騒々協奏曲【後編】③ | ー夢星石ーシンイ二次創作

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※こちらは何のシリーズにも繋がらない短編です。



騒々協奏曲【後編】③






「・・・違いますよ、ユさん、誤解しないで欲しい。

俺はユ・ウンスさんに会えたから他はもう気にしていないと言ったんです」


「・・・え?」


ヨンは小さく笑うと、クルリと後ろにいるメヒに顔を向けた。


「気にしていないとはそういう意味なんだけど」

「何、言っているの?」

「確かにこの間まで過去の苦しみはあったが、彼女とエレベーターで出会う為に必要だったのだと俺は思っている」

「エレベーター?」

「メヒに話すつもりは無い。

『許すも許さないも気にしていない』と言ったのはあの時の事は既にどうでも良いし、寧ろ今は感謝しているよ。彼女に出逢えたからな。


・・・あぁ、一つ苦言があるとすればこれからは俺の事を二度とインタビューで答えないでくれ。

メヒと俺は数年前から道は別れているのだから」



いくら今更来てメヒを許したとしても、

そこから何かが始まる事は無く、

自分の将来の中にメヒを含む気は毛頭ない。



「っ!!」



ヨンの言葉にメヒは顔を歪ませたが、次にウンスを睨み付けた。


カウンセリング等をして彼に変な入れ知恵でも吹き込んだのか?それとも誘惑しヨンが負けたのか?

国代表にまでなった自分がたかが女医者にコケにされるなんてふざけている。

ヨンのバックボーンに寄って来た女だろうに!



・・・こんな女に、ヨンが――。



メヒはヨンとウンスに険しい眼差しを向けていたが、踵を返して応接室から出て行ってしまった。




しんと静かになった応接室の中ウンスは暫くメヒが出て行った入口を見ていたが、少しして顔をヨンに戻し声を掛ける。


「・・・大丈夫だったの?」

「何がです?」

「・・・まぁ、それでも彼女が謝って来たのは良い事だと思うけど」


ウンスの問い掛けにヨンはコチラを見つめ不思議そうに首を傾げていたが、それかと顔を天井に向け何かを考え直ぐに戻した。


「彼女が謝って来た時からどうでも良くなっていたんで、あまり聞いていなかった」

「?」

「最初は再会し具合が悪くなるだろうか?と思ったのですが、おかしな事に何も感じ無かったんです」


だから、メヒに『何も思わない』と伝えていた。


今までのあの苦しさは一体何だったのか?という程、メヒを見ても何も起こらなかったのだ。



――何故だろう?


会話をしながら考え、

あぁそうか、と直ぐに気付いた。


ウンスと会ったからだ。

彼女といると安心する自分がいた。

しかも彼女の病院にも通うチャンスも出来、今までのトラウマが違う意味で良いきっかけに変わっていた。


――別にこんな症状も悪くなかったんだな。


寧ろ“これ”を使い、ウンスに近付けるではないか。

そんな男の欲も考えた事に今更ながらに気が付いた。



「・・・そう考えたら、あんな過去はどうでも良くなってしまい・・・」

「そ、そう」


彼がどの辺りで前向きな考えに変わっていたのかはわからないが、怒りに任せて会社にまで突撃した自分が何だか恥ずかしい。


・・・多分、変な焼きもちも含んでいた。


彼女を警戒させ、近付けさせまいとしていた自分の行動に彼は気付いただろうか?


・・・医者なのに私情も出てしまうなんて!



「・・・ユさんは、俺を心配して来てくれたのですか?」


彼の空気が浮き足立っているのがわかる。


違うとも言えずウンスはもごもごと口篭り、そんな様子をヨンは嬉しそうに見つめていた。




「・・・いや、俺が連れて来たんだけど?」

「―あ?」


よく聞く声にヨンが入口を睨むと、やはりその男が立っていた。


「雑誌見て『だったらお前に直接聞けば良い』って来たわけ」

「だったらアンジェは帰って良いぞ。ユさんは後で俺が送るから」


――嘘を付け。


帰す帰さないと今彼の頭の中で天秤が動いている筈だとアンジェが目を薄め彼を見つめると、さっとヨンは視線を逸らしウンスに向ける。


「お昼は食べましたか?」

「え、いいえ・・・」

「あぁ、良かった。でしたら近くに美味しいレストランがあるので行きませんか?」

「お前、仕事―」

「俺は社長なんで」

「あ、そうっすか」


何故だろうか?さっきまで怒っていた筈のウンスの方が押され気味に見えるのは?


