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ー常永久ーシンイ二次創作

☆信義-シンイ-の二次創作ブログ☆
(小説・イラスト・日記等)
二次創作に嫌悪感のある方はオススメいたしません。




Insensitive【前】






「俺、結婚する事になりました」


 週末の夜は仕事終わりの客でどの店も賑わっている。
 江南区に新しく出来たという焼肉屋もまた店員の声と客の騒音で時々話が聞き難かった。
だからか、4人がけのテーブル席を2人で占領し注文したビールを口元に持っていたウンスは、一瞬正面にいるヨンの発言が聞こえなかった様でそのままグビリと飲んでいる。
 はぁーと満足気なため息を吐き出した後、顔をヨンに向けてきた。 

「え?何?」 
「だから、俺、結婚するんです」 

そこで漸くグラスを置こうとしたウンスの手が止まり、そのまま動きが止まってしまう。 

「は?結婚?」 
「はい」
 「へぇー、チェ先生彼女いたのねぇ?」
 「いません」
 「へ?」 
「まぁ、ていうか“するかも?”が正しいかなぁ。お見合いするんですよ、両親に薦められて」
 「あー・・・」

 ウンスもまたそんな話を振られる1人で、母親からは
「何時孫が見れるのかしら?」
と帰省する度言われ続け三ヶ月が半年、半年が一年と徐々に帰省も減り始めていた。 

「チェ先生は1つ下よね?まだ30になっていないけど・・・」
 「そもそも20代後半になった段階で執拗くなりましたが」

 ―――確かに私もそうだったわ。

 「チェ先生の事だから、きっと申し込みが殺到していたのね」

 韓国でも由緒ある崔家は数百年続く名家でもある。
政界の繋がりもあるとの噂もあって、病院内でもヨンに対する上層部や職員の接し方が他の医師よりも微妙に違うとウンスは知っていた。
ただ、はたして彼はそれを自覚しているのか、又は知らずに働いているのか?
だとしても本人が言わない限りウンスもまたそんな話を出すつもりは毛頭なかった。

 「来なかった訳では無いですが・・・、見たのは最初だけで今じゃ見ずに断っていたから」

 最初は見合い写真や連絡が来る度、そわそわと浮き足立っていた。 
しかし、ヨンの予想とは違く崔家の話ばかりしてくる相手に困惑し始めていく。

 ――見合いってこんな感じなのか? 

だが、次の見合いもまた同じ。 
「チェさんは会社の後を継ぐんですか?」

 ――どうして俺が、叔父さん達の会社を継ぐんだ?

 チェ家の親族は国で有名な製薬会社も経営しているが、そこは父親の妹夫婦の会社でありヨンは一切関係が無い。そもそも父親は貿易商であり、一応共同経営者に入っているが会社の権限はあまり無いに等しい。
全てが全て、チェ家のものという訳ではないのだが・・・。
 だから、 

「いいえ、私は医者を目指していますので。会社は親族が信頼している部下が継ぐのではないでしょうか」

 すると、決まって相手は微妙な表情に変わっていく。

 ――どうせ、チェ家を継ぐ気も無い男と結婚して得はあるのか? 
“否”なのだろう。

 何の目的で見合いに来た女性なのか? 
既にその時から疑心暗鬼になったのかもしれない。

 「まあ、チェ家に子供は俺しかいませんし、親族がこぞって薦めて来るのは覚悟していましたが・・・」 
「それも、わかるわ」

 頷くウンスもまたユ家の一人娘で、家庭環境は別として立場はよく似ている。
 ヨンは空になったグラスを置き憔悴したため息を吐きながら、小鉢のキムチを箸で力任せに刺した。

 「別に今が不幸せなんて思っていないし、仕事にやり甲斐も感じています。仕事は大変だけど仕事仲間にも恵まれてるから・・・もう他に希望は無いんですよ」 
「うんうん」 
「でも、周囲から見れば1人は寂しく見えるんでしょうか?」 
「うーん・・・」

