妄想最終処分場 -23ページ目

妄想最終処分場

好きなジャンルの二次創作ブログです。
現在はス/キ/ビメインです。
ちょいちょい過去活動ジャンルも投入予定。

*出版者様、作者様とは一切関係ございません。
*禁:無断転載、二次加工、二次利用



ひとりじめ‐4‐



誕生日を祝ってくれた気持ちがうれしくて。


4日後の女の子の告白に利用されるイベントデーも君の時間を独占できることがうれしくて。


君が愛を否定し避けていることも知っている。

いつも君がこの日に用意するのはお世話になっている人たちへの感謝のチョコレート。

なぜだか俺にはチョコではなく別のもの。

特別扱い…そう自惚れたい。


でも世間一般にはこの日はチョコレートに想いをこめて。
君からチョコレートをもらってみたい。子供っぽい我儘だとは思うけれど、今年はそのチャンスに恵まれた。


愛する兄の要求ならば、この妹は断るわけがない。



*****



『はい、兄さん』


夕食も終えて、シャワーも浴びて、ウイスキーをたしなんであとは寝るだけとなった時にそれは差し出された。


『…くれないのかと思った』

『寝る前にお酒飲むでしょ?それに合うかと思って』


どのタイミングで出てくるのか。

世の男と変わらず今日はそわそわしていた自分に苦笑するしかない。

好きな子からチョコレートを受け取るシチュエーションはどんな気持ちになるんだろうか?そう思っていたけれど、案外あっさりした自分の心持ちに少し驚いた。


包みを開けると控えめな量の生チョコレート。

寝酒習慣のあるカインに合わせて選んであり、そんな気配りに自分を見ているこの子にくすぐったさを感じて。


『こんな風にチョコレートばかり売って日本って変な国ね?でもいろんな種類のチョコレートが食べれるのは嬉しいけど…』


見れば自分用なのか、色違いの小箱を開けてチョコレートを味わっている。

俺のものと比較するとやや色が明るいからスイートチョコレートなんだろう。


付属のピックを突き刺して、チョコレートを齧った。ふわっと鼻に抜ける香りが確かにウイスキーとよく合う。


『ん、おいしっ!』


隣からかわいらしい歓声が上がった。

セツカにしては無邪気な表情で、チョコレートの美味しさに思わず素になったんだろう。


最近はセツカの表情を崩すことが少なくなっていたので思わず久しぶりにこぼれた最上さんの表情に目が釘付けになった。


『兄さん?どうしたの?』

『いや…』


俺の視線を感じて、あわててセツカの表情を作っている。


純情乙女の君なのに。

男の裸をみても思わず素をのぞかせることはないのに、チョコレートひとつでうっかり現れた好きな子の表情。


…チョコレートに嫉妬してどうするんだ。


グラスを煽って怪訝な表情をするセツカの目から表情を隠した。


『よかった、食べてもらえて』


ぽろりと、こぼれた言葉に思考が止まった。




…いま、なんて言った?



