「なるほど、では天界では脈診はしないと?」
「しない訳では無いけど、患者さんにはほとんど聴診器を使うの」
「チョウシンキ?」
「患者さんの心音や呼吸音を聴くことが出来るんです」
「心の音・・・」
「でもこの世界にはゴム製品が無いものねぇ・・・」
「・・・?」
他に似た様な素材はあったかしら?
典医寺でチャン侍医と脈診の練習をしていたウンスは、現代ではあまり脈診はしないと言いそんな会話になっていた。
「なるほど以前イ・ソンゲの治療の際に腹に顔を付けておりましたが、そういう理由があったのですね」
「腸の流れや雑音を聞こうかと・・・」
チャン侍医はウンスの手首に指をあて次に首、耳の下と指をあてていく。
「脈の流れはある程度このあたりでわかりますが・・・」
「チャン先生は脈診で何の症状かわかるから良いけど、私はまだ無理だわ!
・・・はぁ、まだまだ教えて貰わなくては駄目ね!」
チャン侍医は拗ねた表情で口を尖らせたウンスに少し眉を下げたが柔らかな笑みを返した。
「素晴らしい医術をお持ちなのにまだ学ぶと?」
「あら?私の医術は天界で学んだものだもの。
それでもこの時代には通用しない事も多いし、色々思い知ったし・・・」
「ふふっ・・・」
あ、と呟きふと顔を上げ小さく笑うチャン侍医を上目遣いに見つめるウンスに、チャン侍医は驚き目を見開いた。
そして同じくウフフと笑うウンスに、何かよからぬ事を思いついたかと眉を下げる。
「どうなされました?」
「チャン先生、そのままジッとしてて!動かないでね」
そう言うや向かいに座っていたウンスは立ち上がり、座っているチャン侍医の横に来ると、戸惑うチャン侍医を自分側に向かせ何とウンスは膝を付いてチャン侍医を見上げた。
「・・・は?医仙?」
「まぁまぁ・・・」
そういうと顔を正確には耳をチャン侍医の胸に付けるウンス。
近づくウンスに驚愕し硬直してしまうチャン侍医を他所に、はぁーと感嘆のため息を吐くウンス。
「久しぶりに心音を聴いたわ」
「・・・」
ウットリと目を閉じるウンスとは反対に狼狽し始めたチャン侍医は、どうする事も出来ず動く事も出来ない。
ウンスが落ち込んだり、泣いたり、興奮したり、その時は何かと世話をしてきたチャン侍医だがそれは何も患者としてただ見ていた訳ではないからだ。
この方が天界に帰る時まで心穏やかに笑顔で過ごして欲しいと願いながら出来るならこの地に・・・と、それは天界の者に対して思ってはいけないと密かに自分の奥深くにしまい込んだ気持ちだった。
幼子の様に自分の感情を表す彼女はとても眩しく愛おしい。
患者を治療している際の彼女と今の彼女のこの差は何なのか?
可笑しくて笑うのを抑えきれない。
「・・・クク、ふふふ」
「チャン先生?くすぐったかったかしら?」
「いえ、聴こえましたか?私の心の音が?」
「ん?ええ、最近聴いてなかったから嬉しわ・・・あぁでも心音を聴きたいだなんてねぇ・・・」
職業病かな、私って何か変よね・・・。
呟くウンスを見下ろし自分の胸元にある頭の上にそっと手を置いた。
「変ではありませんよ、私も薬草の匂いで落ち着く事もあります」
「薬草?ふふ、チャン先生らしいわねぇ。
・・・あ、でも私も天界では花の香りで気持ちを落ち着かせていたわ、アロマっていってね・・・」
「ア・・・?」
「お香ね」
「あぁ、なるほど・・・」
二人でそんな会話をし笑っていたが、チャン侍医はチラリと視線を窓に移し見た。
時間切れかと苦笑をしたと同時に、
荒々しく入口の扉が開きチェヨンが慌てて入って来たが、その顔は驚愕になり次第に怒りに変わっていった。
目の前では椅子に座ったチャン侍医に立ち膝で、抱きついているウンスがいたのだった――。
②に続く
▲▲▲▲▲▲▲
ヨンやウンスの自覚の無い片想いも好きです。
・・・まぁ、そんなお話です。
(※2022・10修正しました)
(※2025・8少し修正しました(*^^*))
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