 ヨンの言葉はウンスにとっても突き刺さる程に痛い。徐々にウンスも肩が下がっていくが我に返ると「大丈夫!」と声を上げた。 

 「チェ家に来る人よ?きっと皆ちゃんとした人だと思うわ」 
「はあ、そうですかねぇ」
 「そうよ!運命の人に会えるかもしれないわよ?」

 と言いウンスは新しいお酒を注文した――。







 「・・・“大丈夫”?何が大丈夫なのか」


 ヨンと別れたウンスは自宅に着くとフロアにバッグを置きそのまま床に座った。
 秋も終わり冷たい床が何時より気持ちが良かったのは多めに飲んだアルコールで軽くめまいがしていたからか。
 ・・・まさかそんな話になるとは。 
とはいえ彼も成人男性、恋人の1人や2人はいただろう。
しかも、あの顔なら女性が寄らない訳がない。
 先に病院にいたのはウンスの方だったが、入って来たチェヨンを見て感じたのは「この人には負けたくない」だった。
 ウンスの負けず嫌いの気性が彼を敵として判断し、それもあり暫くは関わろうとしなかった。 

だが、数ヶ月経った頃。 

「すみません、ユ先生がユンさんを担当するんですか?」

 廊下でいきなり声を掛けてきた彼に目を丸くし、見返すと少し上から見下ろしているチェヨンは再び同じ言葉を出してきた。 

「はい、それが何か?」

 確か、入院初期は彼が担当していたが、症状が軽くなった事で他の医師に回されていた。

 ――それが私で不満なのだろうか? 

声を硬くし構えたウンスにチェヨンはいいえと言い、 
「ありがとうございます」 
「はあ」 
「失礼します」

 そう言うと彼は長い足を大股に広げ足早に去って行った。 

 「・・・何だったの?」

 片眉を上げたウンスは暫くチェヨンの背中を眺めていた――。

 思い返しても彼とのきっかけを上げるならそれだと思う。
 病院内でのありきたりな短い会話で2分も経たない時間だったが、何故か彼を敵としていた自分があまりにも幼稚に見え恥ずかしかった。
 警戒心だけ高くなり、変なプライドで直ぐに壁を作る様になった自分が本当に嫌だ。 

 それから偶にチェヨンと話す様になり、
気付けば仕事終わりにご飯を食べる仲になっていた。 

 「1人で食事は寂しいので」 

なんて言葉をお互い何時から言わなくなったのか。
 ・・・いや、言わないから何?

 ――そうか、私も自惚れていた1人なのだわ。

 何時の間にか寝転がっていたウンスはそのまま腕を組んで、天井を見上げた。 

「結婚を焦っていたのは私の方だったのね・・・」

 近くにいる大チャンス。
 しかもとびきりの上玉。
 ・・・などと愚かにも考えていたのだわ、私は。
 だが、自分の意図は見事に外れ彼の眼中にさえ入れていなかった。 
1歳差が何だ。 
大丈夫な筈。
 どこにそんな根拠があったのか。

 ――あぁ、自分が恥ずかしい。 

 「・・・何て、情けない」



 まともな恋愛などした事無いウンスが今から逆転出来るものは、何も無かった――。










 あれから数日経ち、再びヨンが声を掛けてきた。


 「ユ先生、今日の夜は時間ありますか?」

 何時の誘い文句。

 だが、己の気持ちに気付いた今、
自分の中では返し難いものに変わっていた。

 「・・・ごめんなさい、今日は用事が出来て」 
「そうなんですか?あぁ、では明日は・・・」 
「明日もちょっと・・・」 
「そうですか。また話を聞いて貰いたかったんですが・・・」

 ――話?この間の見合いの話?
 何故私が聞かなくてはならないの? 

 「あー、この間の。決まったの?」
 「まぁ、週末会う約束になりましたが・・・」
 「へー、良かったじゃない」

 ちゃんと喜んだ声だっただろうか?
“大丈夫”と言ったのはウンスなのだから、ここで更に背中を押さなければならない。 

 「・・・だから、その前にユ先生と話がしたくて―」 
「何で?」

 即答で返したウンスにヨンはパチリと瞬きをした。

 「いや、話が長くなってしまうので、だから夜に・・・」 
「だから、用事があるんだって」 
「・・・では、電話して良いですか?」 
「は?」 
「どうしても話がしたいんです」
 「無理よ」
 「・・・」 

ウンスの拒否にヨンは口を閉じてしまったが、彼が週末に会う約束をした段階で考えは前向きに進んでいるのだから、こちらの余計な考えは言わない方が良い。 
・・・なんて、自分に都合の良い考え。 

