「ブレヒト」 岩淵達治著 清水書院 | ブログで書斎

「ブレヒト」 岩淵達治著 清水書院

   はじめに ―― ブレヒトとわたし     (3ページ)

 ブレヒトを今世紀の偉大な思想家のひとりに数えてもまず反論する人はあるまい。だがわたしとブレヒトの出逢いは、個人の精神史にとって大きな体験となるような偉大な思想家との最初の触れあいとしてはいささか奇妙なものだった。それはブレヒトが、思想家であるよりも前に演劇人であり、演劇と思想という、ふたつ並べてみるといかにも収まりの悪い領域を結び付けようとした先駆者だったからであるらしい。わたしのブレヒトに魅せられるきっかけ」になったのは、まがりなりに(も)自力で原書で読んだほんの数十ページの「演劇のための小思考原理」という演劇論だった。大学を出たばかりの1951年のことだった。


         ・・・ 中略(4~11ページ) ・・・


 
ブレヒトが別の時代に生まれていたら「花開いたリンゴの樹」の美しさに詩的感興をそそられて、純粋に芸術的な詩を書いただろうかなどという問題は提起しても意味のないことである。それよりもヒトラーの演説についての驚きを作品の対象にせざるをえなかったブレヒトが、いかにしてこの対象を芸術的な形式に扱いうるかという問題で、苦闘をかさねた跡を知ることのほうが重要だと思われる。これこそ<政治作家>ブレヒトの芸術の問題である。そういう意味でこれから彼の生涯と作品を特に生きた時代とのかかわりにおいて見てゆくことにしてみたい。





 ↓この書籍

  岩淵 達治

  ブレヒト

※ ベルトルトブレヒトに関する書籍を アマゾンで検索したところ

  この本を含めて70冊にものぼった。 読破する時間がほしい。