『…ん?』


あわてて逸らした視線を戻すと、作ったはずのセツカの表情がまたはがれかかっていた。


『………』


気まずそうに押し黙る様子が気になった。


『おいしい?試食で甘すぎなくて、お酒にも合うかと思ったんだけど…』


少し長すぎた沈黙の後に出てきたのは、その場を誤魔化すには下手くそなセリフ。

あわてて作ったようなセツカの表情には最上さんの焦りの色がちらりとに滲んでいたように感じた。


ここで逃してはいけない


…直感だった。




「どういう意味?」


逃げ出せないように、英語で行われた会話を日本語で中断する。


『…兄さん?』

「最上さん?」


抵抗するようにセツカの声で英語で兄と呼びかけてくるが、ダメ押しのつもりで日本語でこの子の本名をよんだ。


「…どうしたんですか?お芝居の途中で、敦賀さんらしくな…」

「答えて。今の、どういう意味?」

「どう、って…」


諦めたのかカインでない俺に合わせたのか、日本語で最上キョーコとして俺に『らしくない』という。

話を逸らされるわけにはいかない。


この子の言葉を遮って追及の手は緩めない。

目を逸らした隙に零れたさっきの言葉を思い返して、どんな表情の変化も逃すまいとじっと見つめて。


「食べてもらえて?」

「……」


「答えて?」

疑問符で返しても、押し黙るだけ。


「食べてもらえない、と思っていたの?」

「……」


期待する方向の答えが欲しいから、自然と追及も俺の願望寄りに変化する。

YesかNoかの質問なのに、答えは返ってこない。

表情は居心地悪そうに迷いが見えるが、次第に何も悟らせないようにと無表情に近くなる。


「カインのほうが欲しいと言ったモノなのに?」


追いつめている自覚はあった。

でもこの些細なきっかけを逃したら、きっと完璧にセツカの仮面をかぶり直したこの子を捕まえることなんてできない気がして。


俺の追及に耐えられないとばかりに、視線が逸らされて深く俯かれた。

これでは表情も読み取りづらい。


「最上さん?」


知りたい

きっかけが欲しい

君が何を考えているのか


答えをもらえず、わずかな手がかりであるその表情まで隠されて、情報を求めて俯いたこの子を覗き込もうとした。

膝の上できゅっと握られた拳がわずかに震えているのが目に入った。


怖がらせたいわけじゃない…。


おびえるこの子を目にしたら、そんな気持ちも湧き上がって余裕のない自分に飽きれも感じて。


ふぅっと息をついて頭を振った。

そういえば君ばかり追求して、俺は自分の気持ちなんて今までこれっぽっちも伝えようとなんてしてなかった。


「白状…しようか」

「…?…」


まずは求めるより先に、自分が伝えなければ。


「毎年誕生日を含め、この日にもらうチョコレートを俺は食べない。どれか口にしたら不公平な気がして」


以前、社さんが「キョーコちゃんがチョコを用意しても食べないんだよな?」と意地悪な顔をして聞いてきたことを思い出す。


あのときは

君がチョコレートを用意することなんて考えていなくて

君からのチョコを無下にする選択なんてありえなくて

俺以外の男にチョコを渡す君を想像したくなくて


思った以上に君に捕らわれている自分自身に驚いた。


「今年は敦賀蓮としてこの期間を過ごさない。正直直接受け取るものがなくて煩わしさがなくて助かった。ほっとしたけど、君は誕生日にケーキを用意してくれたね?」

「…あれは」


俺のために、とは言わなかった。