 見苦しい女を少しでも見せたくない、昔からある変なプライドが再び姿を出しただけ。 

 「とにかく、週末頑張ってね!まあ、チェ先生なら直ぐ成功するわよ!」

 彼の腕を軽く叩き、ウンスは小さくファイトポーズを作るとまたねと手を振る。


 ――私は何してるんだろう。


 彼に背を向け、吐き出しそうになるため息を飲み込みながら、ウンスは歩きだした――。 





 「何よこれ、寒いー!」
 「おはようございます、ユ先生。本当にいきなりですもんねぇ」

 病院に着くなりウンスの疲れた顔を見た同僚は苦笑混じりに返事をした。 
いきなりの寒波は連勤で何の用意もしていなかったウンスには辛く、急いでクローゼットから冬服とブーツを引っ張り出し外に出たのだが、靴より積もった雪の高さに愕然となった。 

 「はぁ、・・・帰りまで靴が乾けば良いけど」 

病院に置いていた予備靴に履き替え更衣室から出るとまだ同僚がいて、どうやら彼女はウンスを待っていたらしく徐ろに話しが始まった。

 「ユ先生知ってます?」 
「何が?」 
「チェヨン先生、お見合いしたんですって」
 「・・・それ、誰が言ったの?」 
「え?チェ先生ですが」 
「あ、そ」

 おそらく上手い具合に話が進んだのだろう。
彼自ら話す程良い手応えだったのか、それとも好みの女性だったか。なら、嬉しくて周囲に話したくなる気持ちもわからないでもない。 
それでもウンスの内心は荒んでしまう。


 しかし。


 「どうやら、とんでもない状態になったとか」 
「はい?」
 「途中から女性と言い合いになって、女性が怒って帰ってしまったんですって。・・・彼って女性には誰にでも優しい人だと思ってましたけど、意外ですね」
 「え、ええ、そうね」

 ――え?本当に?

 確かに彼が女性を怒らす事は一切した事がない。
女性だと卑下せず邪険にも扱わない為、院内でも人気が高い。
 そんな彼が初めて会った女性を怒らすとは・・・。

 しかも、それを自ら他人に話すとは。
 彼はそんな人だったのか?

 「意外ね・・・」 
「えー?ユ先生がそう言うんなら本当に珍しいんですね」 
「ど、どうして?」
 「ユ先生、チェ先生と仲良いからそんな一面も知っているのかと思ってました」
 「見た事ないわ」
 「・・・というか、よくお見合いしたなぁと私は思ったんですが」 
「そりゃ、彼ももう30歳になるし、そろそろ―」
 「そういう事では無くって・・・え?違うんですか?」 
「何が?」
 「てっきり、お2人は“恋人同士”だと思っていたんですが・・・」 
「・・・は?そんな事、ある訳無いでしょう?」 

傍から見ればそんな感じに見えていたのか。 

しかし、あの崔家の跡取りよ?
 田舎の農家の娘が行く所では無い。 
チラッとでも考えた自分がバカだと最近思い知ったばかりなのに・・・。 

 やはりスタッフルームに入ると、その話で盛り上がっている。
 ウンスは同僚に向き肩をすくませ自分のデスクに座ったが、気持ちが沈むばかりで飲み物を買いに行くと結局その場を離れた――。

 今年に入ってからウンスは外科から美容整形外科に移っていたが、それは限界を感じたからではなく次の準備の為だった。
 実はウンスは数年後には独立したい夢があった。 
確かに外科の中での女性地位はまだまだ低く中々昇格は難しい上、金銭面の差だっておそらく違うだろうとわかっている。
 現状に不満がない訳ではないが、元々ウンスは医大の研究棟に籠る様な人間で新しい細胞膜やヒト幹細胞、動物幹細胞を美容や医療に使えないかと日々顕微鏡を覗く女だった。
それが、今漸くスキルを使える日が来るかもしれない。そうすればきっと、今までしてきた事が無駄にならない。 

 「はぁー、でも、まずは資金提供してくれる人を探さなくちゃ・・・」 

どうしようか?
もう今から動こうか? 
きっとここにいても辛いだけだろうから・・・。



 「おはようございます」


 聞き覚えのある声に、持っていた携帯電話を落としそうになった。 
背後から聞こえた声は確実に自分に向けられたものだとわかっている。
だが、どういう顔を返せば良い?
ゆっくりと振り向いた自分の表情は大丈夫だろうか、と考えていたのだが――、 


