present virus 後編【メロキュンプレゼンツ!!《ハッピー♡プレゼント!!》】 | 妄想最終処分場

妄想最終処分場

好きなジャンルの二次創作ブログです。
現在はス/キ/ビメインです。
ちょいちょい過去活動ジャンルも投入予定。

*出版者様、作者様とは一切関係ございません。
*禁:無断転載、二次加工、二次利用

昨年3月に終了したスキビ蓮キョ二次の大きな企画メロキュン研究所が期間限定で帰ってきました!

総合案内は、魔人 様、ピコ 様、風月 様のサイトで同時に行っております。(各主催者のお祭り会場案内記事に飛びます)アップ済み作品も整理して紹介されておりますので、ぜひ目次としてご利用くださいませ!


隅っこにこっそりおいていただいた私ですが、蓮誕に合わせた企画始動のお知らせを見ても、連載で行き詰り、短編なんかでてこねーよ!って事でスルーする気満々だったのです。しかし、無理矢理でもお題にこじつけられそうな小ネタが浮かんだの、せっかくの復活だしと参加させていただくことにいたしました!


……若干以上にお題のハッピー☆プレゼントからはズレていますがそこは私の適当クオリティって事で!

それでは後編です、どうぞ~↓


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



present virus 後編



夕方少し食事を取った蓮をまた寝室に押し込めて、家事雑用を済ませたキョーコは時計を見上げた。

蓮からは病み上がりなのだからしっかり休むようにと言われていたのだが、昼過ぎまでやれることもなく自室に閉じこもっていたキョーコは疲れも眠気も感じずにいた。手持無沙汰すぎてリビングの大掃除までしてしまった始末だ。

見上げた時計の時刻は0時を少し過ぎたところ。


(起きてたらお薬すすめようかな…)


インフルエンザの薬は1回使用で良い吸入薬をすでに使用済みと蓮は言っていたが、その他に喉や咳の対症療法薬も処方されていた。毎食後内服となっているが、休息を優先させているため食事時間もバラバラだ。夕方早めの時間に食事を取っているので、このまま朝までだと時間があきすぎてしまう。


キョーコは蓮の様子を伺うためにそっと寝室のドアを開けベッドサイドに近づいた。

目を閉じて浅い呼吸の蓮の額にそっと手を当てる。汗で湿った髪がキョーコの指先にも絡む。インフルエンザの典型的な高熱とまではいかないまでも、そこそこ高めの蓮の体温。


(熱上がってきたのかな)


物音を立てないようにそっとキッチンにむかい、以前使った氷枕と新しいタオルを持って寝室に戻る。

冷やしたタオルでそっと蓮の額に浮いた汗を拭うと、ひんやりとした感触が心地よいのか少し寄っていた蓮の眉根が緩んだ。起さないように氷枕を交換するにはどうしたらと考えつつキョーコがそのまま首筋に流れた汗を拭いていると、蓮の瞼が僅かに震えて持ちあがった。


「…あ、ごめんなさい…っ、起こしちゃいました?」


ぼんやりしている色の蓮の瞳に、キョーコはそっと声をかけた。汗で湿った肌に熱で少し潤んだ瞳で自分の顔の上を彷徨う視線にキョーコがどぎまぎしていると、ふっと蓮の表情が緩む。


「…ありがとう…」


思えばその笑顔は後に自ら神々スマイルと名づけたそれで、キョーコは既視感に目を見張った。


(あの時は、名前…呼んだのよね)


「…最上さん」


続いた呼びかけは前と異なり『キョーコちゃん』ではなかった。

その事実にキョーコの中には安堵と不満が入り混じる。


(バカバカ、敦賀さんが私のことをキョーコちゃんなんて呼ぶことないのにっ。あの時だってきっと誰かと…)


自分が蓮に名前で呼ばれたい願望と、今回はしっかり自分を認識していることに対する喜びと。

二つが自分の中で複雑に入り混じっているのを自覚してキョーコはきゅっと唇をかんだ。


「…いま、何時…?」

「0時回ったところです。こんな時になんですけど…お誕生日おめでとうございます」


キョーコの回答にキョトンとした表情を見せた蓮だったが、その後そう言えば誕生日だったと思い至りふわりと微笑んだ。いつぞやの逆だな、と日付が変わってすぐ一番に祝福の言葉をくれたキョーコにありがとうと返した。


