イトシイイトシイイウココロ㉒
――しかし。
今し方典医寺に向かった筈のヨンが兵舎に戻って来た。
出て行ったばかりのヨンが直ぐ戻って来た事に広間にいた隊士達は驚いていたが、いつにも増して声を掛け難い空気を放ち二階に上がって行く姿に自室に入る迄ただ見つめるしか出来ずにいた。
二階の廊下の奥から荒く扉が閉まる音を聞き、トルベははぁーとため息を吐いた。最近何回ため息を吐いただろうか?そう思いながらも、横にいた隊士に顔を向ける。
「副隊長に伝えてくれ。また隊長が何かあったようだと・・・」
伝えたところでチュンソクも何も出来ないだろう。
しかし、隊長の機嫌は我々にも関係してくるのだ。
用心に越したことはない。
王宮で広まっている隊長の噂を聞いて、迂達赤隊士達は直ぐにその内容がわかった。しかしだからといって、自分達の隊長の話を面白可笑しく広げるつもりは毛頭無い。
隊長のそんな行動を数年前から見ていたが、今回は前の様にこの世にいない相手では無いのだ。だが相手は天のお人で、はたしてそんな望みを持って良いのかも自分達には判断出来なかった。
それでも、自分達の隊長の幸せを願うのが迂達赤隊で話のネタにするのは隊長の想いが成就してからで良いと考えていたが・・・。
・・・あぁ、結局は天のお人のお気持ちなのだ。
・・・だが、最近はずっとこの様な状態で迂達赤隊士達も諦めて来ている者迄出て来ている。
「最近の隊長は本当にどうしちまったんだ?我々にする様に強気で行けば良いではないか・・・」
隣りに来たチュソクがトルベに話し掛けて来たが、何言ってるんだ?とトルベは返した。
「・・・女人でしかも、この地の方で無い方に、お前なら何て言うのだ?断られて終わりでは済まないぞ。
そのまま王宮を出て天界に帰りたいと言って来たらどうするのだ?」
「・・・それは何とか、話し合いを・・・」
「・・・お前・・・あぁ誰もいねぇか?・・・だったら妓楼にでも行って来い」
「・・・妓楼て。何故あんな所等・・・」
「・・・そういう事を言う奴はわかってねぇからだ。妓生の身体触る事だけが妓楼じゃねぇって事」
「・・・・・」
トルベの呆れた眼差しにチュソクはグッと口をへの字にした――。
※夕刻時※(少し前)
ヨンが兵舎から出て典医寺に向かい薬草園に入ろうとした時、
中からウンスの声が聞こえたが誰かと話している様子に、入口の板張りに乗せ様とした足を止めた。
相手の声はチャン侍医と他にも薬員もいるのかウンスの明るい声が聞こえ、その声で自分の今の姿に気付き戸惑ってしまう。ヨンは兵舎から出てウンスの部屋に向かう事しか考えていなかったからだ。
何て事だ、しかも来たは良いもののウンスが一人で無い様子に入る事も出来なかった。
だがそのせいか、先程より冷静になったヨンは自分の行動に落ち着けと息を吐いた時にまた薬草園からウンス達の声が聞こえた。
「・・・チャン先生?」
先程とは違う少し低めなウンスの声にヨンは何故か息を止めてしまった。
「はい何でしょう・・・?」
チャン侍医もウンスと同じく静かな声だった。
「・・・後で聞いて欲しい事があるんだけど・・・」
「・・・では、後程其方に伺います」
二人の会話はそこで途切れた。
――やはりそうではないか。
「・・ッ」
ヨンは素早く踵を返すと薬草園に入る事無く、
再び今来た兵舎へと足早に帰って行った。
㉓に続く。
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女人が部屋に呼ぶのはなぁ・・・
武閣氏がいるとはいえね。
そろそろヨン怒る?かな・・・。
