底から③
最近寝覚めが良くない。
日に日にあの夢を見る機会が増え、だがその内容は禍々しいものに変化していく。
二人でよく鍛錬した場所にメヒが佇んでいるが、その姿は最期に見たあの中身が空洞になった姿だった。
それでも彼女は言う。
『懐かしいわ、ここも二人だけの場所よ。覚えてる?』
「・・・ああ。・・・」
だが、“覚えている”とは口から出なかった。
はたして自分が覚えているのは、こんな姿のメヒと鍛錬した場所だろうか?
浮き足立つ中、集中出来ない程に木漏れ日の様に穏やかな空気を浴びていた筈だった。
「・・・昨日、王様に先王からの約束したモノを渡して来たよ。渋々ではあったが受け取って下さった、だから俺はもう王宮を出る」
徳成府院君キチョルが王様を狙った事は尋問するまでもなく明らかだった。
王様の無事を安堵したと言いつつ、王宮で遊宴を開く態度はあからさまで頭を垂れるキチョルを見る王様の眼差しは冷めている様だったが、自分は襲われた王妃を治す医者を連れて来た。
その者は無事王妃の息を戻す事が出来た。
もう全ての任務は完了しているではないか。
ヨンは歩きながらそう考えていたが、ふとずっと背後を付いて来るテマンに気付いた。
「何だ?」
「・・・な、何もないです」
忙しなくキョロキョロと頭を振り返事をする姿は何時もの事だが、何故か少しの違和感を感じてしまった。
「何か報告か?」
あの女人は典医寺にチャン侍医と一緒に向かわせていた筈だが・・・。
まさか何か?
テマンは女人の事では無いと言い、ヨンが先王からの書状を渡したのか?と尋ねて来た。
「・・・ああ」
「た、隊長」
「大丈夫だ。お前の事はチュンソクに任せている」
「お、俺はずっと隊長の傍にいたいです!」
「・・・ただの平民になる俺だぞ?」
「お、俺はずっと隊長の傍にいたいです!」
「・・・ただの平民になる俺だぞ?」
「で、でも・・・」
「王宮内の方が良い暮らしが出来る。前みたいに山の中走り回って飯を探す必要も無い」
「け、獣も魚も俺は平気です!」
「・・・」
そうではない。
しかし、ヨンが言葉を出す度に彼を突き放す事しか言えず、とうとうヨンは小さいため息を吐いてしまう。
「・・・勝手にしろ」
再び歩き始めたヨンの背中を追う様にテマンもまた歩き出す。
「・・・・・」
テマンはあの時感じた違和感を思い出していた。
誰も気付かなかっただろうか?
隊長は常に言っていた。
「女など作るだけ無駄だ、剣に迷いが出るだけだ」
過去に何かあった事は隊長の剣に巻き付けている布を見れば明らかで、おそらく何かがあったのだろうと殆どの隊士達は気付いている。
だから、余計に隊長が天界から女人を連れて来た事に驚愕した。
更に逃げた女人が拐われてしまった時、隊長の判断が何時もより鈍くなった。
それよりも。
何時の隊長は拐われた者より任務を優先していた筈なのに、王様達を隊士達に任せ隊長自ら外に出て行ったのだ。
探しても見つからない時は市井から離れるのを躊躇している様でもあった。
「何よ!帰してくれるって言ったじゃない!嘘つき!」
憤怒の瞳を隊長に向け叫んでいる天の女人を見つめる隊長の横顔は、あまり見た事が無い程に辛そうだった。
剣を腹に受けた時も、治療すると女人の指示で運んでいる時も隊長は女人に対し怒りを少しも向けなかった。
「イムジャは、気にしないでくれ・・・」
隊長の言葉に怒る様に止めどなく言葉を吐き続ける女人を黙らそうとしたが・・・。
「静かにしてくれ・・・」
「うるさい!私の声を聞いて意識を失うんじゃないわよ!」
「・・・・・」
目を丸くした隊長は女人の顔を見つめた後、小さく息を吐いて――。
「・・・好きにしろ」
そう言った。
「・・・どうして誰も気付かないんだよ。絶対何時もの隊長じゃなかっただろうが・・・」
隊長が天界に向かい、数ある医者の中からあの女人を連れて来た事に意味があるとしたら・・・。
隊長が王宮を去るのはいけないんじゃないか?
しかし三日後、
チェヨンの迂達赤隊隊長の役目を外す勅命が王様から下りたのだった――。
④に続く
△△△△△△
隊長の役目降りちゃった。
🐥🐥🐥🐥🐥
お久しぶりです(*^^*)
3月に家族のあれこれと忙しく、ぼちぼちと趣味とリアルの仕事も継続で・・・更新が中々できませんでした💦すみません〜。
寒いと思っていたらいきなり暑くなったりと体調もおかしくなりますよね・・・(⑉• •⑉)
皆様もお気をつけて下さいませね。
推しグルのツアーも行きたいですが、
美容関係のイベントも行きたいと思っていたり・・・。
春に両方あるって・・・( ˊᵕˋ ;)
またお話の資料に役立てたら嬉しいなと・・・♡
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🦌🦅🦮🐧🦊🐈🐥6月来日〜❣️🎤🎶
