契約恋人⑳ | ー常永久ーシンイ二次創作

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契約恋人⑳





ソウル市にあるウンスのマンションに着いたのは、高速道路の渋滞もあり結局夜になっていた。


「此処でいい」

「わかった」


マンションの近くにある駐車場に車を停め、ヨンがウンスの鞄を出し渡すとありがとうとウンスはそれを受け取った。


「秘書の方にいきなり地元に連れて行くって言われて、慌てて用意したし、家もそのまま放置しているのもあるのよね」

「すまなかった」

「いいわよ、もう過ぎた事なんだから」


そういえばとウンスはヨンをちらりと見上げ、


「貴方今からまた帰るの?」

「いや、ソウル市内にあるマンションに泊まるつもりだ」

「・・・マンション?」


何故大邱市に住んでいるのにソウル市にマンションがあるのか?疑問に思ったが、直ぐヨンの答えに納得する。


「ソウル市で両親と住んでいて、そのマンションをこの間まで俺が使っていた」

「あ!そうだったわね!」


高校進学と同時にソウル市に引っ越しつい最近まで彼はソウル市にいた。自分も暮らしていたのに、そこはすれ違いもしなかった事が不思議だと感じたのだ。

彼も少し前までウンスがソウル市にいるとは知らず、見合いを申し込み調べクリニックも見つけたという事だった。


「昼間外に出る事はあまり無かったし・・・」

「俺は、仕事以外はジム行く位しか・・・」


どうにもお互い地味な話しか出て来ない事もわかっており、そこを引き伸ばす気は2人には毛頭無い。


小さく咳をしたウンスは鞄を肩に掛け直すとありがとうと再度礼を述べた。



「・・・後で電話して良いかな?」


今まであまりウンスのスマホに私用で掛けた事は無かった。だが今は恋人として接しても良いのだから、夜に掛けたいと伺うとウンスは少し考えていたが、


「いいわよ」

「ありがとう」


僅かに眉を下げていたヨンの表情が明るくなった気がするが、

外の暗さでよくは見えないと思いながらもウンスはフイと顔を横に向け――。



「・・・良かったら、上がってく?」


「・・・」


「そこは即答じゃないんだ」

「えっ?・・・いいのか?」


確実無理だと思っていたので頭に無かったと返すヨンに、ウンスは恥ずかしくなり焦り出す。


「別に、そういうつもりで言った訳じゃなくて・・・!」

「いや、泊まりたい」

「泊めるまでは言ってない!」

「帰りたくない」

「子供じゃないんだから・・・もうっ・・・」


真っ赤になるウンスを抱き締めながらヨンは嬉しそうに笑い、自分の車から荷物を取って来るとウンスの鞄も持ち2人はマンションの中へと入って行ったのだった――。








「わぁー!やっぱりユ先生、チェ氏と上手くいったのですねぇ」

「そりゃそうですよね!朝、送ってくれるなんて・・・しかも、帰りも迎えに来るとは。

彼大邱市じゃありませんでした?何処に泊まっているのでしょう?まさかユ先生の部屋――」

「か、彼はソウル市にマンションがあるの!帰るならそこに帰るでしょうよ」



昨夜結局ヨンはウンスのマンションに泊まり、次の朝そのままクリニックに送ってくれた。



電話云々など初々しい事よりも、既にお互いの気持ちも身体も知った2人は、直に肌を合わせるという流れに自然と向かい再び濃い夜を過ごしていた。


だからなのか彼は、しきりに大丈夫か?と心配そうにウンスを気遣い次の日にもクリニックに送ると言って来た。


――・・・いやその前に、彼は平気なの?


彼の底知れぬ体力を知ったウンスは背筋に冷たいものを感じたが、

少しでも楽出来るならと結局は頼んでしまい、ヨンと一緒の所をスタッフ達に見られ先程から彼女達は何故か盛り上がり始めているのだ。


「違いますよ、私達は祝福しているのです!」

「そうです!しかもあのチェ製薬会社の御曹司なんて、ユクリニックもこれで安泰だー!」

「クリニックの心配だったの?少しは私の心配してくれても良くない?」

「心配?ある訳無いでしょう?元々彼がユ先生にアプローチしていたのだからそこは問題無しです!」

「チェ製薬会社の化粧品を置いている段階で、ユ先生は特別枠なんです」

「うぅ・・・」


スタッフ達の的確な言葉に返せないウンスはもごもごと口篭る事しか出来なかった。









ヨンはウンスを送った後そのままソウル支社に向かっていた。



予想通り社内は騒然としており、役員の殆どは慌てふためいている。

ヨンが現われると何人かは慌てて近付き頭を下げて来たが、困惑と不安な様子は直ぐに見て取れた。


「ご連絡が皆様に来ている筈ですが、それに従って下さい」

「そんな事を言われても・・・会社は潰れてしまうのですか?」

「いいえ、チェ製薬会社の子会社が入るだけです。そこに残りたいのであればそれもまた申請をお願いします」

「子会社?」

「チェ製薬会社が開発、販売している化粧品関連の会社です」

「あ、あれの・・・え?あの会社は・・・」

「それが不服の場合は製薬会社のアメリカ支社か本社に申請可能なのもお伝えしていると思いますが」

「それは・・・」

「私は化粧品会社でも良いのなら残る事は自由とお話しており、男女関係なく希望を受け付けています」


それを遠巻きに聞いていた若い社員達は焦りながらスマホを弄り始めている。


どうにも製薬会社に入社したは良いものの、この支社は派閥争いが酷く上役同士の腹の探り合いしか見えなかった。しかもチェヨン氏が本社に戻ってしまうと、更に悪化した内部とそれに加えての役員の決まった社員にしか優遇しない態度に、真面目に仕事をしていた者達は辟易していた。



