契約恋人⑧ | ー常永久ーシンイ二次創作

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(小説・イラスト・日記等)
二次創作に嫌悪感のある方はオススメいたしません。



※こちらも短編という、他とはクロスしないお話です。



契約恋人⑧





チェ製薬会社の方が来ていると受付からの呼び出しにチェヨンか?と少なからず警戒して行くとそこには知らない男性が立っていた。


「チェ製薬会社のアンと申します」

「はい」

「こちらにチェ氏から幾つかの商品が納品されているとの報告がありまして」


――・・・あ、まさか。


業者間での割引適用より少しだけだが更に安くして貰っている事は知っていた。

それはチェヨンの特権を使うので構わないと言ってはいたのだが、やはりその報告は会社には伝わる筈で何故こんな小さいクリニックに?と疑問が浮かんだのだろう。


ウンスは内心ビクビクしながらもお話をとアン氏をカウンセリング室へと招き入れた。



「あの・・・何か問題が・・・」


ところが彼は納品については問題は無いという。


「チェ氏は会社の役員であり自分の会社でもありますし、割引差額は自己負担をしているのでそれは問題ありません。」

「良かったわ。あの、でしたら今日は何を・・・?」


するとアン氏は目を薄め柔らかそうに微笑んだ。


営業部と言っていたが、チェヨンの笑顔とは雲泥の差にも見える程に人懐こい笑みだ。きっと営業も上手いのだろうとわかる顔にウンスが見つめていると、彼はカウンセリング室の扉をチラリと一瞥した後少し声を落とし話しだした。



「・・・実は、噂を聞きまして」


「噂?」



「チェヨン氏が貴女を無理矢理襲った事があると・・・」



「ッ、?!」



ビクリと肩を跳ねさせたウンスを見てアン氏は眉を下げながら再び問い掛けて来た。



「・・・事実なのですか?」



――・・・それは・・・。



ぐるぐると頭の中で必死に記憶を巡らせ、あのレストランだと思い出した。しかし、自分が出た時には店内は他のお客は見当たらず4人とレストランのスタッフだけだった。



誰が?

まさか、チェヨンが?


自分を訴えても良いと言っていたのを自ら周囲に話したとか?



いや、しかし――。


アン氏は心配そうにウンスを伺いながら優しく話して来る。


「もしそれが事実ならとても酷い事だと思います。喩え年数が経っていたとしても許される事ではありません」

「は・・・え?」


「・・・どうなのですか?襲われたのは、事実なのですか?」


アン氏の優しい声とこちらを気遣う雰囲気に、思わず声が出そうになり咄嗟に唇を噛んだ。



――・・・ど、どうすれば・・・。



ウンスは下を向きジッと床を見つめ直ぐに視線をアン氏に戻す。


「それは何処から出た話なんですか?私にはよくわからないのですが・・・」


「・・・」


するとアン氏の目が一瞬だけ冷たく光り、だが直ぐに優しい笑みに戻った。



「・・・そうですか。実は我が社の関係者がその様な事をしていたなどと話を聞いたので皆心配していたのです。・・・事実で無いなら良かった」

「はい」

「クリニックの納品に支障はありませんので心配ございません」

「・・・はい」


ウンスがコクリと頷くとアン氏はその後少し話をしてから、それではとクリニックを後にした。



だが、ウンスは再びカウンセリング室に戻り頭を抱え込んでしまう。


チェヨンかあの女性か他の誰かだとしても、今自分との事を知られたら彼はどうなるのだろうか?

この間まであんな奴許さないと怒っていた筈が、第三者が来るとこんなに戸惑うのはどうしてなのか。


――違う、これは自分の事も含まれているからよ。


チラリと男性が残した名刺を見るとチェ製薬会社営業部の『アンジェウク』と書かれてある。



チェヨンも以前は営業部と言っていた様な・・・?



――・・・本当にどうすればいい?



