イトシイイトシイイウココロ㉗
はぁー、と何回目かのため息をヨンは身体を横にしたまま吐き出した。
同じ部屋にウンスがいるのに素直に寝れる訳がないだろう。チャン侍医はよくこの方と二人きりで診療所にいる所を見かけるが、彼奴は何も思わないのか?感じないのか?あんなにこの方に尽している様に見えたのに。
あぁ、そうか、彼奴はそういう性格なのか?
どうとは敢えて言わないが、おそらくそうする事で己を満たすのだな。・・・等と余計な考えで紛らわしている自分もとんだ間抜けなのか・・・。
何なんだ、この甘い香りは・・・。
匂い袋だとわかっている。そうでは無く、それとはまた違う香りも感じて、おそらくウンスの身体から放たれているのだというのもわかっている。
天界から連れて来た時からずっと嗅いでいるのだから、すっかり覚えてしまった。
「・・・あ、意外と美味しい」
一人でも酒に舌鼓をしては感想を述べている。
誰かが横にいる訳でも無いのによく口が動くものだ・・・いや、この方が話しているのはずっとだったな。
眠れないヨンははぁと息を吐き、顔だけを上げウンスを見た。
「酒ばかり飲むのは止めて下さい。ちゃんとものも食べて・・・」
「食べているわよ」
「嘘ですね、減ってない」
何で知っているの?持って来て貰った時にチェックしてたの?
ウンスはグッと詰まり、渋々箸を取り先程テマンが持って来たつまみを取った
「さっきお菓子沢山食べちゃったのよねぇ」
「知りません、そんな事」
菓子の後に酒を飲むのは苦しくならないのだろうか?そう問いたいが、言葉に出したらきりがなくなりそうでヨンはまたため息を吐き頭を枕に付けた。
「ほほほ、眠れないなら子守唄でも歌ってあげようか?」
「結構です」
「寒くないの?布団被った方がいいんじゃない?」
「暑いのでいりません」
寝ない子供にやる事だろうが!と微かに苛立ってしまう
「・・・あれじゃない?何時も一人で寝てるから、一人の方が良いのかもしれないわね」
「・・・違います。なので、医仙はいて下さい」
また外で酒等飲ませられない。
気持ちが落ち着かない、だが、今の時を終わりにしたくないとも思っていて。
・・・一人。あぁ、そうだな、何時も一人だ。
ウンスはつまみをぱくりと口に入れ、口を動かしながら、
「・・・どうしてチェヨンさん、ここで寝ているの?自分の部屋では駄目だったの?」
「・・・・・」
――・・・貴女がそれを聞くのか?
瞑っていた目を開けた。
少し間の後、むくりと起き上がったヨンはそのまま胡座をかいた状態で腕を組み、正面のウンスを見つめた。
今は二人きり。遮る者もいない。
自分の気持ちを吐いたら、貴女は何て答えてくれるだろうか?
・・・貴女がチャン侍医を慕っているのなら、
俺は今、ここで、想いを切る――。
組んだ手が胸元に仕舞った手巾を撫で、感触を覚えた。
「・・・聞きたいですか?俺がここにいる理由。
・・・俺も医仙に聞きたい事があったんです」
㉘に続く
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短いですねぇ。
ウンスさん酒飲んでますけど、ヨン氏頑張るの?´-`)
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