「起きたついでにお薬飲めますか?」

「うん」


ベッドから体を起こした蓮に薬を手渡し、キョーコはぬるくなった氷枕を新しいものに交換する。


「お熱上がってきてるみたいですけど、体調どうですか?」


薬を手にしたまま、蓮は汗で体に張り付いた寝巻を見下ろした。


「あ…うん、汗は出てるけど、そんなにつらくはないかな。一度汗を流してくるよ」

「じゃあ少しお腹に何か入れてからお薬にしましょう。準備しておきます。シャワーは短時間で体を冷やさないようにしっかり拭いて下さいね」


一度手渡した薬を受け取り、キョーコは汗の染みたシーツを取り換える。

蓮が寝室を出たことを確認したのち、キョーコは剥がしたシーツを抱えたまま溜息をついた。


「重症ね…」


日付が変わって誰よりも早く一番に誕生日を祝う言葉を蓮に伝えられたことに気が付いてしまった。

キョーコは真っ赤になった顔を隠すようにシーツに顔をうずめると、蓮の香りが立ち上り余計に落ち着かなくなってしまうのだった。



****


温かなリビングには見慣れない加湿器。

深夜だというのに風邪対策で居心地よく整られたリビングはキョーコの気配に溢れていた。柔らかな白い水蒸気を吐き出す機械をぼんやり見つめながら蓮は目を細める。


「もうっ!敦賀さん、髪を乾かさなきゃ冷えちゃうでしょー!」


言われた通りに短時間で汗を流しリビングに戻った蓮がドアを開けると、キョーコの眼が釣り上がった。

強制的に座らされ、後ろからキョーコにドライヤーを当てられている。ラグの上に座った蓮の後ろのソファーにキョーコが座った状態で、キョーコの指先が蓮の黒髪を梳いてゆく。指先が髪を引くリズムが心地よくされるがままになっていると、「よしこんなもんかな」という声とともにかちりとドライヤーのスイッチを切った音が蓮の耳に入った。


(気持ちよかったのにな…)


熱のせいか寝起きのせいかいつもよりも願望はストレートで、仔犬の様な表情で蓮が背後をを見上げると、申し訳なさそうに自分を見ているキョーコと視線がぶつかった。


「なんか…ごめんなさい。せっかくのお誕生日なのに…」

「え?…ああ」


蓮にとってはこうして誕生日を丸ごと、何の予定もなく過ごすのはこの仕事を始めてから初めての事。しかも看病と言ってキョーコと過ごせることは願ってもない事なのに、キョーコはそれを気にしている。


(まったく、分かってないね)


蓮の気持ちなど露程気づかず、キョーコは謝罪の言葉をつづけた。


「何かお祝いをと思っていたんですけど、プレゼントは私も寝込んでて用意できなかったし、風邪を引いているのでご馳走もなぁって思って…」

「こんなにゆっくり誕生日を過ごせるなんて想像してもいなかったよ。本当にいいのかな?って感じだし、そんなに気にしなくていいよ」

「でもっ、敦賀さんの誕生日やこの先のバレンタインも!敦賀さんの為に色々準備している人がたくさんいるじゃないですか!私、申し訳なくって…」


(俺が欲しいのはたった一人からのモノだけなのにね…)


あらぬ方向の心配をしているキョーコをほんの少し残念に思いつつも、その言葉にそうかバレンタインもまだ仕事ができないのかと思い至る。すなわちそれはキョーコと過ごせるチャンスなのだ。


「当日のお祝いは私からだけになってしまいますけど…。私なんかで申し訳ありませんが、誕生日とバレンタイン、何かしてほしい事や欲しいものってありますか?私ができる事なら何でもしますよ?」


眉の下がったキョーコの顔に、いつもなら働く自制が機能しないのは熱のせいだろうか?

