて
やっと姿勢を保ってて
もしも水を抜かれたら
きっと
水から出された魚のように
のたうちまわって
終わってしまう
-'16,08,20-