ある年老いた女性が、写真を撮ってもらおうと写真館を訪れた。この女性は南北戦争で夫を亡くしていて、それ以来いつも人を寄せつけない険しい表情を浮かべ、近所の子どもたちから恐れられていた。その日も彼女は、ふだんのようにいかめしい顔つきでカメラの前に腰かけた。
すると、カメラマンが黒い布の下から顔を出してこう言った。
「もう少し明るい表情でお願いします」
老女はいろいろ試してみたが、まだ暗く沈んだ雰囲気が消えない。
「もっと楽しそうに」カメラマンは平然として、自信たっぷりに指示を出す。
「わからない人だね!」女性はぴしゃりと言いかえした。「私みたいにしょぼくれた気むずかしい老人が、誰かに頼まれたからってすぐさまニコニコできるわけないだろう。明るく撮りたいなら、冗談のひとつでも言ってくれなくちゃ」
「ちがいますよ、そんなのは自分の心の持ちようです。もう一度やってみましょう」カメラマンのやさしい言葉に誘われて、女性はもう一度がんばってみた。今度は前よりずっとよくなった。
「いいですね、素敵です。さっきより二十歳は若く見えますよ」。そう声をかけながら、カメラマンは老女の顔をよぎった一瞬の輝きを写真におさめた。
女性は落ちつかない気分で家路についた。他人から素敵ですねとほめられたのは、夫が死んで以来初めてのことだった。彼女は心地よい余韻にひたりながら鏡をのぞいた。「あの人の言うとおりかもしれない・・・」
できあがった写真の中の彼女はまるで別人だった。若い頃のような、輝きに満ちた生き生きした表情。老女は長い間、食い入るようにその写真を見つめ、「一度できたことだもの、何度だってできるはずだよ」と自分に言い聞かせた。
化粧ダンスの鏡に向かって「キャサリン、にっこりするのよ」と呼びかけると、あのときのきらめきがまた蘇った。「もっと楽しそうに」と言うと、穏やかな笑みが顔一面に広がった。
やがて近所の人が彼女の変わりように驚き、こうたずねた。
「奥さん、すっかり若がえられましたね。何か秘訣でもあるんですか」
「心の持ちようしだいなの。明るく楽しい気持ちになりさえすればいいのよ」
iPhoneからの投稿