ジグザグ◇(27) | ー常永久ーシンイ二次創作

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ジグザグ(27)




「・・・おいキム、本当か?」

さっきの同僚がキムにまた近付き焦った顔で聞いて来た。キムは食べていた皿を置いてはぁとため息を吐くと少し離れた場所にいる二人に視線を向けた。
「・・・あの男」

聞いた話では間違いではない。ウンスがヨンとあのユジンとの見合いに乱入して中断したとキムはパク医師とウンスが話しているのを聞いていた。
最初は驚いたがウンスがヨンに対してそういう行動をした事に、キムは何故か嬉しくなり寧ろ晴れやかな気持ちになっていたのだ。
あのユジンはあれから病院には来ていない。
しかしユジンが病院に来なくなり、ウンスとヨンが恋人同士だと病院のスタッフ達も知っている筈なのに、何故かウンスに対してのおかしな噂が消えなかったのだ

「・・・それが本当なら、ユ先生、少しおかしいんじゃないのか?」
同僚の言葉にキムはジロリと隣りを睨んだ。
「おい」
ウンスがおかしいだと?
何言ってやがる。おかしいのは・・・


「・・・あぁ、やっぱりオウ先生でしたか」
ヨンは無表情のままずっとオウを見ていたが、言葉を吐くと微かに口端を上げる。
オウはヨンの言葉には反応せずまた話始めた。

「もしかしてチェ先生、何か弱みを握られているのではと思っていたのですが。彼女気性が激しいでしょう?あの性格だと中々別れるのは難しいですよね?」

別れたのか?と聞いて来て、だが仲が良いんですね、とも言っていた。
何を根拠に聞いて来たのか。

ヨンはゆっくりとオウに近付くと、背の差でヨンのが高く見下ろす形になる。少し怯んだオウだったがまだ表情を変える事は無く、静かにヨンを見ていた。

「ウンスが気性が激しいのは昔からです」
「あぁ、そうだったんですか?ではずっと大変な思いをしてきたのですね」

ヨンがウンスで長年苦労をしてきたかの様な言い方に、キムは流石にカチンとなり足を進め様としたが直ぐに止まった。
何とヨンは病院では珍しい程のにこやかな笑顔をオウに見せていた。

「はい、ずっと大変な思いをしてきました。おかしくなる位に」
言葉とヨンの表情が合わずきょとんと目を丸くしてしまうオウと、それを見ている周りのスタッフ達も見た事ないヨンの笑顔に固まっていた。

「え・・・」

「・・・見合いの話を何処で、誰から、聞いたのか想像は付きますが、ではその後の話を聞いていないのですか?」
ヨンは笑いながら聞いて来て、オウは戸惑い始めている。
「・・・いや、それは」
「聞いていなかった?あの女も巻き込まれたくないから余計な事は言わなかったのですね・・・。
あの時ウンスは俺に詐欺で訴えると言って来たんです」

詐欺で訴える?!
いやいや、本当にユ先生おかしくなっているじゃないか?!
会場で二人の話をほぼ全員が聞いていたのだが、そのウンスの行動は誰が見ても異常だとわかる。
ヨンを逃がさないウンスの執着はとても理解は出来ない。
「・・・流石にそれは理解出来ないですね」


「はい?そうですか?ウンスが俺に訴えると言ったのですよ?・・・こんな幸せな事はないでしょう?」


・・・・・ん?
・・・・・え?
・・・?

会場がしんと静まり返り、誰も話すのを止めた。

ヨンに視線が集中しているが、彼は無表情から一転し爽やかな笑顔を見せている。
先程からヨンの笑顔と言葉が全く合っていないのだ。

「何だって?おい、キム・・・」
同僚は意味がわからず隣りのキムに助けを求め様と見ると、キムはテーブル側に向いて笑うのを耐えていた。


「・・・ほらね、おかしいのはウンス先輩じゃないんだよ」


ヨンはあの時、嬉しくて仕方なかった。
あれはウンスが自分に見せて来た怒りじゃないか。
何とも思わなかったら、見合い会場に来もしないのがウンスなのだ。
彼女がヨンに見せた執着だ。

ヨンはそれを何年待ったと思っているのか?

「でもそのまま別れられたら困るので、俺は必死にウンスにしがみついて止めましたがね。
・・・ウンスの為にあの女と見合いをしたのにウンスが去るだなんて有り得ないですから」

じりじりとオウとの間合いを詰め真下を向くヨンにオウは後退りしていく。
「あの女はどうでもいい。ですがオウ先生、貴方会社にウンスの出鱈目な噂を流しましたね?」

この病院みたく。

「突然の契約停止、理由を聞いても教えてくれない。面倒臭いが、あの女に迄電話を掛けましたよ」

ユジンが言うには病院に行かなくなってから突然電話が掛かって来て最初はヨンだと思い嬉しくて出てしまったという。しかし別な医師で話では最近ヨンの様子がまたおかしくなったとの事で、何か知らないか?と質問をして来た。
原因だとしたらあの見合いではないか?と話すとその医師はウンスという女性は少しおかしいのだと言ってきて、ヨンを心配しているとも言っていた。話はそれきりで掛かっては来なかったらしいが。
ウンスと契約している会社としては大きな病院からの情報を疑うのは難しく、何方を信じるとなったらそりゃ病院だろう。故にウンスのクリニックとの取引を止める事にしたという。


「・・・あの会社はもう契約を結ばない、だからどうでも良いんです。・・・でも、オウ先生」



ユジンとの電話を切りスマホを置き苛立ちに机を指で叩いていると、同じ科の看護師がおずおずとヨンに声を掛けて来た。

知っている、親睦会の事だろう。
少し前にメールで流れて来ていたのだ。

良い場所があるじゃないか。
ウンスが病院にいた1年間、恥をかき、苦悩した分、
彼にも味わって貰おうか?


「・・・オウ先生に聞きたかったのは、ウンスには俺がいるのに振り向いて貰えると思っていたのですか?」


大学生時代からウンスの傍にヨンはいた。
誰もが振り返る美男の彼を見て来たウンスが、自分を見るとでも?
今だって、彼女がいるというのに女性達が群がる程の男の次に選ばれるとでも?



「オウ先生は、何を勘違いしていたのですか?」

自分の美しさを自覚しているヨンの言葉。


ヨンは色気ある眼差しでオウに微笑むと、オウは真っ赤な顔で驚愕し、女性達はヨンのその顔を凝視し固まっている。




「やばい!腹痛い!!」

堪えられないとしゃがみ込んで大きな声で笑い出したキムと、数年前の事情を知っているスタッフ達は思わず吹き出し顔を背け声を出さず肩を震わせていたのだった。






(28)に続く
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ウンスの為なら自分の顔でさえ武器として使う男。