あの時俺はカインで君はセツカだったから。

でも、ちらりとのぞかせた素の表情と小声でこぼした『おめでとう』の言葉。


どんなに嬉しかったか、君はきっと知らない。


「律儀な君だろう?こんなに嬉しいものだとは思わなかった」


やっと顔を上げて俺を見てくれた。

つながった視線に思わず笑みがこぼれた。


「君だけが祝ってくれた、君しかいない誕生日に浮かれたら、もっと欲が出た」

「敦賀さん?」


子供っぽい願望だったと思う。

しかも断るはずがない演技に乗じて。


「今なら、この一週間は君と俺だけ。君が手渡すことができるのは俺だけ。そう思ったらチョコをねだっていた」


さっきの齧りかけのチョコレートを持ち上げて、この子に見せる。


「このチョコにはセツカのカインへの愛が詰まってる。でも…それだけ?」


このチョコレートに含まれていて欲しいものがある。


「それだけ…って」

「俺は欲張りだからね?この中に君の気持ちが入っていればいいのに」


緊張で声が震えるかと思った。

このチョコに最上さんの気持ちが入っていてほしい。


贈られたチョコレートを口に運ぶ。

なめらかな舌触りとわずかな苦みと控えめな甘さ。今の俺の心のようだと思った。


じっと、俺の顔を見つめる瞳にそういえばこの子はとっても鈍いことを思い出す。

もっとはっきり伝えなければ曲解を重ねて予想外の方向に走り出すことだってある。


「食べてもらえたといった君に期待した。食べてほしかったと言われてるみたいで。欲しいのはチョコじゃない、君の気持ちなんだ」


正直に伝えてしまおう。

曲解も勘違いの余地も与えずに。


「最上さん、俺を好きになって?」



俺の願望。

バレンタインの告白は女の子の定番。返事は1か月後のホワイトデーに。

でも、チョコをもらって逆告白なんて恰好がつかないが俺らしいとも思う。

そして返事は1か月も待てない。


「最上さん、答えを教えて?」


固まったままの表情に少しの不安を覚えるけれど、気持ちをさらけ出したら止まることなんてできない。


「『Yes』か『はい』それしか認めないけど」


肯定の言葉を引きずり出すまで諦めるなんてできやしない。

さっきまで拒否の言葉を恐れていたくせに、口に出したらそれすら認めない自分がいる。




「…ずるいです」


ぽつりとこぼれた言葉。

迷うように視線がさまよい、手元が動く。

君の手の中のチョコレートがピックに突き刺されてずいっと目の前に迫っていた。


食べろとばかりに迫ったそれに、自然と口を開けば押し込まれる。

俺のチョコより甘さの強いソレ。


「バレンタインの告白は女の子の特権です」


なじるような表情の中に恥ずかしがるように朱がさしているのは俺の願望だろうか?


「敦賀さんまで私に女の子の特権を認めないんですか?」

「特権、行使してくれるの?」


思わず聞き返すと恥ずかしそうに目を逸らして、頷いたこの子に驚きと喜びが込み上げて。


「ありがとう」


許可も得ずに唇にキスをしていた。



*****



「どこまでひどいんですか?私は結局告白させてもらえなかった!」


嬉しさのあまり口づけて、勢い余って口内に残るチョコレートの甘さも共有して。



数時間後に言われた言葉。


「そうだね、じゃあ今教えて?」

「…!!!もう、知りません!」


怒らせてしまったようだ。

結局この子の口から「好き」の言葉をもらえたのはその数日後のことだった。

*「」は日本語、『』は英語です。脳内変換プリーズ!



