■少しでも距離を稼ぐため、一気に盛岡まで北上

仙台では13:41発の一ノ関行き3両編成の普通列車に乗り換えた。

ここでも列車は非常に混んでいた。
東京から仙台までは新幹線で来てここからは在来線を使う、という人も多かっただろう。
ここからは家族連れの姿も多く見られた。

ずーっとここまで本州の背骨を貫くように走ってきた東北本線は、
松島付近では海のすぐそばを走る。これがなかなかのロケーション。

途中、仙石線と並行して走る区間もあり、
たまに仙石線とすれ違ったり並走したりするのを見るとちょっとラッキー...。
・・・まあ、こんな楽しみ方はちょっと変かもしれない。

しかし、2011年の大震災による津波で、海沿いの多くの鉄路が破壊されて、
この原稿を書いている2013年現在でも復旧の時期が定かになっていない路線がある中で、
この東北本線が最も太平洋岸のすぐそばを走っているこの場所の線路が
こうしてしっかり繋がっているというのには、驚かされる。

松島の島々がどれだけ津波の勢いを止めてくれたのだろうか。
以前、2011年秋に友人とこの地域を訪れた際に、
松島の瑞巌寺を訪れた際にボランティアの方にお話を聞かせていただいた時のことを思い出す。
そして、自然の営みの大きさ、すごさ、強さを改めて考えさせられる。

そして列車は程なく海沿いを離れ、日本有数の米どころの只中を走っていく。

途中、14:25に到着した小牛田で1両切り離しとなった。

 


ここで他路線に乗り換える人もいたようだが、多くはこの先まで乗っていく乗客だったようだ。
車内の混雑に拍車がかかる。切り離し作業を終えた2両編成の列車は14:34に発車。
車両を切り離しても乗客の数はそんなに変わっていないので、
両数が減っても走りが軽くなった感じはしなかった。

 

宮城平野は、日本有数の米どころだけあってとにかく田んぼが広がる。
途中湖沼などもちらほら見えて、鉄道唱歌でも、
『新田は沼のけしきよし~♪』
と唄われるだけあって、このあたりの車窓風景はなかなかのものだと感じた。

小牛田から約1時間乗ってきて、15:22に一ノ関に到着。
一ノ関に着いたということは、気がつけば、既に宮城県を過ぎて
岩手県まで辿り着いたということでもある。

これまで通ってきた栃木県、福島県に比べると、
なんとなく宮城県はあっという間に駆け抜けてしまったような
そんな錯覚を覚えてしまった。
久々に実現したこういう形での"のんびり鈍行列車"の旅に
身体も慣れてきたということかもしれない。

 

 

 

一ノ関は以前中尊寺に行って来た時以来、4年ぶり程の来訪であったが、
特に何も変わった印象はなかった。
一ノ関駅前の雰囲気がなんだか好きなので、改札を出てみようか迷ったが、
ここでの乗り継ぎ時間もわずか5分と忙しなく。
結局改札を出ることなく、陸橋を渡って隣のホームに止まっていた
15:27発の盛岡行きの普通列車に乗り込む。

ここまでくると列車もワンマンカーが多くなってくる印象だ。
つまり、バスと同じように整理券をとったりして、
降りるときは運転手のすぐそばのドアからしか降りられない形式。
先頭車両には料金表も表示されている。

自分の住んでいる辺りではこの方式はまず見られないため、
自分の中では、そんなところも『なんだか遠くに来た』と感じる一場面である。

一ノ関を出てすぐ、列車は世界遺産にも登録された中尊寺や毛越寺などのある平泉、
ブランド牛で有名な前沢のあたりは北上川の土手を横目にひたすら田園地帯を走る。

 

 

右手には北上川、左手には田んぼの広がる盆地の向こうに
奥羽山脈の山々が延々と連なっており、普段関東平野の中で
山を見ることも少ない自分からすれば、この景色は非常に魅力的である。

 


列車はぐんぐん北上して、北上や、花巻を過ぎると、
車内はにわかに高校生の姿が多くなってきた。


日曜日なので授業の帰りというよりも部活帰りだったのだろうか。
ずいぶん大人数で乗ってくるので帰宅のピークの時間帯なのかと思っていたら、
どうやら、今日は盛岡で花火大会が予定されていたらしい。

日が少し傾いてきた頃、16:56に岩手県の県庁所在地盛岡に到着。

 


 

 

ここまでで上野を出て約10時間が経過していた。

東北新幹線が八戸から新青森に延伸して以来、
現時点での東北本線の最北端となる終着駅はこの駅になった。

ここからさらに北上する際は、IGRいわて銀河鉄道という
第三セクターの列車に乗り継いで行くこととなる。

気持ち的にもなんだか一区切りついたような感覚になるし、
やはり『遠くまで来た』という感慨も、心の中でだいぶ膨らんできていた。

仙台で途中下車せず、だいぶ時間と距離を稼げたので、
ここまでほぼずっと連続で乗りっぱなしの心身を休める意味で、
ようやくここで1時間ほどの小休止。

あまり食事をどこで摂るとかその辺のことを計算せずに
時刻表の都合だけで組んだぐだぐだ旅程である。
もともとこの旅では『その土地の名物に舌鼓!』という楽しみ方は
あまり含めていなかった。

しかし腹が減っては戦にゃならん。というわけで
『ここで一旦、ちゃんとした食事を取ろう』と改札を出て盛岡駅の駅ビル、
"フェザン"の地下街へ向かうことにする。