アンジェがそう思う間にもヨンに強引に促され、ウンスは彼と共に応接室から出て行ってしまった。


「・・・彼奴あんな奴だったか?今まで本性隠していたとか?」


“真面目で実直で冷静な男。”


ではあるが、では恋人に対してはどうなのか?は誰も知らない。

荒れていた時に近くに女がいた様な気もするが、誰かれ構わず喧嘩を吹っ掛けていた見苦しいヨンの姿に女性が惹かれるとも思えなかった。


――優等生が真逆になると、こうも荒(すさ)むのだなぁ。

あまりに情けない姿に、とうとうアンジェは説教したのが理由だった。



廊下に出たアンジェは消えた2人は何処だ?と探していると、チュンソクが走って来た。


「社長ならあの女性と外に出て行きましたが」

「行動早いなっ!」

「あの女性が社長のカウンセリングをしている方ですか?」

「ああそう、病院の先生でもあり、結婚相談所でヨンと見合いした人」

「見合い、あぁ、あの方が・・・随分と気に入った感じで」

「知ってるよ。ありゃヨンの好みのタイプだろう?超美人で頭が良い。・・・あとスタイルな」



大学生時酔い潰れたヨンを担ぎ帰る途中、

そんな会話になり、


『顔は超美人で俺並に頭が良くて、すげースタイルが良くてぇ、・・・俺に優しい人〜』

『理想たけーな!お前の金目当てだったらどうするよ?』

『別にぃ、俺が良いって思ったらあげるよ全部』

『やべー、性格だなお前も!』


3年目に入っても中々良い縁談に恵まれない超美人と、拗(こじ)れた過去があり少なからず人間不信になっているイケメン。


――はたしてどうだろうか?


と思ったがエレベーターでの話と、写真を見ての彼の反応に確実“一目惚れ”をしたのだとわかった。



「彼女の男性の好みが『高収入』に切り替えてくれて良かったよ。ヨンが相談所で1番高いからな」

「・・・何だか、凄い組み合わせですね」


チュンソクも実はヨンが結婚相談所に登録されている事は知っていた。そして、アンジェが、


『チェヨンは“特殊”だからな、他の項目は隠してある。彼奴が好きそうな女性がいたら会わせてみるよ』


そうとも言われていた。


――・・・まぁ、社長が嬉しそうだったし、良いのかもな。




バタバタと煩く廊下を走って来たトクマンが不機嫌な顔になっており、どうした?と尋ねると、うんざりと話し出した。


「メヒて女性、あの女性は何なんだ?と文句言って来たんですが。社長とアンジェさんのお知り合いだと言うと、一般人が自分に無礼をしたとクレームを・・・」

「あー、そう」

「だから、俺、あの人嫌いです!何だよ、“一般人”て?結局社長の事も自分より下に見てたんですよ!思い通りにいかないからってクレームて!」

「・・・仕方ねぇな。何とかするよ2人はうちの大事な会員様だからな」

「ん?」


チュンソクがアンジェを見ると、彼はニヤリと笑うが何故かその笑いは爽やかなものには見えず、


「・・・ほどほどにして下さいね」


とだけ言ったのだった――。






数日後――。






「あはは!凄い!ユ先生一気に有名になっていますけど!」



スマホを見ていた同僚が笑い出し、ウンスは口をへの字にしながらも顔を真っ赤にし耐えていた。


それはあの後ヨンとテラスがあるレストランでランチをし、数時間後にまた彼とディナーをしに行く姿をとある週刊誌に撮られてしまい、


〘有名財閥御曹司と美女が長時間デート!〙

〘話題のイケメン会社社長、実は結婚相談所の会員だった!〙

〘イケメンを仕留めた美女は、彼の専属医!遂に私生活も――〙


「何よ、専属医って!別に彼しか診てない訳じゃないわよ!」


見出しが徐々にあやしい題名になっていき、ウンスは遂に怒り出した。


しかし、彼をネットで検索すると山の様に結果が出てくるのだから、こんな騒ぎになる事を予想しておくべきだったとウンスはガクリとデスクに突っ伏した。


「・・・えー?まだ恋人にはなっていないんですか?」


同僚の質問にピタリと動きが止まる。



「・・・なった」


――ええ、週末、身も心も。



「おお!あんな好物件二度と出てきませんよ!離さないでね!」

「・・・」


――それは、大丈夫の様な・・・気がする。

何かとは言えないが。


ハッと気付き、ウンスはポケットのスマホを取り出すと、


『今夜、迎えに行きます。――ヨン。』



・・・気のせいだろうか?


彼が週刊誌に出るのがわかっていた様に感じるのは。

それとも、小さい頃から注目されていた人だからこんな事は気にもならないのだろうか?