ウンスは再び頭を抱えたのだった――。











「・・・ん?」


ヨンは思わず立ち上げたパソコンの画面を凝視した。


あれから3週間が過ぎそれでもウンスのクリニックに商品を送っている。彼女から業務向けのメールは相変わらずではあるが、それでも必ず見たいと思うのはやはりまだ諦め切れないのだと思う。


しかし、今日のメールは、


『誰かにあの話をしましたか?』


その一文だけで――。



「・・・話?」


10年前の?・・・あぁ、レストランもあるか。


話したも何も、あの場にいた者には知られたのではないだろうかと考え返信をしたが、

暫くして返って来た内容にヨンは眉を上げると椅子から立ち上がった。






「まだいるか?ユウンス!」

「ギャー!また来たー!来ないでって言ったじゃない、殴るわよ!」

「すまない!ち、違う、そうではなくて!あのメールの話を聞きたい!」


閉店時間で入口の自動ドアには鍵が掛けられており、外からチェヨンが頼むと声を上げて来たが、スタッフ達は既に退勤済みでウンスだけの為ここを開ける気は更々無い。

メールを送ったのは朝なのにわざわざ高速に乗ってやって来たチェヨンの勢いに再び嫌な予感しかしなかったからだ。


「止めてよ、近所迷惑になるから!」

「・・・だったら、ここでもいい。話を詳しく聞かせてくれ」


自動ドアを挟んでチェヨンを睨み付けるウンスにそれでも彼は話を聞きたいと言って来る。

ウンスはポケットから名刺を取り出しドアのガラスに貼り付ける様に手で抑え、それをチェヨンは外から凝視していたが小さく頷いた。


「“アンジェウク”・・・彼はソウル支社の社員だ」

「今も?貴方は本社よね?」

「ああ。彼はまだソウル支社だが、何故納品を知っていたんだ?」

「仲良いの?」

「いいや。あまり俺は他人と話はしないから」

「あぁ、孤独だからかしら?」

「・・・ゴホン、兎に角あまり話した事は無い」


ウンスは名刺をポケットにしまいため息を吐くと、眉を顰めチェヨンを見る。



「・・・あの事、会社で広まっているの?」


尋ねるとチェヨンは即座に首を横に振った。


「社内でそんな話が出たら、すかさず叔母さんが来る」


彼女は両親よりも社内に広い人脈を持っており、チェ家に対する話などが上がる様なら直ぐ耳に入るという。



「・・・はぁー、だったら私に対しても脅しに来たのね」

「脅し?」


チェヨンの顔が険しくなりウンスを見つめて来た。


「・・・貴方は訴えてもいいって言うけど、そんな事をしたら私のクリニックにも影響は出るぞ、という意味よ。わかっているわよ、そんな事は!」


あの男の眼差しはチェヨンを貶める目だったが、それと一緒に彼共々このクリニックが潰れようが構わないという空気だった。


「・・・」


チェヨンは視線を落とし足元を見ている。


彼の頭の中にはそんな危険性も考えてはいたのかもしれない。



・・・が。



「・・・私は貴方の身勝手な行動で巻き込まれただけよね?」


「ああ」


「それで、最終的に私のクリニックが潰れたらその賠償金も払うつもりだった?」


「・・・ああ」



「何でも、金で解決出来ると思うなー!」



バンッ!とドアを叩いたウンスにビクリとチェヨンは肩を上げ、視線を戻した。