愛しい少女の「私からだけ」という限定の言葉がとても強調されて蓮の脳内に響く。

蓮の口はいつもならぐっと止まるはずの言葉も滑らかに吐き出してゆく。


「何でもって、本当?」

「も、もちろん!私ができる事でしたら何でも!」


そうは言ってもきっと何もないと言われたり、欲しいものは君には無理と言われるかと思っていたキョーコは、蓮からの希望が聞き出せそうな気配に身を乗り出した。


(言質は取ったからね?)


蓮はキョーコの袖を引き、ソファーから自分の隣に座らせる。近い距離にドキリとしながらも、キョーコは素直に蓮の隣に納まった。


「じゃあ…この病気が治るまで看病してくれる?」

「そんなの当たり前です!私がきいてるのはそう言うことじゃなくて…」


そう言うことじゃないと、不服そうなキョーコ。


「俺、『風邪』、ひいてるんだ」


そんなキョーコに蓮はわざと言葉を区切る。


「はい?いえ、だからそれは存じ上げております!」

「風邪ってさ、人にうつすと治るって言わない?」

「…はぁ」


行先の見えない蓮の話にキョーコは首をかしげるが、触れた腕から感じる蓮の体温がまだ高いことにもしかして熱に浮かされてるのかしらとそのまま話を聞いている。


「最上さん、風邪ってどうやってうつるか知ってる?」

「え…っと、ウイルスや菌を持っている人の咳やくしゃみを介してウイルスを吸い込んだりしてうつるですよね」

「そう、入り込んだウイルスって爆発的に増殖して急速に体を蝕むんだよね」

「そう…ですね?」


蓮に向かって1個のウイルスが1日で100万個になると注意をしたキョーコはそれが一体何なのかと首をひねった。

キョーコが首をかしげている間に蓮の腕がするりと伸びてきてキョーコの細腰をさらう。風邪による発熱とは別の意味で、蓮の瞳が潤んでいるように見えてキョーコはぎくりと体を強張らせた。


「俺のここ、風邪をひいてるんだ」


蓮の右手親指が、トンと自分の心臓を指す。キョーコの視線は蓮の指が指し示す場所をたどっていた。熱を逃がすためにボタンを空けている寝巻の胸元から綺麗な鎖骨と胸筋が覗いて、誘導されるままそこを凝視してしまったキョーコは思わず顔面にこみ上げる熱をぐっと飲み込んだ。


「ウイルスは君。あっという間に爆発的に増殖してる」

「へ?」


思っても見なかった蓮の言葉にキョーコがぱっと顔を上げると、至近距離に蓮の顔があった。

ぐっと近づいた蓮の瞳が別の意味で熱を持っていて、キョーコは動けない。


「キスしたら、風邪…うつっちゃうよね?」


悪戯っぽく笑う癖に、蓮の瞳の色は真剣で。

直接的な言葉は何もないのに、キョーコは蓮の言わんとしていることを察してしまいかぁっと耳まで真っ赤に染まった。


「……う、うつりませんよ?私、罹ったばっかりで抗体ありますから!それに…」


恥ずかしさで目を合わせていられず、キョーコは俯く。


「………私もきっと、敦賀さんと同じ風邪…ひいてます」


絞り出すように漏れた言葉は、尻すぼみに小さくなった。

真っ赤になって震える頬が俯いてかかった栗色の前髪に透けていて、蓮はキョーコの言葉に一瞬目を見開いたがその様子に甘々しく笑った。驚きから甘く溶けていく蓮の表情を、顔を伏せたキョーコは気づけず、発してしまった己の言葉に恥ずかしさと恐怖とで顔を上げられずにいる。

