実はあの鮮やかな青が、黒田清輝を彷彿とさせる加賀友禅には、一回は袖を通してみたかったんだよねぇ。
他愛もない母との会話でこぼす私。
小さい頃から長身のわたしが、母の背丈を追い越したのは、小学校3年生のときでした。
あれから申し分なくすくすく育ち、いまや172センチです。
母が華道に励んでいた若い頃に着ていた着物は、随分昔から箪笥の肥やしで、
ほうら。
そうこうしている間に、私にはすっかり丈が合わなくなってしまった。
そんな私の28回目の誕生日がもうすぐそこに。
毎年贈っている
生んでくれてありがとう、
の感謝を込めた母へのプレゼントの思案にふけっていると
ある日、突然母が言いました。
着物を買いに行こう。
訪問着の一つくらい持っていなさい。
お嫁に行っても重宝するから。
(そんな予定はないけど、、、)
もちろん、我が家にはそんなゆとりはありません。
でも目の前にはいたって本気と顔にかいた母がいて、
そう言う彼女の瞳の向こう側には、同じ言葉を母に贈った祖母の姿があるのがわかります。
わたしは本当に幸せ者です。
祖母が母にしてくれたように、母は私に、私達娘に、惜しみなく愛情を注いでくれます。
私がおばあちゃんになっても似合うようにと、こういうときには少々値がはってもいいものを選ぶ母。
裾に絞りがアクセントを添えたキナリの辻が花。
大切にしようと思います。
ただ、そうやって少しずつ、母が母としての務めを指折り果たしているような錯覚に陥り、ものさみしい気持ちになって、ここのところずっと秋桜という名前の昭和の歌謡曲がエンドレスリピートするのです。
完成を楽しみにしつつも、そんな母の大きな大きな愛情に少しとまどい、素直になれずに持て余している親不孝者な娘なのでした。