ひとりじめ‐3‐



撮影の合間、私はまたしても買い物に出かけた。


街はこの時期、歩くだけで甘い香りに遭遇するほどこのイベントに合わせたチョコレートで溢れている。

ベインデーとしてしか記憶してないこの日を、こんなに弾んだ気持ちで迎えるなんて思いもしなかった。


今年はセツカとして過ごすから、親しい方へのお礼のチョコも手渡しはできず少しさみしいような、ほっとしたような複雑な気分だった。


この日をともに過ごす敦賀さんには…悪いけれどバレンタインにチョコレートは贈らないと決めている。
だって、毎年トラックに積むほどのチョコレートをもらう大先輩。

食が細いうえに甘味を好んで食べる人ではない。


…そもそも食に対してこの人に好みを求めるほうが間違いだ。

性格から考えても、一つでも食べれば全部食べないと悪いような気がして…と一つも手を付けないのだろうと思う。


処理に困る無駄なものを渡すなんて迷惑なことをしたくない。

それが私の敦賀さんに対するバレンタインのルール。



…表向きはそう。


けれど、私はバレンタインにチョコ以外のものを敦賀さんに贈る。


気が付いてしまったのだ。
受け取ってもらえても食べてはもらえないチョコレートなら贈りたくない。


…食べてもらいたい…


ラブミー部での依頼しかり、今回のヒール兄弟しかり。


私は自分の作るものを敦賀さんが口にするということが当たり前と思っているのだ。

だから食べてもらえないとわかっているチョコレートは用意したくない。

用意したものを食べてもらえないことは、拒否されることに近い。


カインからセツカに対して、バレンタインのチョコレートの要求があったことは役柄と話の流れからは何の疑問も感じない自然なものなのに、私は浮かれていたんだと思う。


一生用意しないだろうと思っていたバレンタインチョコレート。


『食べてもらえる』ことが確定したチョコレートに、最近気づいた私の気持ちを隠して。



*****



できるなら手作りしたかったけれど、時間的にもホテルのミニキッチンの条件的にも難しい。

ただでさえ、このチョコレートは『セツカからカインに』向けたもの。

隠した気持ちは本当だけど、ここで悟られても困る。自己満足…なのだから。


撮影の間に出た買い物で、小さな生チョコレートを2種類購入した。


一つはカインに、もう一つはセツカに。

カモフラージュの意味もあり、単純に自分で食べたかったのもあり。

なんにせよ、チョコレートに隠したモノは見つかってはいけない。


それなら色んな理由に紛れ込ませてしまえばいい。


『はい、兄さん』


夕食を終えてシャワーを浴びて、あとは寝るだけ。

ラフな格好で私は冷蔵庫からチョコレートを取り出してウイスキーを傾けているカインに小さな小箱を差し出した。


『…くれないのかと思った』

『寝る前にお酒飲むでしょ?それに合うかと思って』


くすっとセツカの表情で笑って、テーブル脇のカインのベッドに腰掛ける。手元には自分用のチョコレートを開けた。

そっと盗み見ると、手渡したチョコレートはリボンをほどかれテーブルの上でその姿を現している。

目の前で食べてもらえる事実に、心が躍った。


自分のチョコレートを付属のピックで突き刺して、悟られないようにセツカを演じる。


『こんな風にチョコレートばかり売って日本って変な国ね?でもいろんな種類のチョコレートが食べれるのは嬉しいけど…』


パクリ、とチョコレートを口に放り込む。洋酒のいい香りが口に広がって美味しさに自然と顔がほころんだ。


『ん、おいしっ!』


思わずセツカじゃなく素の表情が出てしまったけれど、あまりのおいしさに…とごまかせるかしらと思いつつ、カインを見た。

同じようにピックに刺したチョコレートを齧っていた彼は驚いた色をのぞかせた表情で私を見ていた。


『兄さん?どうしたの?』

『いや…』


内心あわてつつも、セツカを取り繕って聞いてみる。

そしたら、何とも言えない表情でグラスをあおる兄の姿があった。


敦賀さんの反応に思うところはあるけれども、手にしたピックに齧られて半分になったチョコレート。

市販品だけど私が手渡したチョコを食べてもらえた事実に嬉しさがこみ上げた。


『よかった、食べてもらえて』

『…ん?』


ぽろり、と本音がこぼれていた。疑問符を投げかけてきた彼の声にしまったと思っても遅かった。


『………』


沈黙もよくないのはわかっていたけれど、不意にしでかした失敗に私は自分の首を絞めていた。

セツカの仮面がはがれている。

急いでキョーコを隠さなくちゃ。


今日の私は浮かれているせいかどうにもぼろが出やすい。

ホテルのこの部屋で、ヒール兄弟のルール下で犯した失敗を敦賀さんの前でひけらかすことなんてできない。


『おいしい?試食で甘すぎなくて、お酒にも合うかと思ったんだけど…』


セツカの表情を作ってカインの目を見たけれど、そこにいたのはカインじゃなかった。


「どういう意味?」


『…兄さん?』


突きつけられた日本語に、兄さんと呼びかけてみたけれど無駄だった。


ごくりと息をのんだ。どうしたらこの状況を切り抜けられるだろうか?


「…最上さん?」


敦賀さんは私に逃げ道を与えなかった。

誤魔化しを許さない真っ直ぐな視線に、抵抗することができなかった。


「………どう…したんですか?お芝居の途中で、敦賀さんらしくな…」

「答えて。今の、どういう意味?」

「どう、って…」


遮られた言葉。

敦賀さんはじっと私を見つめていた。

私のどんな些細な変化も見逃さない、そんな視線。


私は一切のミスを許されない状況なのを理解する。…いや、もう挽回は無理なのかもしれない。


「食べてもらえて?」

「……」

「食べてもらえない、と思っていたの?」

「……」

「カインのほうが欲しいと言ったモノなのに?」


切り抜ける方法を考えても、次々にふさがれる逃げ道に沈黙しか選択できない。

ついに、私は視線を切った。顔を見られたくなくて深く俯く。

私はいまどんな顔をしている?


