それ以降
モロッコに憧れ続けて
20代前半、ラバトに数ヶ月住んだ
あぁ、わたしのルーツは
ここにあるのだと理解して
いまでも人生最後は、タンジェでと
思い続けている
その昔
ジュネの「ある老婆のうた」という
作品をみた。
ジュネに興味を持ったのはこの詩からで
ふと思い立って
その本を探してみたが見当たらない。
気になり
調べてみるが出てこない
あ
と、思い
押入れにしまう段ボールを片っ端からあけて
書き溜めたものを探したら
やはりあった
当時書いた詩
このジュネの詩に
愛を込めた詩。

あの灼熱の太陽はどんなものだったか
閉じた真四角の金魚鉢でいつもそう思う
この金魚鉢を創造したのも僕で
この金魚鉢を此処に運んだのも僕
ということは、この金魚鉢の結末も僕は想像していた?
もはやだれも見向きもしなくなっただだっ広い部屋
もはやだれもこの部屋で太陽のあたたかさなんて思い出せない
そうだ
もはやなにも手に入れることはできず
もはやなににも手を触れることさえできない
君は僕を忘れてしまった?
外では今日もパレードがはじまる
そして様々な衣装を着た勇者たちが今日の人生を謳歌する
群衆は歓喜のなかへ招かれてゆき
飼い犬は野良犬と変わらず餌にありつけない
テーブルに並べられた魚たちはさっさと海に帰り
飼い猫は野良猫と変わらず戻る家がない
外では今日もパレードが
外では今日もパレードが
だれもかれも皆金魚鉢のことを忘れてしまった
この金魚鉢がかってあなたのすべてだったのに
夜は明けた。
すべての夜に勇者たちはそう口にする
頬を赤める君
夜な夜な高騰する紙幣
ダイヤモンドが小石となって路地に転がる
親友は夜だけのもの
愛は世論に支配され
多数決により少数派が束になった
そうだ
僕らは自ら此処にきたんだ
この金魚鉢と
真っ暗なこの部屋にいる人々
遠い昔
僕らはパレードから降りた
扉の鍵は二度と開かない
だれも僕らのことを思い出さない
今日も陽が暮れる
パレードの兆しが遠くの丘から流れてくる
僕らは金魚鉢を選んだ
僕らはかって自由と呼ばれたものを選んだ
僕らは飛べない自由を選んだ
部屋のすみで老婆が言う
自由とはだれに捧げるものぞ、と。
自由とはだれに捧げるものぞ、と