 「ユ先生、今日の夜お時間ありますか?」 

聞いてくるのは何時の言葉で。 

 「え、あの」 

彼はお見合いが失敗したのだから、少なからず気落ちしているのだと思っていた。
それに、自分がもう彼と前の様には話せないだろう、再び断るつもりで顔を上げた。 

 「この間の話の続きなら、ちょっと―」 
「この間?何かありました?」
 「いや、お見合い―」 
「あー、それはもういいんです」

 ――確かに失敗した話など振り返したくないのはわかるが。

 「だから、ユ先生また今夜飲みに行きませんか?」
 「・・・ご家族が用意してくれたのだからおそらく終わりではな―」 

「ねぇ、ユ先生」

 気付くと何時の間にかチェヨンはウンスの目の前に近付いていた。
30cmもない距離にいるチェヨンを無意識に仰け反る様に見上げてしまう。 


「・・・俺が、お見合いの話したのが悪かったですか?」 

「え?」 
「もう、俺はお見合いや食事会なんて行きませんから、ね?今夜、行きませんか?」
 また何時みたく飲みに行きましょう? 


――い、いやいやいや、そうじゃなくて! 


ウンスは足を後ろに動かし距離を取る。
 しかし、ヨンの手が素早く動きウンスの腕を掴んだ。 


そこでウンスは漸く彼が怒っているのだと理解したが、 
それでもウンスを見つめる眼差しは何故か寂しそうに見えた――。 










 「・・・とりあえず、頑張ってみる、か?」


 ウンスと別れた後、ヨンは1人街中を歩いていた。
 ウンスより1駅先にある自宅までは歩ける距離だと毎回運動がてら歩く事にしている。 
1週間前に実家から連絡があり、また来たお見合いの話に辟易しそんな話をウンスに振ると彼女は嬉しそうに良かったじゃないと笑った。 

「チェ家が選んだのだからきっと、良い女性だろう」

 この国で誰もが知る偉人を先祖に持つチェ家の有名さはやはりウンスも感じているのだろうが、そんなにも信じる程良い家でもない、・・・とは言えなかった。
 聡明で勇敢な武将の名に恥じぬ様にと厳しい縛りがあり、それは今現在も引き継がれている。
 国から、他人の人間から知られる人生。
それは学生になり医者になり一人暮らしを始めると、その重圧がひしひしと肩に重く伸し掛る様になった。 
自分の意思で生きたいと思う事自体普通の考えではない。
実家の企業は継がず医者の道に進んだが、“そのうちチェ家に戻るだろう”周囲の目がそう言っていた。


 暫くして感じたのは刺々しい眼差しだった。

 その方向を見るとそこには同じ外科のユウンスがいる。
 またか。
 1つ上の彼女はヨンが入った時から歓迎的ではなかったが、ヨン自身もまたそんな眼差しは受け慣れており無視をしていた。 

そんなある日、自分が担当していた患者の手術を他の医師が担当するという。

カルテを見るとそこには彼女の名前があった。
 同じ外科内でもあまり話をした事がなく、良いタイミングだと考えた瞬間、
ヨンの身体は無意識にスタッフルームを出て彼女の後を追いかけていた――。


 ――なるほど。

 彼女との短い会話を終え廊下を歩きながらヨンは頷いていた。 

彼女はおそらく“努力の人”だ。 
こちらを真っ直ぐ見つめてくる強気な眼差しは、自分の技術にかなりの自信を持っている。それは蓄積された実戦経験と学んだ知識があっての事だろう。同じ外科仲間でもユウンスに対する信頼が厚い者もいて、患者を任せても大丈夫だと確信した。

 “その質問に何の意味があるの?” 