「チェ氏が本社に戻ったのは新しい会社の立上げの為だったんだ」

「あの化粧品関連はチェ氏が指揮を取っているのは有名なのだから、きっと社長はチェ氏だろう。俺は新しい会社に申請するぞ」

「あ、私も申請したいわ!」


次の会社に入った方が良いと判断した者、ソウル支社の体質に甘んじ慌てている者、

それぞれの様子を暫く見ていたヨンは何も言わずそのまま上階へと向かって行った――。



「タン氏は?」

「あれから出社はしていません、弁護士を用意したと聞いていますが」

「そこは予想通りだな。ウンスがクリニックに戻ったが暫く周辺を見張って欲しい」

「既に近くの建物に入れています」

「ありがとう、アン氏も逆恨みをするかもしれないからな」

「アン氏は妻と海外に逃げたそうです。どうやら妻の実家は小さい会社を経営しているらしく、噂など流れたら困るとの事で2人を海外に出したとか」

「別れさせようとはしなかったんだな」

「その妻が別れたくないと言ったとか・・・」

「ふん」


何も無ければ幸せな夫婦だったのだろう。


しかし、結婚前からタン家と関わっていたのなら、いずれは駒として扱われたのかもしれない。

そういえば、少し前ウンスもアン氏の事を人付き合いの良さそうで営業が上手そうだと褒めていた事を思い出し、思わず眉を顰めていた。


――・・・俺はウンスから褒められた事が無いような・・・。


不器用な自分を知っているのは家族以外ではウンスだけだから仕方ない事だが、少しでも良いから褒められたいと思う。


「・・・社長になるのを知ったらどうだろう?」

「はい?」


うーんと腕を組みぶつぶつ独り言を言い始めたヨンを叔母の秘書は不思議そうな表情で見つめるだけだった。









叔母は大邱市のある場所に来ていた。


広い畑と果物の木が綺麗に並び、よく手入れされているのだと暫くそれを眺めていると遠くからトラックの音が聞こえ、少しの間の後その車は叔母の横で止まると、


「あの、貴方はチェ家の方では?」

「はい、お見合い以来ですね、お久しぶりです」

「まぁ!こちらこそあの時はありがとうございます・・・いえ、実はチェ家の話を聞いて心配していたんです」

「もしかして“掟”なるものですか?」

「そ、そうなんです・・・知らずにこちらもご迷惑おかけしたのではと・・・」

「いいえ、何も問題はありませんでした。私達がそちらに頭を下げなくてはいけなかったのです」

「はい?」


叔母の言葉を聞き意味がわからないとウンスの両親は困惑し、顔を見合わせてた――。






「・・・え、家(ウチ)がですか?」


「はい、族譜にもユ氏の名前がありましてその女性の本貫がわからず長年探していたんです。江華島の博物館にチェ家の族譜があったのですがその壺に幾つかの書籍や装束品、簪などがありました。館長が言うにはそれを隠したのは女性ではないかと考えているそうです」

「まあ、確かに飾りや簪などは男性は有り得ないですからね」


「書籍の中で女性の本貫がここになり、この地から開京に来て後にチェ家に嫁いだのだとわかりました。女性が女官だったのか、チェ家が連れて来たのか不明ですがそれでも大切に扱われていたのは確実です。墓に名もあり、一緒に眠っている訳ですから」


叔母の話を黙って聞いていた父親はある事に気付き、え!と腰を浮かせ驚き出した。


「まさかあの将軍の墓ですか?」

「はい」

「ええーっ?!」


チェ家の1番有名な偉人とも言える彼の妻はこの家の者だった事に、両親は驚愕し口を開け呆けてしまった。


「その女性が何故江華島にその壺を隠したのか、もしかしたら御堂などがあったのかもしれませが、建物は幾つか無くなってしまっておりますので詳細は不明です」


書籍や装束品などは博物館にあり持ち出し厳禁な為、気になるようなら見に行って欲しいと叔母は言う。

そんな事よりもユ家は代々裕福層とは離れた家系でもあり、まさか国で有名なチェ家との関わりにまだ信じられないでいた。



「あ、それじゃあ私達が訴えられるなんて事は無いですよね?」

「はい?」


母親の言葉に叔母はきょとんと目を丸くしてしまう。だが、それに構わず両親は良かったと安堵の息を吐いていた。


「はぁ、良かったわ!ウンスが訴えられてしまったらクリニックもどうなるだろうと心配していたんです」



「・・・あ、いえ、それは絶対に有り得ない事です。

寧ろ・・・・馬鹿な甥に寄り添って下さり・・・本当に感謝を述べたいと――」




――本来訴えられるならヨンの方だった。


――・・・あの馬鹿者!


帰ったら覚えておけよ。




叔母は頭を再び下げながら甥の行為を思い出し、

額に一筋の汗を流した――。







㉑に続く

△△△△△



壺を隠した人はユ夫人だったのかな?


叔母さんもヨンがした行為を言う訳にも出来ず(笑)








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