鈴の鳴る方へ(18)
「チェヨン君がまた誰かに呼び出されていたわよ」
「・・・また?」
昼休み何時もの中庭でユナとウンスが話していると、ビンが近付いて来て相変わらずだと言って来た。
「学生寮内には関係者以外は立ち入り禁止ですからね、彼を捕まえるのはもう学校だけになってしまいましたかね」
「塾に行っている時はそこを狙う女子生徒もいたんだけどねー」
ヨンは以前は習い事を幾つか習っていた様だったが、勉強を部屋でオンラインで習う事に切り替え学生寮で勉強をする様になった。
「だけど塾の時間があるから本当に食堂があるのは有り難いですね」
ウンスが言うと受験生の二人は全くだと同意をし、大きく頷いた。
ウンスもだが、それぞれ塾に行く時間は違う為帰って来てから食事の用意があるのは本当に有り難いと思っている。
「・・・でも、チェヨン君が部屋で勉強する事に切り替えたのは意外だわ」
「・・・何か執拗い人でもいるのではないですか?」
ビンはそう言い、飲み物を飲んでいる。
ウンスは何も言わずその姿のビンを横目で見ていた。
ウンスが何か出前取る?と尋ね、ヨンは即座にいいのですか?と聞いて来た。
「食堂でも良いけど・・・」
「出前取りたいです!ウンス先輩の・・」
「私の部屋に決まっているでしょう」
まだ言うのか?
「あ、そうなんですか」
それでもウンスがいればよい。
ヨンは機嫌良く荷物を本棚に仕舞っているとスマホが鳴った。
テーブルのスマホを取り、眉を顰めてヨンが取らずに見ていると着信が止まり、――また鳴る。
「取った方が良いのでは?」
冷たく言うビンにはぁ、と気の抜けた返事をしてから画面をタップすると相手はメヒで、やはり何故学生寮に移ったのか?家からでは駄目だったのかと問うて来た。
『一人で大変だったら、ウチに来れば良かったのに』
道場の師範と父親は知り合いでもあり、確かに何かあればメヒの家を頼れば良いとも言われていたのだが。
「もう高校生だから一人でも大丈夫だから」
その声にウンスとビンは顔を見合わせてしまう。
着替えと物に無頓着で、下手したらデートに普段着で行っていたかもしれないヨンが一人で・・・?
後々彼が恥をかく事になっていただろうに。だが、しっかりとした体躯で、成績優秀な彼が唯一少年らしい、まだ幼さが見えた所だとも言えた。
「・・・え?場所?」
ビンがギロリと睨んで来て、ヨンはその眼差しを受けウンスをチラリと見ると顰めた顔になった。
「中学生には関係無い場所だし、ここは関係者以外立ち入り禁止なんだ」
教えられないよ、と話すヨンにウンスは無意識に息を出していた。
この間の彼女等まだ優しい方だ。きっとこの子はヨンと幼なじみなのだろう、そしてこの子もヨンに対して淡い恋心を持っているのだ。幼さ故の積極性と行かないで欲しいと思う独占欲感情、それが後にちゃんとした愛に変わりヨンを想っていくのかもしれない。
・・・彼がここに入らなかったら、どうなっていたのだろうか?
荷物に視線を移しはぁーとため息を吐いてしまうウンスの近くにビンが座り荷物の箱を開けながら、小さい声で話し出した。
「確かにこれは私達には無関係であり、口出しする権利はありませんからね」
しかし、この寮はチャン家の物ですから。その中までは入り込ませる事はしません。
「チャン先輩・・・」
彼の表情は既にあの高麗時代の彼に戻っていて、ウンスは安心してしまうのだ。
電話の向こうはまだ納得がいかない様で、ヨンの顔が呆れている様でもあった。しかしまた、は?と顔を顰め何か言おうとしたが、切れたらしくおい、と声を出しスマホを見ている。
「切れた・・・」
「怒らせたのでは?・・・君、罪作りだな」
「違いますよ、あの子少し気が強いんです。こっちの話し聞かない時があるし・・・本当に困る」
・・・何故かウンスはグッと前のめりになり、耐えている。
――・・・やばいわ。昔ヨンから叱られた時よく言われていた事だったわ。
夫婦になり喧嘩等は無かったが、言い合いになる事は偶にあり、その際ヨンからは度々注意を受けていた。
――貴女は、俺の話しを聞いていないでしょう?だから、目が離せない。前しか見ていないのだから。
ぐるりと全体的に視野を広げて見ていたヨンと、真っ直ぐ前しか見ていなかった自分。生きていた世界の違いが、こういう所で出ていたのだとウンスはわかっていてヨンもそれはわかっていたのだろう。
だから常にヨンはウンスに言っていた。
――・・・何時でも離れません。貴女が何処にいても直ぐに見つけます。
・・・今は?何処に行っているのよ?
ウンスは、拗ねた気分になりまだスマホの画面を見ているヨンの横顔を見ていたのだった――。
それからヨンは素早く動き、塾をオンラインに変更し真っ直ぐ学校から帰って来る様になっていた。
その子なのか、その家になのか、関わらない様にしている様に見え、大丈夫なの?とウンスが心配してしまう程に。
――・・・だが、やはりと言うか。
案の定放課後学校から出ると、可愛らしい制服を来た彼女が門の前でヨンを待っていた。
帰る生徒達が何だ?と少女を見ていくが、その子がチラリと睨むと慌てて視線を逸らし離れていく。
「・・・・・」
「・・・まぁ、予想はついた」
やれやれと声を出し、ウンスとビンが横を通り過ぎ様としたが彼女はビンの顔を見て呼び止めて来て、
「あの」
「はい?」
ビンだけ向き、ウンスは素知らぬ方に視線を漂わせている。メヒは二人をじろじろと見てから話し出した。
「もしかしてヨンと同じ寮の方ですか?」
「はい」
「場所は何処にあるのですか?」
「チェヨン君から関係者以外立ち入り禁止だと言われていませんでしたか?」
「・・・はい」
「でしたら、私も教えられません」
彼が自分の関係者では無いと貴女を判断したのだから。
ビンの言葉にメヒは驚いていたが、直ぐに眉を上げ機嫌が悪くなったらしくむうと口を歪ませた。
・・・あ、似てるわ。
偶に拗ねた表情になるヨンは眉を顰め、口元を歪めている。
付き合いが長いのか、真似ようとしたのか、
仕草が似る程想っているのだとウンスはため息を吐き下に視線を落としてしまうのだった――。
(18)に続く
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ゆっくり進んでいますかね〜
チャン先生、冷たい。(仕方ない)
🐧参加しております🐧
にほんブログ村
