おくる辞 | Now or Then

Now or Then

long distance.



わたしが一番好きな詞。






    「おくる辞」


     百瀬博教 






  八月三日 日曜日午後 


  電話が鳴った

  モモセサンイマスカ

  台湾からのパーソンコール


  「もしもし、あ 百瀬さんですか 修ちゃん死んじゃったんです」

  「殺されたのか」

  「そうじゃありません レストランで急に気分が悪くなり
   そのまま倒れたんです」 

  「いくらかかってもいい からだを届けろ 骨ならお前たちを
   殺すぞ」

   七メンドクサイ手続きがあって

   四日目 千葉市松ヶ丘の遺体処理場で

   亡骸と対面した

   腐敗を心配していたのだが

   防腐剤の利いている遺体は綺麗だった

   空輸梱包用のラワンの箱から出させて

   持って行った背広と靴を履かせ棺に移すと

   もうすっかり仏の顔だった

  
   十一年前

   山形の獄まで出迎えに来てくれたお前を

   こんな形で迎えるとは思いもしなかった
 
   俺の下獄中
   一人ぼっちだった妹をもらってくれた
   修 ありがとう

   貴子 孝之 雅貴

   三人の子供のことは心配しなくていい

   想い出に節度のない俺は 生ある限り

   お前を忘れない