君に降る華(13) | ー常永久ーシンイ二次創作

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二次創作に嫌悪感のある方はオススメいたしません。



※ここからは、原作とは少し違う展開になります。
原作が好きという方は、違和感を感じてしまうかもしれません。それでも良いよという方はお進み下さいませ(*´`)







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君に降る華(13)




これは最初から仕組まれた事だとわかっていた。
だが、刺客が王妃の目の前に立った時皆がまさかと頭を過ったのも事実だ。狙うなら高麗の王の方だろう、なのに魏王の娘を狙うとは――。

この刺客達は元の者では無いのか?
高麗だとして自国を滅ぼす様な事をするなどとは――。

刺客が斜めに振り下ろした剣で王妃の喉から鮮血が流れ、崩れる様に王妃は倒れていく。急いでチャン侍医は倒れていく王妃の身体を支え、懐から出した布で喉を抑えた。

「王妃を早く寝台へ!」

ヨンが投げた剣が背中に刺さり刺客は絶命したが、時既に遅しとはこの事でヨンもチャン侍医の元に駆け寄った。
傍では怯えている王妃の付き人と呆然と王妃を見ている王様と重臣。

・・・何て事だ。

ヨンはギリと奥歯を強く噛み、白くなっていく王妃の顔を見下ろすしかなかった――。



だが、一瞬。


あの女人の顔が浮かび上がったのは何故なのか・・・。







「神医です!」


突然の重臣のチョイルシンの言葉に下を向いていた皆は顔を上げた。

王妃が生死の境を彷徨い、この国も王妃の命で滅ぶかもしれない。そんな絶望にヨン達も疲労感を隠す事なく、王様など抜け殻状態で椅子に座り項垂れている。
それなのに、何故この男だけがまだ元気なのか?チャン侍医は彼が言った言葉にはい?と聞き返していた。

「神医?それは“華陀”の事ですか?」
「そうだ、華陀がいたではないか!」

重臣の言葉を聞き返した自分が馬鹿だったと、チャン侍医は大きくため息を吐き出した。
ヨンも再び頭を下げ立てた膝に額を付け、目を閉じようとしたが・・・。

「私は見たのです!山の上だけ赤い雲があったのを。あれは昔華陀がこの地に降りて来た際に、その様な事が起きたと書物に書いておりました。近くに神医はおります!王様、迎えに行きましょう!」

「・・・・・」

チョイルシンの話を聞いていた王様は次第に眉を顰めると、顔をヨンに向けて来た。

「・・・隊長、どう思う?」

「・・・某に聞かれてもわかりませぬ」

疲れているのに、更に馬鹿げた事を言い出す重臣に鼻で笑いたいのを誤魔化し息を吐いた。



――だが。


「今神医は天界から降りて来ているのです!迎えに行かなくては!」



――・・・天界?


ヨンの肩がピクリと跳ね、ゆっくりと視線を重臣に向けて行く。

「・・・神医は、天界にいるのか?」

「当たり前ではないか!桃源郷の如く素晴らしい所だと聞く。そこでは見た事もない治療法が生み出されていると書いてあったのだ!今、あそこに降りて来たのですよ!」

興奮しているのかしきりに王様に神医を迎えようと、切々と語る重臣を見ながらヨンは自分の口を抑え考え始めていた。


・・・ウンスが来た時、空はどうだった?
何時も雪が降っていた為見えていなかったが・・・。
来る前は必ず雪が降り、来た時は止んでいた。

今も先程迄降っていた雨は止み、嵐が近付いてもないのに何故か風だけは吹いている。

天界の者が来る時は何かしらの天候の変化が起きるという事なのか?
確かにヨンもおかしな空を見ていたが、それは今の季節だからはっきり見えたという事だったのかもしれない。

ヨンの変わっていく空気を感じたチャン侍医がちらりと見て来る。

「・・・行くのですか?」

その山の上に。

「・・・いるのなら、連れて来て王妃を助けて貰う」

重臣の言葉を信じたヨンにチャン侍医は目を丸くして驚いたが、天に祈るしかない現状を少しでも脱するのならそれに賭けるしかなさそうだと頷いた。





轟々と風が吹き木々からは葉がぱらぱらと砂利道に落ちている。

「本当に天界など・・・」
「元々あの重臣はおかしな事を言うのかもしれないぞ」
「煩いぞ!いいから早く準備をしろ!」

ぶつぶつ言う隊士達を叱りチュンソクはヨンの元に帰って来た。山の上に登ると石仏があり、前には祭壇の跡の様に石が積まれている。昔からの祭り事で使われていたのだろうが今は廃れた様に草が生い茂り、誰も手入れしていないのがよくわかった。

既に日は落ち、灯りを灯している祭壇の所だけを照らし周りは闇に包まれている。

そんな中で祈禱する我々は、はたして正気と言えるのか・・・?