「・・・来週、崔家に紹介したいと言って来たのよね」


「展開が早いわー!」


また笑い出す同僚を今度は睨んだウンスだった。








「はい、こちらがアン結婚相談所です。ええ、チェヨン氏も会員でしたね、そうですねその業界に繋がりが無い訳ではないので・・・そうですか、ありがとうございます!もしお時間がありましたら是非お話を・・・はい、今度説明会をしますので、会場は――」




「・・・と、まあ、ヨン達のおかげで問い合わせの電話が沢山来る様になってな。いやぁ、有り難い!」


「・・・?。俺は何もしていないが?」



アンジェの会社に来たヨンは以前よりも申し込みが増えたというアンジェの話の意味がわからず、電話の対応をしているスタッフを遠くから目を丸くして眺めていた。

社長室に案内されヨンはところでと声を出す。


「メヒが大学の指導員を辞めたと聞いたんだが?」

「あぁ、そうみたいだな」

「うちの会社にクレームをした事が関係しているのか?」

「トクマンから聞いたのか?いや、ヨンの会社のクレームなんて小さいものだから関係無いよ。あの女俺にも苦情を言って来たんでな、少しテコンドー協会に話をしに行ったんだよ」


テコンドー協会ではチェヨンという期待の選手を辞退させたのが、大学のサークル内での出来事だったのだと知り協会はメヒから事情を聞き出したという。

その当時の仲間達も引退はしたものの道場等で指導をしており、彼らにも聞いたが大学生時の事だからと曖昧な事しか答えなかった。

だが、そんな噂は広まるのは早く指導員として仲間を貶める精神はどうなのか?と疑問の眼差しを受ける様になった。メヒは大学の指導員から外され、それは自分のせいでは無いと異議申し立てをしたが、いじめ問題に厳しい学校から却下されたという。



「多分最初はお前の会社に行こうと思っていたのだろうが、ヨンは被害者になる訳で行きずらい。で、彼女はつい最近もこっちに営業妨害をしたと言って来た」

「大丈夫なのか?」

「当たり前だろう?それに、お前の会社の社員は当時の話を知っているからな。トクマンなんて、何時でサークルメンバーの名前まで覚えていたぞ。いやぁ、執念深いな。ハハハ!」



――何を覚えているのか、あいつは。


半ば呆れてしまうヨンだったが、暫くはウンスの近くにいようと決めそれはそれでラッキーだとも思っている。


この間、恋人として承諾してくれたウンスとデートをし外泊も出来た。


何がきっかけになるかはわからないが、今は天にも昇れる程に幸せなのだ。


「もう、俺は気にしていないんだけどな」

「まあ、今はまだ来ないかもだがどこかの記者が聞いて来たらそう答えればいい。

・・・それで問題が終わるかはわからないがな」

「ああ」


さてととヨンは腕時計を見るとソファーから立ち上がった。


「今日もウンスさんを迎えに行くんだ」

「へぇー。あ、そういえば閉所恐怖症はどうなった?」


まだカウンセリングに行っているのか?


アンジェの問いに、いいやとヨンは答えるが、


「まだ完全には閉所恐怖症は治っていないよ」

「え?」

「だから、今まで通りにスマホの壁紙見て耐える時もある。でもそれで良いと思っている」

「は?」


「壁紙をウンスさんにしたんだ。

ずっと見ていても飽きないからな」


そう言いニヤリと笑いヨンは帰って言った。



その後ろ姿を見ていたアンジェだったが、




「・・・何か、寧ろあいつ気持ち悪くなってないか?」




エレベーターの中、

壁紙を見てニヤけるヨンの姿を思い浮かべ、

ヒエッと声を出したのだった。









騒々協奏曲〘終わり〙

△△△△△△△△△△△



ここまで読んで下さり本当にありがとうごさいました!

久しぶりに書きたかった現代風のお二人のお話でした。

ヨン氏は今の仲間達で会社ではとても幸せに過ごしておりますし、ウンスと恋人になれたので今が一番最高‼️なんですね。

また、この会社での話が浮かびましたら、

そのうち出てくるかもしれませんが。

team・Kは(高麗)です(笑)(((o(*゚▽゚*)o)))

人材派遣会社だから色々繋がるよね笑。




😌😌

※少しその後に続く話をおまけとして載せましたが、

読んだかな?

朝消してしまいましたので。

まぁ、そう続くのよって事です。


👉👉👉


19時におまけは消えました。

そこのコメントのお返事はこちらにお返し致しますね

(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)”🌸


・・・そんなお話になるの(* 'ᵕ' )☆。