レシート | 都市伝説Navi

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最近は、ホラー・ミステリ系のゲーム制作、スマホゲーム、ペットの話等々。

A君は早起きでした。
いつも道端で掃除をしているお爺さんに挨拶をして、
まだほとんど人がいない道を学校まで歩いていくのを日課にしていました。

その出来事があった日も、A君は目覚ましが鳴る前に目を覚まし、
少し霧がかかった中、学校へ向かいました。

ちょうど半分ほど歩いた頃です。
A君はゴミ捨て場にカラスが群がっているのを見つけました。
A君が近づいていくとカラスはほとんど逃げてしまいましたが、
あたりには、ゴミが散乱しています。

A君は考えました。
「このままにしておくと、きっとおじいさんが困るに違いない」
その日はたまたま理科の授業で、野菜を見に行くことになっていたので、ランドセルには軍手が入っています。

A君はそれを取り出し、散らばったゴミを、ゴミ袋に詰め始めました。
しばらくして、ゴミはほとんどなくなりました。
最後は落ちていたレシートを袋に入れれば終わりです。
レシートは変わった色をしていて、文字が非常に読みづらくなっていました。
A君が読めたのは、接着剤50円という部分だけです。
「安いなぁ」
今度工作をやるときには、そこで買おうとA君は思いました。


次の日になりました。
A君はまた、1人で学校に向かいます。

「おや?」
昨日の場所を通りがかると、またゴミが散らばっているのが見えました。
ただ、昨日ほどは量は多くありません。

「仕方ないなぁ」

片づけていると、驚いたことにまたレシートが見つかりました。
レシート自体は珍しいものではありません。
A君が驚いたのは、昨日のと同じように、変な色をしていたためです。
レシートには、画鋲が10セットと書かれていました。
「ずいぶん使うんだなぁ」
A君の家には、1年前に買った画鋲がまだ残っています。


さらに次の日、A君は少し期待していました。
今日もまたあの変わった色のレシートを見られるかもしれないと思ったためです。

しかし、残念なことにゴミ捨て場にはすでに女の人が来ていました。
さすがにA君も、他の人の前で、ゴミをじっくり観察するわけにはいきません。
そのまま通り過ぎようとしたとき、

「ちょっと待って」

声が聞こえました。
振り向くと、女の人がこちらを向いて立っていました。
女の人は妙に痩せていて、そしてA君のお母さんよりずっと背が高く見えました。

「ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「何ですか?」

あまり話したくはなかったのですが、A君のお母さんはいつも
「困っている人は助けてあげなさい」
と言っています。
見たところ、女の人はとても困っているようでした。

「あの……カッターナイフの換え刃とか持っていないかしら」

それなら、図工用にいつも持ち歩いています。
カッターは危険なのでハサミを使いなさい、と先生には
言われるのですが、綺麗に切りたいとき、カッターはやっぱり便利です。

A君が快く刃を渡すと、女の人はニマァと本当に嬉しそうに笑いました。
「ありがとう。もしよかったら、お礼にジュースでもどう?」

ジュースは気になりましたが、初めてあった人ですし、
何より今は学校に行く途中です。

A君が断ると女の人は残念そうにしていましたが、
「じゃ、今度返すからね」と、手を振りながら見送ってくれました。

「早起きすると、いいことがあるな」

A君は気持ちよく学校へ歩き出しました。


A君としては、次の日も、その次の日も、
同じように学校へ行く予定だったのですが、
残念ながら、記録はここで止まってしまうことになります。

とは言っても、欠席したわけではありません。
学校が休みになり、「登校しなくてもよい」
と連絡網がまわってきたのです。

「……ええ、それで。えっ!! そんな状態で……。……接着剤で
!! そんな……惨い……」
とぎれとぎれに電話の声が聞こえましたが、A君にはよく意味がわかりませんでした。
それよりも、学校が休みならのんびりと散歩でも行こう、
とA君は思いました。
けれど、それをお母さんに言うと
「駄目です! 家にいなさい!!」
すごい声で怒られてしまいました。

仕方なくA君はテレビの前に陣取り、何か見ようと思いました。
けれど、いくらチャンネルを代えても同じニュースしか聞こえてきません。

「あれ?」
画面をよく見て、A君は気がつきました。

映っている写真が昨日あった女の人によく似ています。
その事を言うと、お母さんが真っ青な顔をして言いました。
「関係ないから。そのことは忘れなさい」
そして、慌ててお父さんの会社へ電話をかけ始めました。

しばらくすると、チャイムが鳴りました。
お母さんが玄関へと向かっていきます。

けれど、不思議なことにお父さんとお母さんの声が聞こえてきません。

心配になって見に行くと、何故かそこには、あの女の人だけがポツンと立っていました。
そして、

「返しにきたよ」

とカッターナイフの換え刃と、変な色のレシートをA君に渡しました。