ウンスは怒りで顔が熱くなり、その勢いのままドアを再び叩く。


「最初からそんな事を考えてあんな事をした訳?馬鹿じゃないの!私の青春返してよ!!」


「・・・すま・・・ごめんなさい」


チェヨンは深く頭を下げて来たが、その姿にウンスはギリギリと奥歯を噛んだ。


「謝る気があるなら最初からしないでよ!そもそもなんで私なのよ!」

「・・・ユウンスが好き、だから」


「私は貴方に特別な好意があるなんて一言も言ってないわよね?」

「・・・ああ」


「今も無いわよ!馬鹿!!」

「・・・」


チェヨンは視線を上げウンスを見たが、

再び落とす。



ウンスの目からはぽろぽろと涙が零れていた。

感情の昂りだとわかっているし、チェヨンに対する怒りを漸く吐き出せた気持ちなのだと自分でもわかっている。


今更戻らない年月をチェヨンに言っても無駄だし、克服する事を諦めた自分がいたのも事実だ。


だけどその怒りをどうにかしてチェヨンにぶつけたかった。





長い沈黙の後、はぁ、と息を吐き出しウンスはドアから手を下ろした。




「・・・言いたい事は言えたわ」

「・・・はい」

「まだ怒りが無い訳ではないけど」

「ごめん。・・・ごめんなさい」

「貴方の謝罪は“仕方ない”から受付てあげる」

「・・・ありがとう」

「でも、私のクリニックは漸く手に入れた城なのよ。潰される訳にはいかない。

だから、チェヨン、貴方が考えてよ!」

「え?」


「貴方私より成績良かった筈よね?自分の会社と私のクリニック両方守る策を考えなさいよ!」


「・・・」


チェヨンは唖然と目を丸くした後、困惑気味に尋ねた。


「ユウンスのクリニックもか?」

「当たり前じゃない、馬鹿なの?」

「え、と・・・」


チェヨンは口を手で抑え必死に何かを考え始め、ウンスは近くの待合室の椅子に座った。

外にいるチェヨンは先程からずっと立ちっぱなしだが、そこはどうでも良い。



「あ」



チェヨンはふと思い出した様に自分のスマホを取り出し、実はと話し出した――。









『あの女性、そんな事実は無いと言って来たが?』

「嘘に決まってるじゃない。何も聞き出せずに帰って来たの?」

『あの女が知らないと言う以上、チェヨンとの関係を追求したら俺が怪しまれてしまう。別な所から調べるよ』


チェヨンを引き摺り下ろす為にと言ってアンは通話を切ってしまい、

音がしなくなったスマホ画面を睨みメヒは舌打ちが出た。


「役に立たないわね!」


タン家のコネでチェ製薬会社に入れたのだから、少しでも役に立って欲しいのに大事な時にこれだとは・・・。


彼の両親と食事がしたいと父親に頼み、来週末こちらに帰って来るとの事で約束を取りつけたという。


「彼の両親から結婚すると承諾を得ればいい」


数年前アメリカに発つ前に彼の両親に会った際、彼らが好きな色や花などを聞き出し定期的に贈り物を届けていた。

直ぐに自分の親になるのだからとやっていたのに――。



「・・・はっ、面倒くさい事までやっていたのに・・・まだそんな事をしなくちゃならないなんて」


吐き捨てる様に言い、メヒは持っていたスマホをベッドへと投げた。


――チェ家が早々に私をヨンの婚約者だと世間に公表したら彼はそんな行動をしたのだろうか?


邪魔をしているのは誰?


