ー常永久ーシンイ二次創作 -6ページ目

ー常永久ーシンイ二次創作

☆信義-シンイ-の二次創作ブログ☆
(小説・イラスト・日記等)
二次創作に嫌悪感のある方はオススメいたしません。




気持ちの行方②




『チェヨン氏に似合う役があるんだが、考えてみないか?』

そんな話をマネージャーから聞いたのは1年前の事だった。
現代ドラマしか出なかった自分に時代劇にも挑戦してみろと彼は話す。


「あまりそういうのは・・・」
『いや、今は色々挑戦した方が良いと思うよ。海外進出を目標にしているんだろう?』
「・・・身体鍛えないと・・・はあ、わかりました」

軽く言うマネージャーに冷めた眼差しを送りたかったが、スマホ越しには無駄だろう。

ため息を吐きつつヨンは通話を切った。


少し前迄の自分だったら新しい役に「頑張ります!」の言葉が出ていた。
だが、最近はどうにも血気盛んに前には出れないでいる。


原因はあの夢のせいだ。


最近どれだけ仕事が忙しくても眠ると夢を見る様になり、その内容の不可解さに寝不足気味になっていた。

最初は朧気で内容は覚えていない。

感覚として残っているのは、自分が生きていく為の術を教え込まれ何かの役割りを担っていた為剣術を学んだという事だったが、自分にどんな使命があったのかは理解出来なかった。
次に感じたのは、絶望感。
憎悪と怒りを押し殺しながら生きていた日々。


――こんな記憶など俺は知らない。


そんな荒んだ家庭にいた訳でも、環境にいた事もない自分が何故こんな苦しい夢を見続けているのか。
何時まで経っても楽にならない夢にヨンはほとほと疲れ、睡眠時間を減らしたいとさえ考えていた。
仕事のし過ぎかもしれない。
少しゆっくりした方が良いのかな?

そんな時に新しい仕事とは―――。

ふあ、と一つ欠伸をして再び布団に潜り込み目を閉じ再び闇の中に沈んでいく。




――ああ、またこの夢だ・・・。

いい加減カウンセリングを受けないとダメなのか?



だが、少し進んだ場面にヨンは状況が多少変化したのだろうと感じた。


古びた屋敷の並びに今の時代では無いとわかる。
中心部の住宅が密集し細く舗装されていない荒い路地を革靴で歩きながら、建物の合間を縫う様に古ぼけた橋を横目に通り過ぎて行くと質素な長屋が並ぶ少し離れた場所に小さな藁葺き屋根を見つけた。
どうやら人気(ひとけ)が無い・・・というよりは、この周辺の家は既に空き家になっており、屋根や土壁などは崩れ落ちている場所もある。

「・・・古いな」

ふと藁葺き屋根がある草の囲いの中から煙が上がっており、誰かいるのだと急いで行くと屋敷に見合ったこじんまりとした庭で何かを焚いている女性を見つけた。

「・・・撮影だったのか?」

着ている衣装ははるか昔の衣装だったが、あの女性に聞いてみようとヨンは屋敷に近付き囲い越しに声を掛ける。
だが、ヨンの声を無視しその女性は屋敷の中へと入って行ってしまった。

「あ、あの・・・すみません!ここは何処ですか?」

その声さえ聞こえないのか、さっさと扉まで閉めてしまう。

「あのー!聞こえませんかっ?おーい!」

少し苛立ち気に大声を上げた筈なのに、屋敷からは誰も出て来ない。

「何だよ。・・・あ、でも夢なんだよな。勝手に入っても大丈夫じゃないのか?」


ヨンはそうかと気付き足を進め、屋敷へと入ろうと足を進めた――。



しかし。


瞬きをすると、そこは見慣れた自分の部屋に変わっていた。



「・・・起きちゃったよ」


――何だよ、あれ。

小さく舌打ちをし、近くにあった目覚ましの煩い音を手を伸ばし止めるとむくりと起き上がった。







「・・・で、また此処?もういいって・・・」

誰も人間が見当たらない殺風景な時代劇の様な町並み。壊れそうな古い橋。荒い砂利道を歩けば唯一いる女性の家。だが此方の存在など見えないのかただ黙々と草を濾し漢方薬らしき物を作っている。
何度呼びかけても自分を見もしないのだから、この夢の中で自分は透明人間なのだろう。

最近では何処かから持って来た椅子を彼女の家の囲いの側に置き、着くとそこで休憩を取る様になっていた。

「本とかあれば読書には良い雰囲気だけどな」

そう言うも夢の中でまで字を見たくはないと、縁側や庭で忙しなく動く彼女を横目で見ていた。
自分が知らないだけでこの女性も俳優だろうか?
整った横顔と白い肌と大きな瞳と。