「最上さん?」


敦賀さんが私の表情を暴こうと覗き込んでくる。

もうダメ…そう思った時、ため息が聞こえて敦賀さんの気配が離れた。


「白状…しようか」

「…?…」


自分がどんな顔をしているのかわからなくて、まだ顔を上げられないから敦賀さんの表情は見えない。

神経を集中して、必死に敦賀さんの気配を追った。


「毎年誕生日を含め、この日にもらうチョコレートを俺は食べない。どれか口にしたら不公平な気がして」


脈絡のない告白だったけれど、やっぱりと思った。


「今年は敦賀蓮としてこの期間を過ごさない。正直直接受け取るものがなくて煩わしさがなくて助かった。ほっとしたけど、君は誕生日にケーキを用意してくれたね?」

「…あれは」

「律儀な君だろう?こんなに嬉しいものだとは思わなかった」


意外な言葉に、思わず敦賀さんの顔を見た。

すこしはにかんだような、柔らかい表情がそこにあった。


「君だけが祝ってくれた、君しかいない誕生日に浮かれたら、もっと欲が出た」

「…敦賀…さん?」

「今なら、この一週間は君と俺だけ。君が手渡すことができるのは俺だけ。そう思ったらチョコをねだっていた」


困ったように笑った敦賀さんの表情はいつも見る大人びた印象よりなぜかずっと幼く見えた。

さっきの齧りかけのチョコレートを持ち上げて、敦賀さんは悪戯っぽく笑った。


「このチョコにはセツカのカインへの愛が詰まってる。でも…それだけ?」

「それだけ…って」


どきりとした。私がこのチョコレートの中に隠した気持ちに。


「俺は欲張りだからね?この中に君の気持ちが入っていればいいのに」


敦賀さんは齧りかけのそれをまた口に運んだ。

目の前で彼の口に消えていく私の気持ちを含んだチョコレート。

さっきも見ていたのに、なんだか信じられないもの見たような気分だった。


「食べてもらえたといった君に期待した。食べてほしかったと言われてるみたいで。欲しいのはチョコじゃない。…君の気持ちなんだ」


見透かされていた?


「最上さん、俺を好きになって?」


バレンタインプレゼントは女の子の告白を後押しするアイテム。


なのに私は手渡したチョコレートで思いもかけない告白をされていた。



*「」は日本語、『』は英語です。脳内変換プリーズ。



ひとりじめ -2-



日付変更を跨いだ深夜。


君は時計を気にしながら、『食べたかったから』とケーキを取り出した。

一人で食べられそうな小さなホールケーキ。


ケーキならばカットケーキでもなんでもいいのだろうけど、小さいながらも『ホールのケーキ』に都合よくも何かしらの意図を期待してしまう。


この1週間は完全にカインとセツカとして撮影スタジオとこのホテルの往復で終わる。
暗黙のルールは絶対で、どちらともなく素に戻ることはなくなり英語で会話するのが当たり前の非日常空間。


ここでは敦賀蓮も京子もいない。


それでも、ケーキを差し出したセツカの中に垣間見えたあの子の表情に期待してしまう自分がいる。

気遣い症の君のことだ、『誕生日をお祝いしたい』…都合よくそんな理由を思い込んで、そしたらこの子だけが祝ってくれる今日という日が思った以上に嬉しかった。


ここには俺とこの子の二人だけだ。外に出てもカインとセツカだから敦賀蓮としても京子としても誰にも干渉されない。


束の間の箱庭は心地よく…でも欲が募った。

せっかく外界に閉ざされて二人だけの非日常。


浸りきってしまいたいけれど、関係を崩すのが怖くて動けない。


だったら、カインの仮面の下でほんのささやかな我儘を望んでも許されるのではないか?




*****



「ねぇ、セツカちゃん。バレンタインって知ってる?」

「…興味ない」

「興味ないって、知ってるの?日本だと2月14日に女の子がチョコレートを意中の人にあげるイベントなんだけど」


スタジオでの撮影中、兄さんの演技に魅入っていたら隣に来た村雨がなれなれしく話しかけてきた。


「興味ないわ。でも町中チョコレートが溢れかえってるから嫌でも目に入る」


(何のアピールかしら?まさか催促?)