ウンスのヨンを見つめる瞳は“チェ家の彼”にではなく、同じ医師に向けてのそれだった。

 ――オペが終わったらまた声を掛けてみようか。

 そう決め、ヨンはスタッフルームに戻って行った――。 


 そして気付けばウンスと仕事終わりにご飯を食べる関係になっていた。

 お酒が大好き!と言う割にはざるという程でもなく、最後は酒に飲まれてしまうのか顔を真っ赤にさせ騒いでいたかと思うと眠そうに船を漕ぎだす。慌ててヨンが会計をしタクシーに乗り込む、そんな事が多々あった。 
それでも、そんな関係がヨンには嬉しく悩みを相談出来る親友とはこういうものなのだと今の生活が充実しているとしみじみ感じている。


 そんな時に実家からあの見合い話が来た。 

 ここ数年で色々薦めを受けた事もあったし、親族からはいい加減考えろと言われた事もある。
30歳目前の自分はそろそろ構わないかという気持ちがあった事も否めない。拒否すればその理由を追求して来る人達も増え始めていたからだ。
 そのせいか持ち込まれた話は決して乗り気では無いものの、逃げ続けた自分の年貢の納め時という気持ちにもなっていた。 
そしてそれを江南の総合病院に勤務して3年、仲良くなった同僚に1番最初に告げたのは深い意味があった訳ではなかった。

 ・・・筈だ。 


 「・・・・・」 


ヨンは車の中でエンジンもつけずに前のハンドルを睨み付けていた。 
ウンスから断わられてしまい、再び来たお見合いの話を相談出来なかった。 

・・・参ったな。 

ウンスに話を聞いて欲しかった。 
彼女なら何かアドバイスをくれるのではないか、根拠は何も無かったがとにかく会話がしたかったのだが・・・。 



 数日前に実家に寄り届いたという見合い写真を見せて貰ったが、ヨンには何の感想も出なかった。

 「まあ!綺麗な方ですね」

 今は亡き母親の頃からいる使用人のキムさんはそう言いヨンに同意を求めてきたが、黙ったままのヨンに気付き心配そうな眼差しに変わっていく。

 「どうかされましたか?お知り合いの方ですか?」
 「いや、知らない人だけど・・・何か若いなあと感じて」
 「あぁ、23歳と聞きました」 
「俺もうそろそろ30だけど?大丈夫なの?」
 「そんな、まだ29歳じゃないですか。そんなに離れていませんし、若い方が子供も―」
 「いや、年齢なんて関係無いでしょう?そもそも、子供が欲しいから結婚する訳でもないんだし」 
「でも、ヨンさん・・・」 
「この人大学卒業したばかりですよね?社会経験もしていない。そんな人が嫁いできてもチェ家の方は大丈夫なのかと思って・・・」
 「それは、旦那様とヨンさんが頑張れば良いのでは?奥様がゆっくり出来る環境を作るのが夫の役目でしょう?」 
「・・・まあ、そうだけど」 

――そういうのではなくて。 

しかし、ヨンがこれ以上キムに話す事も出来ず、結局週末の場所と時間だけ聞き実家を後にした。

 そして、ウンスとも会話が出来ずそれについての相談も出来なかった。 
何を相談するのかと問われれば、決まったものはない。 

それでも自分の中の拗れた気持ちが晴れるのではないか、など軽く考えていたのだが・・・。 




 「用事はもう終わったかな・・・」 

1日経ち、2日経ち、ウンスがいる美容整形外科のスタッフルームに近付きそっと室内を覗いてみる。 
するとウンスが同僚スタッフ数人と楽しそうに会話をしており、何の拍子なのか隣の男性スタッフがウンスのほつれた髪の毛を指で掬い整えていた。

 「・・・・・」 

そのまま凝視しているとウンスが同僚の指に気付き、恥ずかしそうに自分の髪を直し始める。
 だが、触った男性には何も言わなかった。

 「・・・・怒らないんだ」 

あまり自分の髪を他人が触るのは嫌だと以前話していなかっただろうか?
 それくらい髪の手入れをしているのだと。

 彼らは話を終えたのか散り散りになり、ヨンもまたそのまま廊下を歩き出した。

 ウンスをまた誘うつもりだった。 
だが、また断わられる・・・かもしれない。
 どうして、そう思う? 
俺は何か機嫌を損なう事を言ったか? 


 拗れた感情が何故か更に膨れた気がした――。 






【後編】に続く
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お久しぶりです。⭐
ずっと保管していた短いお話ですが、冬のお話だし年内中に出しておこうと前後編にわけました。
題名の意味は【鈍感・鈍い】
・・・まあ、そんなお話☺️✨