ジグザグ20
「・・・へぇー、ウンスはその時そう言っていたんですか?」
「私達もチェ先生にお礼言ったのかなぁ?と心配していたんですよね」
「大丈夫ですよ。言葉では無かったですがちゃんとお礼は沢山頂きましたから」
男性らしいのに綺麗に笑うヨンの顔を見てスタッフ達は惚けているが、今さらりとこの男は人前で凄い事を言ったのを誰もわかっていないのか?
ウンスは真っ赤になりながら、店の閉店作業をしていた。
早めに病院の仕事が終わったヨンはそのままウンスのクリニックに迎えに来て、そこをスタッフ達に見つけられてしまった。
スタッフ達は近くでヨンを見れる事が嬉しいのか、掃除をしながらもチラチラとヨンを見ては何かと話し掛けている。
・・・全く何時までも変わらない光景だわ。
はぁーとウンスはため息を吐いてしまう。
そういえばとスタッフがウンスを見て首を傾げていた。
「しかし、よくこんな暑いのにハイネックの服なんて着ますね?」
「・・・・・虫に刺されたくないのよ」
その言葉にウンスはこめかみにピキリと血筋マークが付いたのだが、気付いたのはヨンだけだろう。
しかしそのヨンもにやけるだけで何のフォローもしない。白衣の下にはハイネックの服を着て一日中暑いし、苦しいし、不快指数が半端なく高くなっていたのだった。
ヨンはそんなウンスをチラリと見て笑いを堪えながら話している。
「・・・本当だね。きっと帰ったら汗が凄い事になってるかも」
「・・・そうね、帰ったら多分八つ当たりすると思うわ」
「え?」
ヨンが驚いて振り返るがウンスの後ろ姿で顔がわからない。
・・・えぇ?そんな・・・
しょぼんとしてしまうヨンを無視してウンスはパソコンを操作した。
一体誰が身体中に痕を残したと思っているのか?
二日経っても少しも消えもしない。
多分考えなしに付けてしまったのだろうとわかるが、暫く隠さなくてはいけなくなった事と、お風呂に入る度にあの夜を思い出してしまいウンスは入浴中もまともに自分の身体が見れない状態なのだ。
・・・いや、私もあの時はそんな事を考える暇も冷静さも無かったが。
我を忘れてしまうとは本当に恐ろしい。
「ウンス」
パソコンを操作しているとヨンが近付いて来た。
近くの椅子に座り何をする訳でも無く、ウンスの手元を見て微笑んでいた。
「何?」
「指輪は外さなかったんだね?」
ん、と息を止めて見てしまいウンスは少し照れながらも自分の薬指を見た。
「流石に・・・外さないわよ」
ブレスレットやネックレスは仕事中邪魔になってしまう為外したが、指輪は外さなかった。
爪も伸ばせない、過度なお洒落も控えてきた人生で唯一譲れない物になっていた。
しかも折角ヨンが嵌めてくれたのに。
「・・・嬉しいな。ウンスは俺の恋人だからね」
そうとウンスの指を撫ではぁと息を吐きながら言うヨンを何だか愛しく思えてしまい、ウンスは苦笑してしまう。
あれからヨンは言葉に出してウンスに想いを告げる様になり、またウンスも素直に応える様になっていた。
「・・・じゃあ、ヨンも何か付けてね?」
「ん?」
「私だけなのは何か嫌だし。そもそもヨンの方が心配だわ」
「心配?」
きょとん顔のヨンにウンスは眉を顰める。
きっと女性から狙われている事を本人はただ嫌がっているが、ではどれ程の争いが裏で起こっているか等は昔から考えていない様だった。
何処かの病院の娘がヨンを狙っているという情報は事実らしく、スタッフの知り合いの看護師がわざわざクリニックに来て教えてくれたのだった。
スタッフ達は早く婚約しろと急かして来ているがそこ迄二人の話は進んでいない。だからヨンにはウンスという恋人がいるという証拠を付けて欲しかった。
・・・あぁ、私の悪い癖が出て来たかな?
執着心が出て、ヨンがウンスを煩わしいと感じたら嫌だと思っている。『恋人』という位置にいる自分を段々と重く感じて来るかもしれない。
ウンスは次に次にと望んでしまう自分が嫌だった。
「・・・俺の事心配してくれるの?」
すいと顔を近付け、囁いて来るヨンにあの息遣いを思い出しウンスは顔を赤くした。
「違う病院だから、そっちの事なんてわからないもの・・・」
拗ねた言い方のウンスが可愛いとウンスの手を握る。
「・・・先月一緒に来て欲しいって言っていたの覚えてる?」
先月だ。見合いがあるからと断った事を思い出した。あの時にウンスとヨンの数年の食い違いに気付いた訳だが、お互い傷付いた出来事だともいえた。
「・・・それは、覚えてるわ」
「・・・あの時ウンスと一緒にあのビルに行こうと思っていたんだ」
「?」
「見合い相手に自分はこの人と付き合っているから、お断りしますって言うつもりだった」
「えぇ?」
・・・いや、でも待って?
「・・・でも、それは大丈夫なの?ヨンの親族が組んだお見合いなのに私が行くだなんて・・・」
「だから・・・そのまま俺の実家に行ってウンスを紹介するつもりだった・・・だけど」
顔を下げてボソボソと話すヨンは、あの時紹介したらまた違う問題がウンスとの間に起こっただろう事に、
しない方が良かったのだと今は思っていた。
だけど、今は・・・
「・・・それに何時かウンスの両親にご挨拶したかった」
大学生時代に一度聞こうとしたが、ウンスの笑顔にまだ止めておこうと思っていたのだった。
「田舎の農場よ?大丈夫?」
「行く事が?それとも合わないって?」
膨れて拗ねるヨンを見て笑ってしまう。
指輪を付けている手を握り絡めて来てヨンは顔を近付けて来た。焦ったウンスは周りにスタッフ達がいるのにと顔を背けてしまう。
「何を・・・まだ仕事中なのよ?スタッフ達も・・・」
「さっき帰ったけど?」
「えぇ?!」
ウンスは驚いて周りを見渡すがスタッフ達は全員いなくなっていた。
「俺がいるから後は良いよって言ったら、ウンスにお疲れ様ですと伝えて欲しいって言って帰ったよ」
・・・あの子達っ!早く婚約しろと急かしていたから関係をわかって敢えて?
そう言いながらもヨンの手はウンスの腰に回っていた。
「暑くないの?その服脱ぐ?」
わかって聞くヨンの頬を抓る。
「こんな所で脱がないわよ!」
「・・・じゃあ家でね」
何方の家の話なのだろうか?
あぁ、もう。
言葉に出す様になったヨンには有り難いが、これからの予感もさらりと出して来る様になってしまい、
ウンスは恥ずかしいのにその返事迄答えなくてはならなくなったのだ。
座るヨンの膝上に乗せられ腰を抱き締められ、顔を上げウンスを見つめて来るヨンに小さくため息を吐きながらもヨンの首に手を回した。
「・・・家ならいいわ」
その返事にヨンは満足気に笑いウンスの唇に自分のを近付けていったのだった――。
終。
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ここ迄読んで下さりありがとうございました。(*^^*)
まだ疑問の所もありますが、それはまたこのシリーズの時に。
※19.5話は後程。☆
個人的に明るい話で楽だった気がするかなぁ・・・☆