今年はただでさえこの期間はずっとセツカとして過ごすのだ。

お世話になった人には手元に届くようささやかなチョコレートは手配したが、当日に何かする準備はない。少なくともセツカにはそんなことをする理由がないのだ。


「……」


カットがかかり、私は村雨を無視してBJになった兄さんにタオルとミネラルウォーターを差し出した。


『何を話してた?』

『大したことじゃないわ。バレンタインを知ってるかだって。何のつもりかしら?』

『製菓会社のイベントだろう。お前には関係ない』

『わかってる。そもそも兄さん以外の男に何かくれてやる気なんてサラサラないわ』

『俺にはくれるのか?』


返ってきた意外な言葉に私は少し固まってしまった。

きっと敦賀さんとしたらチョコレートはたくさんもらうだろうし、一部だけ食べるなんてしないだろう。


でもカインは?


『兄さんチョコなんて食べるの?』

『嫌いではない。お前が俺に用意するなら別だ』

『意外。兄さん甘いものなんて好んで食べないのに…』


セツカとしておかしくない言い回しで、カインの…敦賀さんの心理を計ってみるが結局のところよくわからない。

ただ、カインならセツカが選んだものであれば受け取りたいといっているのはわかった。


『いいわ。乗ってあげる。だって珍しくておいしそうなチョコレートがたくさん出回っているんだもの。兄さんにあげなくても自分用においしいチョコレート買おうと思ってたし』


くすりと笑って、カインを見上げてみる。

カインとして発した言葉でも、実際に食べるのはこの人なんだ。

そう思ったらなんだかくすぐったくなった。


『アタシのチョコ…欲しい?』

『ああ』

『食べてくれるの?』

『…チョコ以外もな』


(…チョコ以外?どういう意味?)


深くは考えなかったけれど、セツカが贈るものなら受け取りOKらしい。


(…というかむしろ催促?)


どちらにしても、チョコレートを用意する理由ができて私は上機嫌だった。


早いものでSunny様主催の企画LME HOTELに参加して2カ月とちょっと。

こちらに提出したSSが自宅公開可となりましたので一応アップします。

再録に当たり細かいところの修正を行ってます。

チェックが甘い勢いだけので書いてる私なので、誤字脱字がハンパないんです~~。(´д`lll)


素敵なホテルへのご旅行は下記リンクからどうぞ!!


妄想最終処分場


…いやね、公開迷ったんですよ。

だって時事ネタを扱ったものだったので・・・。

しかしながら来年まで寝かせるのもアレなので、中途半端なこの時期にアップとなりました。

ちなみに、時系列はねつ造ですw

なんだかだらだら続いてしまって計4話となりました。


*二人の会話は英語です。脳内変換プリーズ。


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


ひとりじめ



「買っちゃった…」


遅くまで長引きそうな撮影中、カインに楽屋で休んでこい促されたキョーコはスタジオを抜け出し買い物に出かけた。

手には一人用の3号サイズホールケーキ。


(セツカが食べたかったから…うん、それでいいじゃない!)


少し迷ったが、ホテルとスタジオが近かったためホテルに戻りケーキを冷蔵庫に押し込める。

今日は遅くなると分かっているので、帰宅してからの軽食の支度だけ済ませてスタジオにとんぼ返りした。



*****



トラジックマーカーの撮影のため、この1週間はずっとは蓮とキョーコは完全にヒール兄弟として過ごす予定となっていた。『敦賀蓮』も『京子』もスケジュールは組んでいないため1週間ぶっ通しでヒール兄妹なのだ。

部屋での暗黙のルールは続行中だ。

二人きりの部屋であってもキョーコはカインとセツとしてしか振る舞えない。


…1週間…2月9日~2月15日までの7日間である。


(いいのかしら?敦賀さんの誕生日からバレンタインまで、よりによって一緒に過ごすのが私だなんて…)


この期間は敦賀蓮として過ごさないから、今年は直接受け取るプレゼントは少ないだろう。というか受け取れない。


(きっと事務所はプレゼントの山だわ…)


カイン・ヒールとしてもこの期間に何か受け取ることもないだろう。

そもそもカインの誕生日はいつかキョーコも知らないし、B・Jにおびえまくっている現場のスタッフが日系イギリス人のキャストにわざわざバレンタインチョコを用意しているのも考えづらい。