あの日ヨンを叩いた女性を後から調べると、彼女は彼の叔母でもありチェ製薬会社の上層部の1人で、1番の問題はあの叔母なのだと今更だが気が付いた。



この間父親から聞いた話では、タン家はチェ製薬会社の株を買い集めているという。そのうち製薬会社の筆頭株主になれば会社を自分達が操れるかもしれない。

だが、チェ家という名家はこの国では有名でそこは蔑ろには出来ないとも話す。


「だから、メヒお前があの青年と夫婦になる事でまだチェ家との繋がりを維持していけば良い」

「ヨンは?」

「彼はまだ上層部に人望が無い。どう足掻いても、タン家には刃向かえないさ」


父親は想像していた未来へと近付いている事に喜びを隠せないのか終始笑っていた。


「・・・」


社長夫人という事でも無くなる事にメヒは疑問を感じるも、ヨンが近くにいれば大丈夫だろうと考えている。



だが――。



「邪魔な人達ばかりだわ・・・」










2人が向かった場所は漢江近くの新しく出来たビルの1つで、最上階に全方位景色が見えるレストランだった。


夜景が兎に角美しいとの噂だが、生憎今日は曇ってもいて良く見れないだろうと感じた。



――そんな事はどうでも良いし、何なら多分景色など見ないだろう。


そう思いながら1階のエントランスに着き、ウンスはふと足を止めた。


「・・・それにしても、毎回高速乗って来て大変ねぇ」

「いや、以前使っていたヴィラがあって」

「へぇ、お金持ちなのにヴィラとは」

「一棟借りている」

「あ、そ」


聞くんじゃなかったとウンスはうんざりしながらも、最上階に上がる為のエレベーター前に立ったが、くるりと振り返った。


「私が先に上がるから、後からチェヨンは来て」

「は?」

「貴方と同じエレベーターに乗りたくないので」


「・・・・・」


その言葉に口を尖らせチェヨンは視線を逸らす。



――・・・30の男がそんな顔しても可愛くないわよ。


2人きりの空間に誰がなりたいと思うのか。


消えかかったトラウマがぶり返して来そうだとウンスが腕を組んで見ていると、チェヨンは、


「・・・だったら、俺は腕を後ろに組んで端にいる」

「変わらないじゃない、嫌よ」

「むう」


エレベーター前で揉め出した2人を通行人達がチラリと見て行き、エントランスのスタッフも慌てて近付いて来た。


「お客様、如何(いかが)いたしましたか?」


「いや、何も・・・」

「だ、大丈夫です、ヨン行きましょう」

「あ、ああ」


スタッフに大丈夫だと笑い2人は焦りながらエレベーターに入ってしまい、あ、と声を上げたが扉は閉まっていく。


「あー!」


焦るウンスを横目で見たチェヨンは先程言った通りに手を後ろに隠し壁に背を付けウンスから距離を置いた。

ウンスもまた端に寄り、チェヨンが近付かない様に腕を組んで睨み付ける。




「・・・ちょっと、もう少し離れてくれない?」


「・・・これ以上は無理だ。触らないよ」


「当たり前でしょ!」


再びチェヨンは少しだけ口を尖らせた。


――・・・だから、可愛くないって!


兎に角少し離れて欲しい。



エレベーター内に低い機械音が聞こえ、2人はただ黙って上に着くのを待つ。


2人の距離は歩けば3歩で傍に行けるが、ウンスは近付く気は無くチェヨンもまた自ら言った通りに腕を組み壁に身体を付けている。

それでも狭い密室の様な空間にウンスは苛立ってしまう。


これも自分のクリニックの為だが、早く着いて欲しい。


仕方がないからチェヨンの計画に乗っただけ、

ウンスもチェヨンの両親を朧気しかおぼえてないが、培った接客力で乗り切るつもりだ。



「貴方もちゃんと話をするのよ?」

「それはちゃんと・・・」

「はぁ、大丈夫かしら・・・」

「俺は言える」

「私は言いたくないんだけどね!」


ウンスの愚痴にチェヨンはわかっていると返して来るが、本当に?と眉を顰めた。


彼と良い雰囲気になるつもりは無い。


重い空気の中目的の階で止まったエレベーターが止まり、サラリーマン風の男性が入ろうとしたが張り詰めた2人の空気に驚いている。


2人はコホンと咳をして、チラリとお互いの顔を見合わせた。



「ヨン、楽しみねぇ。」


「・・・そう、だな。ウンス。」


――ウンスだと?


キロッと睨むウンスに目を合わせる事無くチェヨンは、



「早く両親に紹介したいよ。」


「・・・まぁ、ホホホ。」


棒読みに近い会話をしたまま2人はエレベーターから出て行くが、

ウンスは小さい声で文句を言いチェヨンは無言で横にいるウンスを見ている。



――・・・何だ?あの2人は?


言葉の割に幸せそうには見えない男女の後ろ姿に、

男性は扉を閉めるのを忘れエレベーター内で佇んでいた――。








⑨に続く

△△△△△△



既に来週末になった様で・・・。🙂👉


少しだけ2人は前進した?細かい所省いたら展開が早くなった気がするー。(気のせいかな?)






・・・この辺の続き方は、

同時期に書いていたジグザグ初期に似てますな(笑)

その位古いんです😄








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