ジグザグ11
ヨンからメールが届き、指定されたのはあのお見合いをセッティングされたレストランだった。
そして文面の中には、今迄付けていなかったアクセサリーも持って来て欲しいとの事も入っていた。
あの展開でウンスがプレゼントを付けていないとヨンも気付いたのだろう。
ウンスは押し入れから箱を引き摺りだし、箱を開けると贈られた時のままの状態のプレゼントを紙袋から出した。
中には小さな花が付いているブレスレットと違う袋にはネックレス、ストール等、毎年重なる事無くヨンが選んでいたのだとわかった。
それぞれに入っているメッセージカードを読むと、贈るだけで申し訳ない、本当は自分の手でウンスに付けてあげたかった事が書かれてあり。
そして最後には必ず、
『ずっと好きだ。早く会いたい』
との言葉が綴られていた。
「・・・言葉で言われた事なんて無かったのに」
だが、ウンスもヨンに言葉では何も伝えていなかった。
あぁ、そうか。それも怖かったからか。
言える勇気も無かったのだ。
言葉で想いを告げる事に勇気がいるのは幾ら歳を重ねても変わらず、
もしかしたら若い時に伝えていればまだ楽だったかもしれない。
ウンスはブレスレットとネックレスを入っていた小さい箱に戻し、それをバッグに入れると、箱の一番下にある破いた手紙を取り出した。
泣きながら破いた手紙は自分の淡い恋心と一緒に箱の底に埋まっていた。
光沢のある薄水色の封筒は変色も無くその時のままで、今思えばあの時は20代後半だったというのに何て幼く古臭い事をしてしまったのか。
手紙をテーブルに置き、引出しから新しい便箋と封筒を取り出しボールペンを手に取った――。
ウンスはまたあのビルの前に立っていた。
だがこの間と違うのが今は夜だという事で、
外は夏特有のじんわりした暑さをまだ残していた。
再びエレベーターの中に入り顔を上げ変わっていく数の表示を眺めていた。
ここから帰る時は、二度とヨンとは会わないと思っていたのに。結局は自分の中には彼がずっと残ったままだった。
離れ様と思えばもっと前に出来た筈なのに、しなかったのはそういう事なのだと今ならわかる。
エレベーターから出ると昼間とは一変して、全方位の夜景が素晴らしく綺麗だった。
思わず立ち止まっていたが、夜景が良く見えるディナー席に通され向かうと
ヨンが既に座っていてウンスに顔を向けていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
言葉無くヨンの向かいに座るがヨンはウンスをまだ見ている。しかし、何方から何を切り出せば良いのか食事が運ばれても暫くお互いを窺い会話も無かった。
ヨンと食事をしてこんなに気まずく静かになるのは初めてかもしれない。
ウンスは何故かおかしく苦笑してしまう。
「・・・やっぱり嫌だった?」
苦笑するウンスにヨンは眉を下げ尋ねて来た。
色の失せた顔を伏せているヨンを見て、
ウンスは彼をここ迄臆病にさせているのは自分なのだと理解した。
(12)に続く
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落ち込み具合が半端ないって~。
ウンスはヨンの気持ちを知り少し落ち着いたかな?