天下の敦賀蓮が今年の誕生日およびバレンタインに直接もらうプレゼントが皆無の状況もそれはそれで怖い。


「セツ、帰るぞ」


スタジオの隅でそんなことを悶々と考えていたキョーコに今日の分の撮影を終えたカインが近づいてきた。


「どうした?」


じぃっと自分を見上げるセツカに、訝しげに声をかけた。


「何でもない。兄さんに見惚れてただけ」

(よく考えたら、お祝いできるのは私だけね)


じわりとこみ上げた嬉しいようなくすぐったいような感情。独占欲が満たされていく。


「帰りましょ。アタシ達の部屋に」



****



遅くなった夕食を部屋で済ませ、時計を見る。

時刻は23:55。

バスルームの水音が止まったのを確認して、キッチンで湯を沸かしお茶を入れる準備をする。紅茶を入れ始めると、バスルームのドアが開いた。


「…何をしている?」

「もう、兄さんまた頭を乾かさずに出てきて。髪、跳ねるわよ?」


ガシガシとタオルで髪をぬぐうカインは、夕食は済ませたはずなのにキッチンに立つセツカに訝しげな顔をした。


「急に食べたくなって、ケーキ買ってきちゃった」


冷蔵庫から取り出されたケーキが小さいながらもホールケーキで、蓮は目を細めた。


セツカを演じつつも、律儀なキョーコの意図するところを読み取り自分の誕生日に好きな相手が何かしようとしてくれたことがうれしくて。


二人分の紅茶を入れて、テーブルに移動する。ちらりと、セツカが時計に目をやり日付が変わったことを確かめたのをカインは見ていた。


日付が変わって今は2月10日。


「こんな時間に…太るぞ」

「…いいでしょ、別に」

「まあ、もう少し肉をつけてもいいかもな。柔らかいほうが抱き心地がいい」

「もう、そんなこと言う!」


すねたセツカの振りをして、キョーコはケーキにフォークを突き刺して、ずいっと突き出す。


「ちょっと多いから兄さんも食べて」


目の前に突き出されたケーキに、蓮はカインの表情を一瞬崩して微笑んだ。


「仕方ない奴だな」


口に押し込まれたケーキを飲み込んで、一口分にしては大きかったため唇についたクリームを指で拭う。


「…甘い」

「兄さん」


キョーコはカインの中に一瞬覗いた蓮の表情を見つけて、ルール違反と分かっていて小さな声でつぶやいた。


「…おめでと」


俯いたキョーコの小さな声に、蓮は柔らかな笑みをうかべていた。



自家中毒のみねさまより頂きました!

以前にヒール兄弟meet ヤッシーのリク受けていただいたのですが

リクのやり取りの時にうっかり2つ上げてしまったリクエスト、もう一つまで成就していただいちゃいました!!


あ~もう幸せだわ!!ラブラブラブラブラブラブ


そんな爆笑ツッコミSSはこちら→保護者さんの言うことにゃ


もうね、重量級の愛はほんとにすごい!!

腹筋を鍛えて臨むことをお勧めします!


個人的な雑談ブログです。

二次しか興味の無い方は回れ右!!


22222キリ番接近中!スキビ関連で踏んだ方はリクエスト権利発生です~


ようやく桜をしっかり見に行って、写真も撮ったのにタイムリーに使えなくてゴメンナサイ~

先週の土曜日の写真です。折角撮ったから記録目的でアップ!


妄想最終処分場   妄想最終処分場

満開も過ぎて、だいぶ散り際でした。

咲いたと思っても仕事とか、急に寒くなったり雨が降ったり雪が降ったりと案の定今年もさんざんでしたね。

私の住んでる地域は大体桜は4月半ば。卒業式も入学式も外しています。

桜が咲いたら桜関連の妄想でもしようと思っていたのに、外してしまいました。

桜だと淡いパステルカラーな妄想が主流ですが、どうにも私はダークな方を考えてしまいます。

幻想的な夜桜とか、桜の下には死体が埋まっているとか…桜の妖しい雰囲気が大好きですw

蓮キョで妄想するには結構苦しいんですが、キョコさんが人外の桜の精設定ならありかしらん?