蓮がキョーコの顎を取って顔を覗き込むと、キョーコの方が熱があるのではないかと思うくらい顔が真っ赤でその瞳は潤んでいた。



「…だからっ、…うつりませんっ…!」



インフルエンザになぞらえて、言い訳のようにそう言い切るキョーコ。

しかし、真っ赤に潤んだ乙女の表情に後押しされた蓮は今日は引かなかった。



「じゃあ…試してみる?」



更に至近距離に近づいて、蓮が視線を絡め取る。



「の、望むところです…っ」



そんな表情なのに言葉だけは負けん気を見せるキョーコ。

蓮は手加減しないからと笑ってキョーコとの距離をゼロにした。触れあった唇はどちらが熱があるかなど分からないくらい、熱い。


蓮が唇を離して目を開けると、真っ赤になって震えるキョーコがいた。


「……ごめん。実はこの風邪、治らないんだ」


その様子に、蓮は嬉しそうに目を細めて笑った。


「だから…看病は一生だね?」




*****



「どうしてっ!?私、インフルエンザ罹ったはずなのに…っ!」


蓮の熱が下がった翌日、キョーコは再び39度の熱を出した。

数日前に経験したはずの高熱と関節痛に不審に思いつつ病院行くと、下された診断はインフルエンザだった。


キョーコが熱でフラフラの体で送ってくれた蓮の車まで戻ると、蓮は車を発進させた。

揺れる車内で「おかしい、どうして…」とブツブツとうわ言のように呟くキョーコに、蓮はふと何かを思い至り視線は路面に向けたまま口を開いた。


「最上さん、ちなみに最初に診断されたインフルエンザって何型だった?」

「え…?インフルエンザB型、でしたけど…」

「そう。ちなみに俺はA型だった」

「はいぃ??」


血液型の話でしたっけ?と発熱で回らないキョーコの思考回路は現状を理解できなかった。


「病みあがりで弱ったところに感染力の強いインフルエンザ患者と濃厚接触すれば当然の結果だね」

「の…濃厚接触って…っ!」


蓮の言葉にただでさえ熱で赤いキョーコの頬がさらに熟れたリンゴのように真っ赤に染まった。頭からは湯気まで立ち上っててもおかしくなさそうだ。


「なに?キス以上の何かを想像したの?最上さんエッチだね」

「なっ…っ!!前!前見てくださいっ!!」


キョーコの顔を横目で見てにやりと艶やかに笑った蓮は夜の帝王を思わせる微笑で、キョーコは慌てて目を逸らし、火を噴くんじゃないかと思うほど熱い顔面を冷やすために助手席の窓を開けた。

恥ずかしさで蓮の顔を見れず窓の外を見ていると、ふと流れる景色は蓮のマンションに向かう道のものだと気が付く。


「つ、つつ、敦賀さんっ!私、自宅にっ!だるまやに帰りますっ」

「どうして?」

「どうしてって…!」


さも当然と言った蓮の態度に、キョーコは狼狽える。


「君の理論だと、うつした相手は抗体を持っているから大丈夫なんだろう?」


まあ、俺のインフルエンザは君からもらったものじゃなかったってのは今分かったけど、と蓮はなぜだか嬉しそうに笑った。


「今だるまやに戻ったらご夫婦が迷惑だろう?元々その下心もあったから俺のところに泊まり込みの看病をしに来たくせにどうして今更帰るなんて言うの?」

「う…」


図星の蓮の言葉にキョーコは反論できない。

いつの間にか車は蓮のマンションの駐車場に滑り込んでおり、車を駐車した蓮に熱でふらつく体をひょいと抱き上げられていた。


「結果、俺のインフルエンザは君からじゃなかったけど、誕生日に長めの休暇と君の気持ちのプレゼントをありがとう。バレンタインは…そうだな、君を看病する権利を頂戴?」

「ふえぇっ!?」

「うつしたのは俺だからね?責任を持って看病するよ」


社が最短でも10日間と確保した休みはキョーコを看病するだけの日にちの余裕がある。

横抱きにされ蓮の部屋に向かうエレベーターの中で、キョーコは蓮に囁やかれた。


「これ以上病人を増やさないように、感染症は隔離が基本だからね。大丈夫、熱が下がりきるまでは何もしないよ?」



……って事は、熱が下がったら私は何をされるんでしょう…?



熱でつらいキョーコと対照的に、何故だか嬉しそうな蓮の表情。


キョーコは更に上がった熱で、そのまま意識を手放した。


~~~~~~


キョコさんの理論は穴だらけなので本気にしないでくださいまし!

皆さまインフルには十分気をつけましょう~!←軽くならかかって仕事を休みたいダメな大人な私w


…ほんとにね、37度台の微熱でインフル陽性とかあるんですねぇ。予防接種のおかげらしい。