「・・・ここが何時の時代かはわからないけど、貴女少し髪が赤くないですか?それは大丈夫なの?そんな設定とか?・・・はぁ。・・・ん?」

聞こえてはいないだろうとわかるもやはり声を出してしまう自分が情けないと感じ始めていると、何と離れた町から数人の人間が慌てて走って来た。

「やっぱり人がいるな」

帰りはあの人達に付いて行ってみようか、と考えていたがその数人の様子がどうにもおかしい。
1人を3人がかりで担架代わりの板に乗せ、彼女がいる屋敷へと入って行った。

「ユ先生!お願いします、テスが足場から落ちて腕を怪我してしまいまして」
「まあ大変!早く中に入れて頂戴!」

初めて彼女の声を聞いた気がしたが、随分と高く、しかし落ち着いた声だとふと思った。


数人が騒がしく彼女の屋敷に入って行き、自分は何故この柵から入る事が出来ないのか?と疑問を感じつつも、椅子に座ったまま微かに聞こえる話し声だけを静かに聞いていた。

随分経った頃、
怪我人は再び板に乗せられ外に出て来た。


「ありがとうございます。本当に何とお礼を言うべきか・・・」
「彼は腕の骨が折れてしまって暫く動く事は無理です。腹に刺さった木材は取り除いたけど中も損傷していたから三ヶ月は働けないわ」
「命があるだけ有り難いです。お礼は明日持って来ますので・・・」
「あー、全部お金じゃなくても良いわ。半分は野菜でもいいわよ?」
「良いのですか?わかりました、明日持ってきます」

彼女がふざけた様に言うと数人の村人は笑い、頭を下げ帰って行った。

彼らが小さくなって見えなくなった時漸く自分はあの数人に付いて行く筈がと我に返ったが、そんな事よりとヨンは険しい眼差しを屋敷内に消えた女性に向け離せなかった。


「・・・今、骨折と言っていた?中も損傷だって?有り得ないだろう?」


この時代は建物や服装を見ると朝鮮時代より古くも見える。そんな時代に骨折や内臓損傷などしたら確実に死しかなかった筈だ。
ドラマにしては撮影隊もスタッフもいず、何となく違う時代だろうと思っていた。
だが、彼女の診断はあまりにも現代に近い様に見えてしまう。

――彼女はあの屋敷内でどんな治療をしたんだろう?

しかし、自分だけがこの屋敷に入る事は出来ない。

「何でだ?しかもこの場所もわからないのに」


――入ればきっとこの夢だって終わるだろう。


終わらせたいのか?と自問すると、まだわからない。


それでも、兎に角この謎な空間を明らかにしたかった――。




カチャンカチャン。



何か音がする。

屋敷の中から聞こえるそれは古ぼけた藁葺き屋根には不似合いな程の、
金属が合わさり響き合う・・・。

一瞬聞いた事がある音だと感じ、

「・・・いや、まさかな」

思わずヨンの口から否定的な言葉が漏れる。

きっとこの先に行こうとすれば夢は終わるだろう。
でも、少しでも良い。
彼女がいる場所に近付きたい。
ヨンは木製の柵に手を伸ばした――。









「チェ氏、寝不足ですか?くまが・・・」
「気にしないで下さい。大丈夫です」
「はあ・・・」


あれから時々見る夢はやはり同じ場所、人物で、必ずあの女性が出て来た。

偶に顔を外に向けるので声を掛けたが、自分を通り越し遠い空を眺めているだけだった。
だが、わかったのはやはりあの時代は何かおかしい。

いや、あの女性が、だろうか?

物も建物も時々来る村人もけして裕福では無いのに、彼女の周りだけが自分が見知った何かを見つけるのだ。
綺麗に編まれた籠だったり、整理整頓された薬箱だったり。町を歩いても周りには見当たらないのだから、きっとそれは彼女が誰かに依頼し作らせた物なのだろう。

あの女性の屋敷だけが何となく浮いている様にも感じていた。



「・・・まだイベントまで時間ありますよね?少し寝ようかな」
「10分前には起きなよ?」

同じドラマに出る先輩から声を掛けられ、ハイと返事をしヨンは自分の控え室に戻って行った。

「短い時間じゃ夢も見ないな」

仮眠程度では駄目だったかと戻って来たヨンはメイクを直し、
新しいドラマに出演する俳優達と共にイベントステージへと向かって行き――。




――・・・え?




集まった観覧席の中にあの女性を見つけた。




③に続く
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