エントランスホールで女神は微笑む⑬ | ー常永久ーシンイ二次創作

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エントランスホールで女神は微笑む⑬




「ウェルカムドリンクをどうぞ」
「ああ」

会場に入った途端、近付いて来たホテルスタッフに声を掛けられ、彼が持っているトレイから適当なグラスを取りヨンは再び顔を会場内に向けた。
しかし、何故か半分以上がヨンを見ては驚いた表情で固まっているのだ。

「何だ?」

・・・何故コチラを見ている?何もしていないだろうが。

静かに親睦会の様子を見てから、計画を実行するつもりだったのに歩く度に見られるのでは予定が狂ってしまう。ため息ついでにヨンは持っていたグラスを口に付け飲み出した。

・・・が。

「ぐ、甘い」
しかも酒か?水みたいだぞ?

“チェヨン”の家の中にも幾つかの酒が置いてあったが、こんなに甘いものは無かった。
無理矢理胃に流し込み、グラスを誰かに渡そうと見渡していると。

「あぁ、チェヨンさん!」
「・・・?」

振り向くと、そこには見た事がある男と着飾った女がいた。
直ぐにチェ製薬会社に化学品を卸している会社の者だとわかったが、年配の男なのに横の女は随分と歳が離れている様にも見える。そう思いヨンが横の女に視線を移すと、女は目を大きくしそわそわと顔を伏せ始めてしまった。

「・・・?」
「今年はチェさんが出席すると聞きまして、大変驚きました!いやあ、私は幸運ですね!」
「は?あぁ」

会社で何度も会っている筈なのに大袈裟に手を広げヨンに話し出していたが、男は隣りの女を少し前に出し、
ヨンの正面に立たせると、

「・・・実は、これは娘でして・・・」

――あぁ、なるほど。

聞き慣れた言葉と流れに、ヨンは鼻で笑いそうになった。露出の高い服の娘はヨンを見上げ自己紹介を始めたが、ヨンはそれをさらりと聞き流している。
昔は、邪険な態度も表していたが今はただ黙っているだけ。だが、向かう前に言われた
“呉々も邪険にはするなよ”
の叔母上の言葉に、苛立ち舌打ちをしそうになっていた。

「チェさんは是非あちらに行った方が良いかと!」
「あちら?」

下の階ですよ、と男は指を差すと会場の中央に下に下りる為の階段が見える。どうやらその二重構造の造りの部屋で、上層部の連中が集まっているのがその下会場という事らしい。

――・・・この時間でどれだけ炙り出せるかだが・・・。

チャン侍医から内部データを貰ったが、何処まで追求出来るかはわからない。しかし、今日を逃せばまたのらりくらりと躱され尻尾を出す迄待つしかないのだ。

結局チャン侍医も来なかった。
一人でやるしかないという事だろう。

――・・・まだウンスがいれば。
あの時にもう少し強引に誘えば良かったのだろうか?そんな事を会場に来る寸前まで悩んでいたのだ。


「・・・あぁ!チェさん。お会い出来て嬉しいです!」
「は?」

ヨンが再び後ろを振り向くと、今度は同じ系列の製薬会社の取締役がいる。そしてその横にはまた、着飾った女達。

・・あぁ、次から次と!



―チッ。


思い通りに事が運ばぬ苛立ちに、とうとう小さく舌打ちをした。


だが、気付けばヨンは企業関係者達から閉じ込められる様に囲まれ、そのままズルズルと下会場へと連れて行かれてしまっている。
辟易しながら階段を下りるとそこにはやはりチェ製薬会社の役員達もいて、彼らはヨンを見て一瞬顔を強ばらせたが、直ぐ薄い笑みを浮かべ近付いて来た。

「あぁ、チェ氏お待ちしてました!」
「今日はチェ氏が来るからと皆楽しみにしていたのです!」
「・・・そうですか」

元々彼らは父親の崇拝者達でもあり、従わない自分など後継者に値しないと揶揄していた連中だった。
最近の情報漏えい対策のセキュリティシステムの強化と、潜んでいたスパイを見つけ出した功績で社内での扱いも変わり、ヨンは父親からも人事管理部への配属を勧められてもいた。だからだろう、彼らの手の平返しの様な行動はあからさまで、鬱陶しい程に擦り寄って来てもいる。

その中の一人がヨンの後ろを見て、何故か更に薄ら笑いを浮かべた。

「いやあ、やはりチェ氏は凄いですねぇ。貴方が歩くと女性が次から次へと増えていくのだから」

・・・次から次へと?

ふと肩越しに後ろを振り返り、

「・・・何だ?!」

何故か先程二人しか紹介されていなかった女達が、ざっと数えても10人以上増えている。

知らないぞ、何だ、此奴ら?
ヨンが後ろを振り返りその時に目が合った女は、キラキラと瞳を輝かせ、

「チェ製薬会社のチェヨン氏ですよね?実はお父様から話を聞いてどうしてもお会いしたくって・・」
「数ヶ月前まで事故で入院されていましたでしょう?私、心配で病院まで伺ったんです!」

――お前か?!
病院に来たのは?
・・・いや、誰だ?知らんぞ!


「会社の事を考えている方だと聞いております。素晴らしいですね!」
「身体はもう大丈夫なのですか?もし大変でしたら、私何かお手伝いを・・」
「いえ、私が・・・――」
「―――・・・」


「・・・・・」


お前ら誰なんだ?
一人も顔を知らない。


なのに、俺の情報を何処まで調べたのか会社の内部事情まで話して来る。

「・・・いえ、内部の事はお話出来ませんので・・・」
「で、でしたら、チェヨンさんのお話が聞きたいわ!」

一人の女の発言で数人の女達まで同意をし、一斉に顔を見上げヨンの言葉を待っている。

「・・・・おい、何だコレは」

しかし、周囲の人間共は助ける訳でも無くその様子を眺めているだけ。

“呉々も邪険にはするなよ”だと?
無理だ、耐えられない。


こんな事で今までの自分と“チェヨン”の苦労が無駄になってしまったら――。

イライラが限界まで上り、身体の内側から熱い気が背中を走り抜けていく。
息を長く吐き出しながら、落ち着けと言い聞かし、視線を横に向けると――。





「・・・・・・イムジャ?」

「・・・・・・」





2階フロアからの階段の途中で止まったまま、
此方を冷たい眼差しで見つめているウンスがいたのだった――。









⑭に続く
☆☆☆☆☆☆


ヨンがどんな状態で行ったのかでしたー

ウンスさんの顔よ・・・




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おいでませ日本へー!来月中旬まで滞在です💖
コンサートは無理でしたが、影から応援します!