人が嫌い、信用できないとげとげしい桜の精なキョコさんとその妖しい魅力に取りつかれた蓮さんとか??

でも設定止まりでストーリーが出てこないのでダメだな、コレ。

ま、今年は外してしまったのでまた来年??


ソメイヨシノは散り始めて葉っぱも出てきましたが、別の種類の桜は咲き初めでした。
妄想最終処分場


あと、なんていうか白っぽいというか遠目で見ると緑がかっている桜も結構好き。

アノ種類は葉っぱも一緒に出てくるけどあのさわやかなグリーンが何とも言えず好きです。

あと桜の葉っぱの香も好き。桜餅~な香り。

桜の葉の精油とか売ってないかなぁ・・・




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さてさて、今度は22222のキリ番が近づいてます。

本日突破しそうです。

心配なのはスキビ外の方のヒットですね。

(もともとケータイからのアクセスが踏んでる可能性大ですけど)


アクセス解析見ると、かなり変態仮面さんが多いです・・・どうしよう。

「変態仮面」「股間」「HK」などなど、ま、なるようにしかならないですね。




なんとなく最近の生活について考えてみる。

スキビ二次を描きはじめてからホントにパソとお友達です。


元々私自身遊び好きで多趣味な方なのですが、二次を始めたら他はほとんど放り投げ状態。

特に去年秋~結果の思わしくないダイエット継続中でして、長風呂とあれだけ多かったお外の飲み歩きがぐっと減りました。いや飲むんですがね?外で飲むのが激減。

そのことからスキビ二次を読み始めて、ケータイで読むようになったらお風呂が読書タイム。

ほぼ毎日平気で1時間半~2時間半身浴。

で、お風呂に入ればもう完全に寛ぎモードで外出しようなんて気がなくなるんです。

カロリーも気にしてたのも手伝って、秋~12月くらいまでは順調に月1キロ減に成功してました。


だかしかし!!

12月~二次を読むだけで飽き足らず書くようになったらそれが崩壊してきました。

まず削られた睡眠時間と家事。

1月頃…毎日ガリガリ書いてた頃は夕方帰宅→19時前後に1~2時間風呂で読専門タイム→飲みつつ軽めの夕食→パソでガリガリ書く、アップ後に読み→1時ころ横になる→寝落ちするまでケータイで読み。

こんな生活(ダメ人間!!)

2月~は体重の減りがストップし最低体重から2キロほど戻ってしまい、最近慌てて自炊率アップに努めております。

何て言いますか、人のお世話が少ないので自分勝手にできてしまうところがいけないんですよね~。

最近の私。

この生活パターンは変わらず。ただパソとお友達の中身がピグを始めたら、おしゃべりに時間を取られていく。そして読む量は変わらず、自分のを書く時間が削られる。

だってねぇ…一人で楽しんで続けていたスキビ二次がピグでリアルタイムにおしゃべりできるとなると楽しくて楽しくて!!!

お話しできるなんて思ってなかった大ファンの作家さんとお話しできてキョドったり、遭遇するとドキドキです。

あくまでアメーバはスキビ二次の読み書き用と思ってはいるんですが、ちょっとうらやましいと下心で始めたピグがこんなに嬉しい厄介モノとは!


リアルの生活時間は仕事は全く削れないので論外ですが、外出が途端に減りました。お金減らないからいいけどね!


今日は久々に髪を切りに行ったり、買い物してお惣菜作りためたり、お休みしていた別趣味のことをしたり、サボっていた家事もしたりとなんだか充実してます。合間にピグもブログもやってるしね。


連載の方は、職場に個人のパソコンを持っていく用事があったので、休憩時間に一人だったのをいいことにポチポチメモ書き程度に進めることもできました。相変らず迷走中ですが近々アップできる・・・はず!

(でもそんな罰当たりなことをしたせいか、休憩終わったらいきなり忙しくなって死にそうだったw)



そうそう、GWにまた東京に行ってきます!

遊ぶぜ~~!!うふふ、楽しみラブラブ