「・・・しかし、神医、ですか?」
「そうらしい・・・」

チュンソクが呆れた声を出しヨンを見るが、彼はずっと顔を空へと向けている。
雨が止み、雲が消えた空には幾つもの星があり月も何時もよりはっきりと見えていた。

「風があるが、空は何も無いな」
「確かに」


夜でさえ雲が無い訳ではない、だが雲は流れず留まっている。
なのに、この風は何処から吹いているのだ?


隊士が祭壇を作り、前に敷物を敷こうとしたが突然祭壇から激しい疾風が吹き始めその強風に供え物が飛んでいく。

「あぁ!来たのですよ、神医が!」

重臣は興奮で前に進もうとし、チュンソクが慌てて身体を抑えながらヨンを見た。

「隊長!」
「王様を護れ!」

ヨンの指示に盾を王様の前に構え隊士達もその隙間からその様子を伺っている。

「何だ?!あの光は?!」

「あの中に神医はいます!迎えに行かなければ!王様、早く指示を!」

興奮し、大声で喚く割には自分は行く気は無いらしいと隊士達が呆れ見ていたが、王様の視線は直ぐにヨンへと向けられた。

「隊長、危ないですよ!」
「行っては駄目です!」

テマンが泣きそうな顔を向けて来たが、ヨンはテマンやチュンソクの顔を見て再びその祠に目を向けた。


――・・・違う。
光だと?何処に光がある?

これは、

あの霧じゃないか?


ヨンには隊士達が言う光が全く見えなかった。

確かに風が中から吹いているのはわかる、だがヨンの目には祭壇の前にはあの白い吹雪の様な霧の膜が蠢いているのだ。

雪も無いのに、何故吹雪など・・・。


「・・・隊長、どうか?」

再び聞いて来る王様に顔を戻すと、

「ご命令なら」

と一言だけ言い、足を祭壇へと進めて行く。

「隊長!」
テマンが追いかけようとしたが、後ろからトクマンに掴まれてしまう。

「オイラも行く!」
「止めろ!テマン!」

トルベに怒られている声を背後で聞きながら、ヨンは祠に近付いて再びそれを見て唖然とした。

「やはり、雪だ・・・」

他の者には空をも照らす眩い程の光が見えるのに、何故自分には雪なのか?




――・・・いや、だが、これがあの時と同じなら。


ヨンはゴクリと喉を鳴らし、


数年間言葉に出していなかった名を叫んだ。




「・・・ユウンス!ここだ、ここに来い!!」




霧が蠢いている時は、近くにウンスがいる時だけだった。
しかも、あの者が高麗に来たいと思わなければこれは現れない筈なのだ。

だとしたら、ユウンスは今此方の事を考えている筈だ。


「ユウンス!ここだ!思い出せ!」

いきなり叫び出したヨンに遠くに離れ見守っていた者達は驚愕し、唖然とその様子を見るしかなかった。
一体誰を呼んでいるのか?しかも、あの光の中に叫ぶとは・・・?!
王様も重臣も何事だ?!と戸惑っている。
そんな外野を無視し、ヨンはひたすらにウンスの名を叫んでいた。


「ユウンス!ここに来てくれ!」


名を声に出すと、木を倒し道を塞いだ自分の後悔とウンスに対する罪悪感で苦しくなっていた。それでも今だに懐にしまっている髪飾りを見ている自分もいる。剣に付けたメヒの布とウンスの髪飾りは二人に対しての懺悔もあったが、ヨンは二つの違いを既にわかっていた。


――・・・ユウンスに再び会いたい。


何時かこの髪飾りを取り戻しに、あの女人が再び来るのではないかと願ってもいたのだ。


――怒っているだろうか?
通れなくなり、何故だと疑問に思っているかもしれない。
何方でも良い、言われたら兎に角謝るだけだ。


だから。
 
此方に来て欲しい。


蠢く霧の中に手を伸ばし入れたが、やはり自分の手はそのまま通り抜けている。

「やはり、駄目か。頼む!ユウンス!」



激しく舞う雪の波を祈りながら見ていると、

その中から白い手がゆっくりと出て来た。

ヨンは咄嗟にその手を握り締め、

強く自分の方に引き寄せる。


忘れる事はなかった。
間違える訳が無い。
あの手だ。


やはり触れたその手は、細く滑らかな肌でヨンは一瞬喉が詰まってしまう程だった。

胸が痛いと感じながらも、その手を引き徐々にその身体が霧から出て来て更にヨンは笑い出す。



「ユウンス!」
「・・・え?えぇ?!チェヨンさん?!」


「やっと会えたぞっ!!」


驚き大きな目を更に大きくし、

見上げるウンスを見下ろしヨンはその身体を抱き締めていた――。






(14)に続く
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ヨン、足掻きました笑✨👏









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