ジグザグ♧⑴
アパートの一階エントランスの入口でヨンは一人、外に視線を向け立っていた。
しかしその顔は満面の笑みを浮かべている。
既にトラックは着いていて、ウンスが自分のアパートから持って来た荷物を業者が忙しなく運んでいるのを横目に見ながら、今か今かとウンスを乗せたタクシーが来るのを唯ひたすら待っていたのだった。
数ヶ月間待った、漸くウンスと同棲という形でしかも婚約者として過ごす事が出来るのだ。
片想いで10年。恋人になって数ヶ月。そして今婚約者という立場になる事が出来た。
自分とウンスがここ迄辿り着いた晴れの日は、柔らかい陽射しが降りそそぎそれさえも自分達を祝福しているかの様に感じてしまう。
来年までには結婚式も考えたいとヨンは思っていて、ウンスに聞いてみようかとふと顔を上げると道の向こうからタクシーが近付いて来た。
自分もウンスと一緒に行くと言ったのに、アパートに誰かがいなければ引越し業者の人達が困るだろうと言われヨンだけが先に帰って来たのだった。
今まで一人で住んでいたウンスのアパートには、前に何回かお邪魔した事がありヨンも寂しい気持ちが無い訳ではなかった。だが、今の二人の新しい住まいにウンスも承諾してくれた事に感謝と、一緒に生きていく高揚感でヨンは浮かれる感情を抑えてもいるのだ。
いや、もう抑えなくても良いのだけど、限度無いとウンスから小言が来そうでその辺は考えてもいる。
・・・一応だが。
タクシーが止まり、後部座席から何時ものバッグを持ち出て来たウンスにヨンは数歩近付いた。
車が去った後、ウンスがヨンに振り向きニコリと微笑んで、
「ただいま、ヨン」
「おかえり、ウンス」
今日から同棲だと言うのに、言い慣れた挨拶にヨンは笑いが漏れてしまう。
「もう少しで運び終わるよ、中に行こう」
「そんなには家具も無いけど、また服を整理しなくちゃ・・・はぁ」
ウンスの手を握り、部屋へと続く廊下へと二人はこれまた慣れた様子で歩き始めていた――。
「あははっ、ヨン先輩おめでとうございますー!」
「あ?」
同棲祝いか?いや、コイツには既に祝って貰っていた筈だが。
キムはふふふっ、と笑いを小さくしてヨンの近くに寄って来た。勤務時間も終わり、さっさと帰る為に外科のスタッフルームから出ようとすると目の前にキムが立っていて大袈裟に拍手をしていたのだ。
「何が?」
キムはチラリと外科内を見渡した後、ヨンを見てにんまりと笑った。
「今年の“国際医療展示会”の講習会の講師にヨン先輩が選ばれましたー!」
パチパチパチ...!
「いやー、今年は秋に開催って言ってたんですよ。同棲した途端大きな仕事が来てしまいましたね!でも成功したら、評価も爆上がりですし、ウンス先輩がチャンスを持って来たのかもしれませんねぇ!」
「・・・は?」
ヨンがすかさず後ろを振り向き、外科内の医師達を見るとニヤニヤと笑う者、頑張れと声を掛ける者、ご愁傷様ですと祈る者と様々で。
「・・・・はぁあ?!」
ヨンには珍しく、病院内では出さない素っ頓狂な声を上げたのだった――。
⑵に続く
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今回は婚約者が応援しに行くのかも?
わぁ、
そうかぁー、今日は44の日でしたかぁー!
イラストは多分間に合わない気がしたので、おめでたい日にチラリと二人の同棲編を1話だけアップします☆
(o´艸`)幸せ良い良い~♥
